障害者雇用で切られるって本当?解雇の実態と身を守る具体的な対策

障害者雇用で契約終了を示す場面

障害者雇用で「切られるかもしれない」という不安を抱えながら働いている方は、少なくありません。実際のところ、障害者雇用には法律による手厚い保護があり、障害を理由に一方的に解雇することは禁じられています。

この記事では、障害者雇用における解雇の実態と法的な仕組みを整理したうえで、職場に長く定着するための具体的な方法と、万が一のときに頼れる相談先をまとめています。

不安な気持ちを一人で抱え込まず、制度と支援をうまく活用しながら、自分に合った働き方を見つけていきましょう。

障害者雇用で切られる不安の背景と解雇の実態

「障害者雇用で切られる」という不安は、なぜ生まれるのでしょうか。まず現状を正確に把握することが、不安を和らげる第一歩になります。

年間の解雇件数と実態

厚生労働省「令和5年度障害者職業紹介状況等」によると、障害者雇用における解雇は年間で2,400件以上報告されています。障害者雇用自体の件数が増加していることも背景にありますが、こうした数字が「切られるかもしれない」という不安の一因になっているのは確かです。

ただし、注目すべきは解雇の理由です。報告されたデータでは、解雇理由の大部分が企業の業績不振や事業縮小など「企業側の事情」によるものとされています。本人に問題があったケースは少数であることを、まず知っておくことが大切です。

離職につながりやすい課題とは

解雇だけでなく、自己都合で退職に至るケースも多くあります。厚生労働省「平成25年度障害者雇用実態調査」によると、離職理由の上位は「職場の雰囲気・人間関係」「賃金・労働条件が合わない」「仕事内容が合わない」です。これらは障害のある方に限らず、すべての働く人が感じうる課題でもあります。

精神障害や発達障害のある方は、体調の波、コミュニケーションの難しさ、指示の理解にかかる時間など、職場との間にミスマッチが生じやすい傾向もあります。ただし、これは「働けない」ということではなく、環境や配慮の組み合わせによって大きく変わることを覚えておいてください。

定着率の現状を知る

独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)の調査によると、障害者雇用の就職後3か月時点の定着率は障害種別で異なります。身体障害のある方で約77.8%、知的障害のある方で約85.3%、精神障害のある方で約69.9%、発達障害のある方で約84.7%となっています。1年後になると全体的に低下する傾向があります。※要確認

一方、障害者求人経由で採用された場合は、一般求人に比べて定着率が高い傾向があります。採用段階から障害特性を理解した環境で働くことが、長期定着につながりやすいとされています。

離職理由の上位は「人間関係」「賃金・労働条件」「仕事内容のミスマッチ」です。
解雇理由の大半は企業側の事業縮小などによるもので、本人に非があるケースは少数です。
障害者求人経由での就職は、定着率が高い傾向があります。

具体例:精神障害のある方が就労後に体調を崩して早退が増えた場合でも、主治医と職場が連携し、短時間勤務への変更や休憩の取り方を調整することで、安定した継続就労につながった事例があります。一人で抱え込まず、早めに職場や支援機関に相談することが大切です。

  • 年間2,400件超の解雇のうち、大半は企業の業績・事業縮小が原因
  • 離職理由の上位は人間関係・労働条件・仕事内容のミスマッチ
  • 障害者求人経由の採用は一般求人より定着率が高い傾向がある
  • 障害種別により定着しやすい環境の特性が異なる

障害者雇用を守る法律の仕組みを理解しよう

「切られるかもしれない」という不安の多くは、法律の保護を知らないことで生まれます。障害者雇用には、一般雇用よりも手厚い法的保護が重ねて適用されています。

障害者雇用促進法による差別禁止

「障害者の雇用の促進等に関する法律」(障害者雇用促進法)は、障害があることを理由とした解雇を明確に禁止しています。厚生労働省「障害者差別禁止指針」では、次の3つの行為が差別として禁じられています。1つ目は、障害者であることを理由に解雇の対象とすること。2つ目は、解雇基準を障害者にだけ不利に設定すること。3つ目は、複数の候補者がいる中で障害者を優先して解雇の対象にすることです。

