障害者雇用の年収ランキング|知らないと損する収入の差

障害者雇用の年収ランキングや収入差を表すグラフと資料が並ぶ、就労移行支援をイメージしたデスク風景

障害者雇用の年収は、障害の種類や雇用形態によって大きく変わります。「障害者雇用は給料が低い」というイメージを持つ方は多いですが、その背景には制度的な理由があり、働き方次第では収入を上げることも十分に可能です。

厚生労働省が2024年3月に公表した「令和5年度障害者雇用実態調査」では、障害種別ごとの平均給与が明らかになっています。身体障害者の月額平均は23万5,000円、知的障害者は13万7,000円、精神障害者は14万9,000円、発達障害者は13万円という結果でした。いずれの区分でも前回(2018年)調査より上昇しており、全体として処遇改善の傾向が見られます。

この記事では、障害種別・業界別の年収水準を整理したうえで、年収が低くなりやすい構造的な理由と、就労移行支援を含めた収入アップにつながる選択肢をご紹介します。

障害者雇用の年収ランキング:障害種別で見る平均給与

障害種別によって平均給与には明確な差があります。厚生労働省の「令和5年度障害者雇用実態調査」(2023年6月調査時点)のデータをもとに、各障害種別の平均月額給与と推計年収を整理します。調査対象は常用労働者5人以上を雇用する民営事業所6,406社です。

障害種別ごとの平均給与と推計年収

令和5年度調査における障害種別の月額平均給与(超過勤務手当を含む)と推計年収は次のとおりです。

障害種別月額平均給与推計年収(概算)
身体障害者23万5,000円約282万円
精神障害者14万9,000円約178万8,000円
知的障害者13万7,000円約164万4,000円
発達障害者13万円約156万円

身体障害者の平均が最も高く、知的障害者・発達障害者の平均が最も低い水準となっています。なお、この推計年収は月額給与の12倍による概算であり、賞与・各種手当の支給状況によって実際の年収は変わります。

同年(令和5年)の給与所得者全体の平均給与は約460万円(国税庁「令和5年分 民間給与実態統計調査」)です。障害者雇用枠全体の水準は一般労働者と比較して低い傾向にありますが、この差は障害特性そのものよりも、雇用形態や労働時間の違いによる影響が大きいとされています。

週所定労働時間による給与の変化

同じ障害種別でも、週の所定労働時間によって月額給与は大きく変わります。例えば身体障害者では、週30時間以上勤務の場合の月額平均は約26万8,000円ですが、週20時間以上30時間未満では約16万2,000円と10万円以上の差が生じています。

知的障害者では週30時間以上の場合の月額平均が約15万8,000円、精神障害者では約18万6,000円となっており、労働時間の増加が年収に直結する構造になっています。フルタイム勤務を目指す際には、体調管理や職場環境の安定が前提となる点は押さえておくとよいでしょう。

正社員割合と年収の関係

雇用形態も年収に大きく影響します。令和5年度調査における障害種別の正社員(無期契約の正社員)割合は、身体障害者が53.2%と最も高く、次いで発達障害者が35.3%、精神障害者が32.7%、知的障害者が29.5%となっています。

同年の給与所得者全体の正社員割合が約66%であることと比較すると、障害者雇用では非正規雇用の割合が高いことがわかります。非正規雇用では賞与や各種手当が支給されないケースが多く、年収水準が下がりやすい傾向があります。

障害種別ごとの平均月額給与(令和5年度調査)
・身体障害者:23万5,000円(推計年収 約282万円)
・精神障害者:14万9,000円(推計年収 約178万8,000円)
・知的障害者:13万7,000円(推計年収 約164万4,000円)
・発達障害者:13万円(推計年収 約156万円)
推計年収は月額×12の概算。賞与・手当は含みません。
  • 身体障害者の平均月額は最も高く、週30時間以上勤務では約26万8,000円に上昇する
  • 知的障害者・発達障害者の平均月額は13万円台で、非正規雇用の割合が高い傾向にある
  • 労働時間・雇用形態のいずれも年収水準に大きく影響する
  • 前回(2018年)調査と比較して全障害種別で平均給与が上昇している

障害者雇用の年収が低くなりやすい4つの理由

障害者雇用の年収水準が一般と差がある背景には、複合的な要因があります。障害そのものではなく、制度・雇用慣行・就労時間の構造的な問題として理解しておくことが大切です。

非正規雇用からスタートするケースが多い

障害者雇用では、最初から非正規雇用(有期契約・パートタイム)での採用となるケースが少なくありません。安定的に就労できるかを見極める期間として、契約社員や有期雇用でスタートする運用をとる企業が多いためです。非正規雇用では賞与や退職金が支給されないことが多く、フルタイムの正社員と同等の業務をこなしていても年収に差が生じることがあります。

ただし、障害者雇用促進法の趣旨に基づき、同一の職種・業務内容であれば障害があることのみを理由とした給与の差別的取り扱いは禁止されています。就労実績を積み重ねることで無期雇用への転換や正社員登用につながる制度を持つ企業も増えています。

