就労継続支援B型の手取りが不安な方へ|工賃の仕組みと生活を支える制度を解説

就労継続支援B型の手取りを解説する日本人女性

就労継続支援B型の手取りが不安、という気持ちはごく自然なことです。B型の工賃は一般就労と仕組みが根本的に異なるため、「これで生活できるの?」と心配になる方が多くいます。ただ、正しい制度の知識と使える支援を組み合わせれば、見通しはずっと立てやすくなります。

この記事では、就労継続支援B型(以下、B型)の工賃の仕組みから全国平均・手取りの考え方、生活を支える公的支援制度、そして工賃が高い事業所の選び方まで、厚生労働省の公式データをもとに解説します。

「利用を検討しているが収入面が心配」「すでに通所中だが生活費の計算が不安」という方に、まず読んでほしい内容です。

就労継続支援B型の手取りが不安になりやすい理由と工賃の基本

B型の工賃は、一般企業の給与とは制度の出発点が異なります。まずその仕組みを押さえておくと、不安の正体が見えてきます。

工賃と給与の決定的な違い

就労継続支援B型は、一般企業での就労が難しい障がいのある方が、生産活動を通じて社会参加できるよう支援する障害福祉サービスです。B型では事業所と利用者の間に雇用契約を結びません。

雇用契約がないため、労働基準法や最低賃金法といった労働関係法令は原則として適用されません。その代わり、生産活動で得た収益から必要経費を差し引いた金額を、「工賃」として利用者に分配する仕組みになっています。

つまり、工賃の額は事業所の売上や生産活動の内容によって変わります。手取りへの不安が生まれやすいのは、この「最低賃金の保障がない」という点が大きく影響しています。

工賃規程と最低ラインの考え方

事業所は「工賃規程」を整備し、工賃の計算方法・支払日・支給日などを定めることが義務づけられています。時給制・日給制・出来高制などのパターンがあり、事業所によって異なります。

法令上の最低ラインとしては、事業所全体の平均工賃月額が3,000円を下回ってはならないと定められています(障害者の日常生活及び社会生活を総合的に支援するための法律に基づく指定障害福祉サービスの事業等の人員、設備及び運営に関する基準 第201条第2項)。ただしこれは事業所全体の平均であり、個々の利用者の工賃の最低額ではありません。

工賃規程の内容は利用契約時に説明を受ける機会があります。不明な点は担当のスタッフや相談支援専門員(※)に確認するとよいでしょう。

※相談支援専門員とは、障がいのある方の生活全体を支援する専門職で、サービス等利用計画の作成や関係機関との調整を行います。

工賃はなぜ低くなりやすいのか

B型の工賃が低くなりやすい背景には、主に3つの理由があります。第一に、雇用契約がなく最低賃金法の適用外であること。第二に、障がい特性に配慮した軽作業・単価の低い業務が中心になりやすいこと。第三に、行政から受け取る障害福祉サービスの報酬(訓練等給付費)を工賃に充ててはならないというルールがあり、工賃は生産活動の収益だけを原資とするためです。

これらの背景を知っておくと、「工賃が低い=事業所や自分に問題がある」ではなく、制度の構造から生まれる面が大きいことが分かります。

工賃は雇用契約のない「生産活動の対価」であり、最低賃金法は適用されません。
事業所全体の平均工賃が月3,000円以上という基準があります(法令値)。
詳細な要件はお住まいの市区町村の障害福祉窓口にご確認ください。

補強:具体例
たとえば週3日・1日3時間程度の通所で、時給100〜200円程度の工賃設定の事業所では、月の工賃が数千円になることがあります。一方、施設外就労(企業先での実習型の仕事)を積極的に取り入れている事業所では、月2〜3万円以上になるケースもあります。通所頻度と事業所の仕事内容の両方が工賃に影響します。

  • B型は雇用契約なし→最低賃金の保障なし
  • 工賃は生産活動の収益のみを原資とする
  • 事業所全体の平均工賃が月3,000円以上というのが法令上の最低ライン(個人の最低額ではない)
  • 工賃額は事業所の業務内容・通所頻度・仕事量によって大きく変わる

就労継続支援B型の工賃の全国平均と手取りの実態

工賃が実際にどの程度なのかを把握することで、生活設計の出発点が見えてきます。

令和5年度の全国平均工賃

厚生労働省が公表した「令和5年度工賃(賃金)の実績について」によると、就労継続支援B型事業所の全国平均工賃月額は23,053円です。

ただし注意が必要な点があります。令和6年度の報酬改定に伴い、平均工賃月額の計算方法が変更されました。従来は「工賃支払対象者数」を分母にしていたところ、令和5年度から「1日あたりの平均利用者数」を分母とする方式に変わりました。この変更の影響で数値が大きく見える部分があり、厚生労働省の資料にもその旨が明記されています。令和4年度の17,031円と単純に比較して「工賃が一気に増えた」とは読み取れない点に留意が必要です。