つまり、「障害があるから仕事が遅い」「体調が不安定だから」という理由だけで解雇することは、法律上認められていません。障害者雇用の従業員を解雇するには、一般の解雇ルール(労働基準法・労働契約法)と障害者雇用促進法、両方のルールを満たす必要があります。この二重の制約が、障害者の雇用保護を強くしている根拠です。

合理的配慮の提供義務

雇用分野では障害者雇用促進法に基づき、事業主は過重な負担にならない範囲で合理的配慮を提供することが義務付けられています。また、2024年4月からは改正障害者差別解消法により、民間企業においても合理的配慮の提供が法的義務となりました(雇用分野は障害者雇用促進法が適用)。

合理的配慮の具体例としては、通院のための休暇付与、体調に配慮した休憩時間の設定、短時間勤務制度の活用、作業手順のマニュアル化などがあります。解雇の前に、こうした配慮が十分に検討・実施されたかどうかが法的な判断の重要な基準となります。合理的配慮を求めたことを理由にした解雇も、法律で明確に禁止されています。

解雇の3種類と必要な要件

解雇には「普通解雇」「懲戒解雇」「整理解雇」の3種類があります。普通解雇は能力不足や勤務態度の問題が理由ですが、障害のある方の場合、適切な指導・配慮が行われたかどうかが問われます。

懲戒解雇は重大な規律違反が対象で、整理解雇(いわゆるリストラ)は人員削減の必要性・解雇回避努力・合理的な選定基準・手続きの適正さという4要件をすべて満たす必要があります。いずれも厳しい条件が課されており、障害者に対してはさらに慎重な対応が求められます。詳細は、お住まいの市区町村の障害福祉窓口またはハローワークにご確認ください。

解雇の種類 主な理由 障害者への特別な注意点
普通解雇 能力不足・勤務態度の問題 合理的配慮・適切な指導があったかが問われる
懲戒解雇 重大な規律違反 弁明の機会が必要。差別的な適用は不当解雇
整理解雇 業績不振による人員削減 4要件をすべて満たす必要あり。障害者優先での選定は禁止
  • 障害を理由とした解雇は障害者雇用促進法で明確に禁止されている
  • 解雇の前に合理的配慮が尽くされたかが法的判断の鍵になる
  • 解雇には普通・懲戒・整理の3種類があり、それぞれに厳しい要件がある
  • 合理的配慮を求めたことを理由にした解雇も法律で禁止されている

不当解雇と感じたときに取るべき行動

解雇を言い渡されたとき、それが正当かどうかすぐに判断することは難しいものです。まず冷静に確認・記録し、適切な窓口に相談することが最初のステップです。

解雇理由証明書を請求する

解雇予告を受けた後であれば、労働者は会社に対して「解雇理由証明書」の交付を請求できます(労働基準法第22条)。会社はこの請求を拒否できません。証明書に書かれた理由が「障害に関連していないか」「合理的な理由があるか」を確認することが、不当解雇かどうかを判断する基礎になります。解雇通知を受けたら、なるべく早く書面での交付を求めましょう。

また、解雇に関するやりとり(日時・発言内容・状況)をメモや記録として残しておくことも大切です。後から相談する際の重要な証拠になります。

労働基準監督署・ハローワークへの相談

障害者雇用で契約終了を告げられる日本人女性

不当解雇の疑いがある場合、最寄りの労働基準監督署に相談することができます。指導・勧告の対象となる可能性があるほか、解雇の撤回を求める手続きについてアドバイスを受けられます。また、ハローワークには障害者専門の相談窓口があり、解雇後の再就職支援や制度の説明も受けられます。これらは無料で利用できる公的な機関です。