短時間勤務・週20時間未満勤務の割合が高い

精神障害者・発達障害者を中心に、週20時間未満または短時間勤務からスタートする方が一定数います。体調管理や環境への適応を優先するためですが、労働時間が短いほど月額給与も低くなります。令和5年度調査によると、精神障害者の週30時間以上勤務割合は56.2%で、他の障害種別より低い水準です。

障害者雇用促進法の改正(2024年4月施行)により、重度身体障害者・重度知的障害者・精神障害者については週10時間以上20時間未満の「特定短時間労働」も法定雇用率の算定対象となりました。段階的に就労時間を延ばしながら安定を目指す仕組みが整備されつつあります。

業務の範囲が限定されやすく昇格につながりにくい

合理的配慮として業務の範囲を限定される場合、ルーティン業務が中心となりやすく、マネジメント職への昇格や評価による昇給が起きにくい傾向があります。管理職になると職務手当がつくケースが多いですが、その機会が生まれにくい状況は年収アップの障壁になります。

一方で、ITスキルや専門資格を活かせるポジションでは、一般枠と同等水準の給与が設定されている求人も存在します。特定スキルを持つ場合は職種・業界を意識した就職活動が年収面で有効です。

合理的配慮のコストが処遇に影響することがある

企業が合理的配慮(専用設備・マニュアル整備・専任担当者の配置等)を提供するためのコストが、雇用者の処遇に間接的に影響するケースがあります。これは法的義務である合理的配慮を適切に履行するための企業側の判断によるものですが、対象者にとっては実質的な収入の抑制要因になり得ます。

合理的配慮の内容や範囲が不明確な場合は、採用前の面談や就労支援機関を通じた企業との調整が助けになります。就労移行支援事業所では就職後の職場定着支援として、企業との配慮調整を行う役割も担っています。

年収が低くなりやすい主な要因
・非正規雇用でのスタートが多い
・短時間勤務の割合が高く労働時間が収入に直結する
・業務範囲の限定により昇格・昇給の機会が生まれにくい
・合理的配慮コストが処遇に影響するケースがある
  • 給与差は「障害そのもの」ではなく雇用形態・就労時間・職種が主な要因である
  • 同一業務での差別的な給与設定は障害者雇用促進法で禁止されている
  • 就労実績を積み重ねることで無期雇用・正社員登用につながるケースがある
  • 週10時間以上の特定短時間労働も2024年4月から法定雇用率の算定対象となった

年収が高い業界ランキングと障害者雇用の実態

業界によって給与水準には大きな差があります。障害者雇用枠で年収アップを目指す場合、どの業界を選ぶかは重要な検討ポイントになります。ここでは、業界全体の賃金水準が高いとされる分野と、障害者雇用における実際の状況を整理します。

年収水準が高い業界の傾向

厚生労働省の「令和5年度賃金構造基本統計調査」では、業界別の賃金水準の傾向が示されています。給与水準が高い業界として挙げられることが多いのは、電気・ガス・熱供給・水道業(インフラ系)、金融業・保険業、情報通信業、学術研究・専門・技術サービス業などです。これらは大企業が多く、月給制・賞与あり・福利厚生が整っている傾向があります。

一方、障害者雇用枠での採用が多い業界として、令和5年度障害者雇用実態調査では卸売業・小売業(知的障害者の32.9%)、製造業(身体障害者の21.3%)、サービス業が上位に挙げられています。これらの業界は雇用者数が多い一方、業界全体の賃金水準は高くない場合もあります。

障害者雇用で比較的年収が高い職種・業界

障害者雇用枠であっても、ITエンジニア・プログラマー・データ分析職・医療事務の専門資格保有者などの職種では、一般枠と同等水準の給与が設定される求人があります。特に大企業の特例子会社では、本社水準に近い処遇を受けられるケースがあり、一般的な中小企業の障害者雇用枠より年収が高くなる傾向があります。

発達障害のある方については、プログラミング・データ分析・クリエイティブ職などで高いパフォーマンスを発揮するケースが増えており、スキルを磨くことで障害者雇用枠でも年収アップを実現している事例があります。ただし、高収入の障害者雇用求人は非公開求人が多い傾向があるため、就労移行支援事業所や障害者専門の転職エージェントを通じた情報収集が有効です。

特例子会社と大企業での雇用を視野に入れる

障害者雇用の年収ランキングや収入格差をイメージした、ビジネス資料とグラフを確認する就労支援のシーン

特例子会社とは、障害者の雇用促進等に関する法律に基づき、親会社の障害者雇用率に算入するために設立された子会社です。障害者の雇用に特化した環境で、合理的配慮が充実している点が特徴です。大手企業グループの特例子会社では、親会社に準じた給与水準・福利厚生が適用されるケースもあります。