また、都道府県別の格差も大きく、同じく令和5年度データでは最も低い大阪府が約18,176円、最も高い徳島県が約29,312円など、地域によって差があります。さらに、同じ事業所の中でも通所日数・時間・作業内容によって個人ごとの工賃は大きく異なります。

手取りが工賃とほぼ同じになる理由

一般企業の給与では、所得税・住民税・社会保険料(健康保険・厚生年金など)が差し引かれます。一方、B型の工賃はほとんどの場合、非課税で社会保険料の対象にもなりません。

そのため、基本的には「手取り≒工賃の支給額」と考えることができます。税金や保険料の控除を考えなくてよい分、受け取る金額がそのまま使えるお金に近いです。

なお、工賃が年間で一定水準(目安として年収103万円)を超えると確定申告が必要になる場合があります。また、工賃は「家内労働者等の必要経費の特例」の対象となり、55万円分の必要経費が認められることが多いため、多くの利用者にとって実際に確定申告が必要になることは少ないとされています。詳細はお住まいの市区町村や税務署にご確認ください。

工賃だけで生活するのが難しい現実

全国平均が月2万円程度(計算方式変更前の実態に近い水準として参照)であることを考えると、工賃のみで家賃・食費・光熱費を賄うことは現実的に難しい水準です。これは制度の構造上の問題であり、B型はもともと「経済的自立」よりも「社会参加の機会・就労訓練の場」として位置づけられています。

そのため、B型の利用者の多くは、障害年金・生活保護・家族の支援などを組み合わせながら生活を成り立たせています。工賃を補う公的支援制度を知ることが、不安解消の大きな一歩になります。

項目 就労継続支援B型 就労継続支援A型(参考)
雇用契約 なし あり
最低賃金の適用 なし あり
令和5年度全国平均 月額23,053円※要確認 月額86,752円※要確認
手取りとの関係 原則ほぼイコール(非課税・社保なし) 税・社保控除あり
利用期間 制限なし 制限なし(原則65歳未満)
  • 令和5年度の全国平均工賃は月額23,053円(計算方法変更の影響に注意)
  • 都道府県・事業所・個人の通所頻度によって工賃は大きく異なる
  • B型の工賃は原則非課税で社会保険料もかからない→手取りにほぼ近い
  • 工賃だけでの生活は難しく、公的支援との組み合わせが現実的

手取りの不安を和らげる公的支援制度

B型の工賃を補う制度はいくつかあります。自分の状況に合わせて活用することで、生活の安定につながります。

障害年金との併用

就労継続支援B型を利用しながら、障害年金を受給することは可能です。障害年金は病気や障がいによって生活や就労に制限がある場合に支給される公的年金で、「B型を利用している」という理由で年金額が増減することはありません。

障害基礎年金の受給額は、令和6年4月からの年金額として2級が月額約68,000円、1級が月額約85,000円です(年度ごとに改定されるため、最新額は日本年金機構公式サイトでご確認ください)。障害年金を受給している場合、B型の工賃と合算することで、ひとり暮らしの生活費を確保しやすくなります。

障害年金の申請には、初診日要件・保険料納付要件・障害等級要件など複数の条件があります。詳細はお住まいの年金事務所または市区町村の窓口にご確認ください。

生活保護との併用

就労継続支援B型の手取り比較図

B型の工賃収入のみでは生活費が不足する場合、生活保護を申請・受給することも制度上は可能です。B型は雇用契約を結ばないため、「就労によって安定した収入が得られる状態」とは判断されにくく、生活保護を継続しやすい環境があります。

工賃を受け取ることで、生活保護費が全額差し引かれるわけではありません。就労に伴う必要経費として「勤労控除」が適用されるため、工賃を得ても手元に残るお金がわずかに増える仕組みになっています。ただし、工賃が月15,000円を超える場合には収入認定され、生活保護費から減額される可能性があります。詳細はお住まいの市区町村の福祉事務所(生活保護担当)にご相談ください。

なお、障害年金と生活保護を両方受給している場合は、障害年金は収入として扱われ、生活保護費から差し引かれます。ただし障害等級1・2級の方には障害者加算が上乗せされる仕組みがあります。正確な金額は個人の状況によって異なるため、福祉事務所に確認することをおすすめします。