地域障害者職業センターへの相談

地域障害者職業センターは、全国47都道府県に設置されている専門機関で、ハローワークと連携しながら就職から職場定着まで継続的な支援を行っています。解雇後に次の職場を探す場合だけでなく、「今の職場環境が合っているか」「働き続けるために何が必要か」という段階からの相談にも対応しています。担当者が付いて継続的にサポートしてくれるため、就職後の定着が不安な方にも頼りになる機関です。ご不明な点は相談支援専門員または支援機関にご相談ください。

解雇通知を受けたら、まず解雇理由証明書を書面で請求しましょう。
やりとりはメモに残しておくと、相談時に役立ちます。
ハローワーク・地域障害者職業センターは無料で相談できます。

ミニQ&A

Q. 解雇理由に納得できません。どうすればいいですか?
A. まず解雇理由証明書を会社に請求し、内容を確認しましょう。障害に関連した理由であれば、ハローワークや弁護士への相談が有効です。一人で抱え込まず、公的機関を頼ることをおすすめします。

Q. 解雇ではなく「自主退職を勧める」と言われました。
A. これは「退職勧奨」と呼ばれるものです。退職するかどうかは本人の意思で決められます。応じる義務はなく、断っても解雇は簡単にはできません。不安な場合は、お住まいの地域の相談窓口にご相談ください。

  • 解雇予告を受けたら、解雇理由証明書の交付を書面で請求する
  • やりとりの記録を残しておくと後の相談時に役立つ
  • 労働基準監督署・ハローワーク・地域障害者職業センターは無料相談が可能
  • 退職勧奨に応じる義務はなく、断った後に簡単に解雇はできない

職場に長く定着するための実践的な対策

解雇の不安を減らすうえで最も効果的なのは、職場に定着できる環境を整えることです。制度やサポートを上手に使いながら、長く働き続ける土台を作っていきましょう。

自分の障害特性を職場に正確に伝える

定着のためにまず大切なのは、自分の障害特性や「どんな配慮があれば働きやすいか」を職場に伝えることです。曖昧なままにしていると、ミスマッチが積み重なり、結果的に退職につながりやすくなります。採用時だけでなく、入社後も定期的に上司や担当者と確認の場を設けるとよいでしょう。

伝えにくい場合は、就労支援機関のスタッフに同席してもらうか、事前に書面でまとめておく方法も有効です。合理的配慮は「本人からの意思表示」があって初めて動き出す仕組みのため、遠慮せずに伝えることが定着への近道です。

ジョブコーチ(職場適応援助者)を活用する

ジョブコーチとは、職場に出向いて障害のある方の適応を専門的にサポートする支援者です。厚生労働省が実施する「職場適応援助者(ジョブコーチ)支援事業」として提供されており、本人への助言だけでなく、職場の管理者や同僚への働きかけも行います。就職直後の慣れていない時期や、体調が変動しやすい時期に特に有効な支援です。ハローワークや地域障害者職業センターを通じて利用できます。

就労移行支援・就労定着支援を使う

就労移行支援事業所(一般企業への就職を目指す障害のある方を支援する機関)を経て就職した場合、就職後6か月が経過した時点から「就労定着支援」を利用できます。就労定着支援(障害者総合支援法に基づくサービス)は、職場・家庭・医療機関などの関係者と連携しながら、長期就労を目指す支援で、最大3年間利用可能です。

職場での困りごとや体調の波、人間関係のトラブルなどを早期に相談できる場があるだけで、離職リスクを大きく下げられます。在職中から支援者との関係を作っておくことが、安定就労への備えになります。詳細はお住まいの市区町村の障害福祉窓口にご確認ください。

職場環境が合わないと感じたら

「この職場は自分には合わないかもしれない」と感じること自体は、自分を知るための大切なサインです。すぐに退職を決める前に、まず支援機関や相談窓口に話してみることをおすすめします。配置転換・業務変更・合理的配慮の見直しなど、解決策が見つかる場合もあります。

それでも改善が難しいと判断した場合は、障害者就業・生活支援センター(通称「なかぽつ」)に相談しながら、次のステップを落ち着いて考えることができます。これはあくまで個人の体験をもとにした事例であり、すべての方に当てはまるわけではありません。