特例子会社への就職を目指す場合、求人は定期的に出るわけではなく競争率が高い場合もあります。就労移行支援事業所での訓練を通じてスキルを整え、ハローワークの障害者求人情報や就労支援機関のネットワークを活用して情報収集することが現実的なアプローチです。最新の求人状況はハローワークの障害者専門窓口(あるいは障害者就業・生活支援センター)で確認するとよいでしょう。

業界・雇用形態年収の傾向特徴
電気・ガス・水道(インフラ)比較的高い大企業が多く安定性が高い
金融・保険業比較的高い大企業中心、専門性が求められる
情報通信業(IT)スキル次第で高いIT・プログラミングスキルが活かせる
特例子会社親会社水準に近い場合あり合理的配慮が充実、競争率が高い
製造業・卸小売業中程度障害者雇用数が多く求人が豊富
  • 業界全体の賃金水準が高い分野を選ぶと障害者雇用枠でも年収が上がりやすい
  • ITスキルや専門資格は障害者雇用枠での年収アップに有効な手段
  • 特例子会社は処遇水準が高い場合があるが、競争率も高い
  • 高収入の求人は非公開が多いため就労支援機関を活用するとよい

就労移行支援を通じた年収アップの現実的な方法

就労移行支援事業所は、障害のある方が一般就労へ移行するための訓練・支援を提供する福祉サービスです。単に就職先を紹介するだけでなく、収入を安定・向上させるための基盤をつくる役割を担っています。

就労移行支援でできる収入アップへの準備

就労移行支援では、ビジネスマナー・コミュニケーション訓練・職場体験(実習)に加えて、事業所によってはITスキル・事務処理・専門資格の取得支援を行っています。これらのスキルを身につけることで、就職後の業務範囲が広がり、昇給や正社員登用につながりやすくなります。

就労移行支援の訓練期間は原則として2年以内です(障害者総合支援法に基づく)。訓練終了後に一般就労へ移行した場合、就職後6か月間は「定着支援」を無償で受けられます(就労定着支援として最長3年間の支援に移行することも可能)。職場環境の調整や企業との配慮交渉を含むサポートが受けられるため、就職後の安定につながります。

雇用形態の段階的アップグレードを計画する

最初から正社員・フルタイムを目指すよりも、まずは短時間勤務・非正規雇用でスタートし、就労実績を積んで無期雇用や正社員登用を目指すステップアップの方法が一般的です。労働契約法の無期転換ルールにより、同一企業での有期契約が通算5年を超えた場合、無期契約への転換を申し込む権利が生じます。

就労移行支援事業所を活用する際は、就職先の企業が無期雇用・正社員登用の実績を持つかどうかを事前に確認しておくとよいでしょう。ハローワークの障害者専門窓口や就労移行支援事業所のコーディネーターを通じて、具体的な企業の実績情報を収集することが助けになります。

障害年金との組み合わせで生活設計を整える

就労しながら障害年金を受給している方は少なくありません。障害基礎年金(国民年金から支給)の場合、2級では月額約6万6,250円(令和6年度額)、1級では月額約8万2,816円が支給されます。ただし、障害厚生年金の受給中に一定以上の賃金収入がある場合、等級が変更されることがあります。

障害年金の受給状況や等級変更の基準は個別の事情によって異なります。最新の支給額・審査基準については、日本年金機構の公式サイトまたは最寄りの年金事務所でご確認ください。就労収入と障害年金の組み合わせで生活設計を立てる際は、就労移行支援事業所の担当者や社会福祉士・社会保険労務士への相談も選択肢の一つです。

就労移行支援を活用した年収アップのステップ
・スキル習得(IT・事務・資格)→職域拡大→昇給・正社員登用
・短時間勤務スタート→実績を積む→フルタイムへ段階的移行
・就労定着支援(最長3年)で職場環境の調整をサポート
・障害年金との組み合わせも含めた生活設計を検討する
  • 就労移行支援では就職後の定着支援(最長3年)も受けられる
  • 有期契約通算5年超で無期転換を申し込む権利が生じる(無期転換ルール)
  • スキルアップ・資格取得は年収アップに直結しやすい
  • 障害年金との組み合わせについては年金事務所や専門家への相談が安心

まとめ

障害者雇用の年収は、障害の種類だけでなく雇用形態・労働時間・業界・職種によって大きく変わります。厚生労働省の令和5年度調査では、身体障害者の平均月額が23万5,000円、精神障害者が14万9,000円、知的障害者が13万7,000円、発達障害者が13万円と、障害種別で明確な差があります。一方で、どの区分も前回調査より改善しており、制度・環境の整備が少しずつ進んでいます。

年収を上げるために最初にできる一歩は、現在の雇用形態・労働時間・職種を確認し、フルタイム勤務や無期雇用移行が現実的かどうかを整理することです。就労移行支援事業所への相談は、その判断材料を得る有効な方法の一つです。

収入の不安を抱えながら働き続けることは、長期的な安定にとってもよくありません。制度を味方につけながら、自分のペースで一歩ずつ進めていただければ幸いです。

当ブログの主な情報源