支援の種類 内容 どこで利用できるか
ジョブコーチ支援 職場に出向いて適応をサポート ハローワーク・地域障害者職業センター
就労定着支援 就職後の職場定着を最大3年間支援 就労移行支援事業所・市区町村窓口
障害者就業・生活支援センター 就業と生活の両面を一体的にサポート 全国各地に設置(「なかぽつ」)
  • 障害特性と必要な配慮を職場に具体的に伝えることが定着の基本
  • ジョブコーチ支援は就職直後の不安定な時期に特に有効
  • 就労定着支援を使うと就職後も最大3年間サポートを受けられる
  • 職場が合わないと感じたら、まず支援機関に相談してみる

解雇・トラブル時に頼れる相談窓口一覧

何か問題が起きたとき、一人で抱え込まないことが最も大切です。公的な相談機関を知っておくだけで、いざというときの安心感が全く違います。

ハローワーク(公共職業安定所)

ハローワークには、障害のある方専用の相談窓口が設置されています。専門の知識を持つスタッフが担当者制で対応し、就職支援・転職相談・求人紹介のほか、解雇後の手続きや失業給付についても案内を受けられます。精神保健福祉士や臨床心理士の資格を持つ「精神障害者雇用トータルサポーター」が配置されているハローワークもあります。全国各地に設置されており、無料で利用できます。

地域障害者職業センター

全国47都道府県に設置されている専門機関で、ハローワークと連携しながら、就職相談・職業評価・ジョブコーチ支援・職場復帰支援など幅広いサービスを提供しています。一時的なアドバイスにとどまらず、長期的な関係のもとで継続的にサポートを受けられる点が特徴です。利用には事前の予約が必要な場合が多いので、電話で確認のうえ相談に出向くとよいでしょう。

障害者就業・生活支援センター(なかぽつ)

就業面だけでなく、生活面の困りごとも含めて一体的に相談できる機関です。利用者一人ひとりに就業支援担当と生活支援担当がつき、職場・医療・福祉・行政などさまざまな機関と連携しながらサポートします。職場でのトラブルやハラスメント、退職を考えているときの相談も受け付けています。お住まいの地域の基幹相談支援センターや市区町村の窓口でも、こうした支援機関への繋ぎを行っています。ご不明な点はお住まいの市区町村の障害福祉窓口にご相談ください。

具体例:就職後に上司からの指示が理解しにくく、ミスが続いていた発達障害のある方が、地域障害者職業センターに相談したところ、ジョブコーチが職場に入り、業務マニュアルの作成と上司への説明を一緒に行いました。その結果、職場環境が改善され、継続就労につながった事例があります。これはあくまで個人の体験をもとにした事例であり、すべての方に当てはまるわけではありません。

  • ハローワークの障害者専門窓口は無料で利用でき、解雇後の手続き相談も可能
  • 地域障害者職業センターは全国47都道府県に設置、継続的な就労支援を行う
  • 障害者就業・生活支援センター(なかぽつ)は就業と生活の両面から支援する
  • 職場トラブルやハラスメントの相談は、お住まいの基幹相談支援センターへ

まとめ

障害者雇用で「切られる」という不安の多くは、法律の保護と支援機関の存在を知ることで、大きく和らぎます。障害を理由にした解雇は法律で禁じられており、解雇の前には合理的配慮が尽くされたかどうかが厳しく問われます。

まず取り組むべきは、自分の障害特性と必要な配慮を職場に伝え、ハローワークや地域障害者職業センターに一度相談してみることです。一人で解決しようとせず、制度と支援をフルに活用していきましょう。

あなたが安心して長く働き続けられる環境は、必ず見つかります。困ったときは一人で悩まず、身近な相談窓口に声をかけてみてください。

最終確認:2026年3月

本記事の情報は公開時点のものです。制度の詳細や利用要件は、お住まいの市区町村の窓口または相談支援専門員にご確認ください。利用料・工賃・支給額は自治体・事業所・世帯収入により異なります。本記事は特定の事業所・サービスの利用を推奨するものではありません。

当ブログの主な情報源