そのほかに活用できる支援

自立支援医療(精神通院医療・育成医療・更生医療)を利用することで、医療費の自己負担を軽減できます。また、障害者手帳の所持により交通費の割引(各交通機関によって異なります)や公共施設の利用料減免などが受けられる場合があります。

グループホーム(共同生活援助)を利用することで、家賃や生活費を抑えやすくなるケースもあります。これらの制度を組み合わせることが、B型の工賃水準のもとで生活を安定させる現実的な方法です。ご不明な点は相談支援専門員または支援機関にご相談ください。

補強:ミニQ&A

Q. B型に通いながら障害年金を申請しても審査に不利になりませんか?
A. B型事業所の利用は、障害年金の審査にとってマイナスにはなりません。むしろ障がいに配慮した環境での就労であることが審査上確認されやすいとされています。詳細はお住まいの年金事務所でご相談ください。

Q. 生活保護を受けながらB型に通うと保護が打ち切られますか?
A. 基本的には打ち切られません。B型は雇用契約がなく、工賃収入も少額であるため、生活保護の継続が認められるケースが多いです。ただし状況によって異なるため、事前に担当のケースワーカーに相談することをおすすめします。

  • 障害年金はB型利用中も受給でき、工賃と合算することで生活費を確保しやすくなる
  • 生活保護はB型通所中も継続できるケースが多く、勤労控除により工賃を得ても手元のお金が増える場合がある
  • 自立支援医療・障害者手帳の割引・グループホームなどの組み合わせも有効
  • 詳細は市区町村の障害福祉窓口・年金事務所・福祉事務所で確認を

工賃が高い事業所を選ぶためのポイント

同じB型でも事業所によって工賃には大きな差があります。見学・体験の段階で確認できるポイントを押さえておきましょう。

事業所の工賃実績と工賃向上の取り組みを確認する

事業所は毎年度、都道府県や市区町村に工賃実績を報告し、その情報を公表することが求められています。見学の際には「昨年度の平均工賃月額はどのくらいですか?」と直接確認するとよいでしょう。

また、各事業所は「工賃向上計画」を策定し、具体的な取り組みを進めることが求められています(令和6年度の報酬改定でより強化されました)。工賃向上に積極的な事業所は、利用者の経済的な安定にも力を入れている傾向があります。取り組みの内容(新規販路の開拓、施設外就労の実施など)を聞いてみることも参考になります。

仕事内容と工賃形態をセットで確認する

B型事業所の仕事内容は軽作業・農作業・菓子製造・パソコン入力・清掃など多様です。単価の高い仕事に取り組んでいる事業所ほど、工賃も高くなる傾向があります。

工賃の支払い方法(時給制・日給制・出来高制など)も確認しておくとよいでしょう。自分の体調や通所ペースに合った工賃形態を選ぶことが大切です。出来高制の場合、通所日数や作業量が少なければ工賃も少なくなることを念頭に置いておきましょう。

施設外就労の有無と環境を見る

施設外就労とは、B型事業所が企業と業務請負契約を結び、利用者が企業の現場で作業を行う形態です。企業内での仕事は単価が高めになる傾向があり、工賃向上につながりやすいとされています。また、より一般就労に近い環境で経験を積めるメリットもあります。

施設外就労を実施している事業所かどうか、また施設外就労の対象者や内容についても見学時に確認しておくとよいでしょう。ただし、施設外就労の有無だけが事業所選びの基準ではなく、自分の体調・通いやすさ・スタッフとの相性なども重要な判断材料です。

事業所の工賃実績・工賃向上計画の内容は、見学時に確認できます。
施設外就労を積極的に行う事業所は工賃が高い傾向があります。
工賃の高さだけでなく、仕事内容・通いやすさ・支援体制のバランスで選びましょう。
  • 見学・体験時に昨年度の平均工賃月額を確認する
  • 工賃向上計画の取り組み内容を聞いてみる
  • 施設外就労の有無と対象者の条件を確認する
  • 工賃の形態(時給・日給・出来高)が自分の通所スタイルに合うかも考慮する

不安をひとりで抱えないための相談先と次のステップ

工賃や生活費への不安は、情報を集めながら少しずつ整理していくことが大切です。一人で悩まず、使える相談窓口を知っておきましょう。

相談支援専門員を活用する

B型の利用手続きや生活全般の不安については、相談支援専門員に相談することができます。相談支援専門員は障害福祉サービスの調整役として、サービス等利用計画(※)の作成や関係機関との連絡調整を行います。

※サービス等利用計画とは、本人の希望や状況をもとに、利用するサービスの種類・頻度・目標などをまとめた計画書です。相談支援事業所で無料で作成してもらうことができます。

「工賃だけでは生活が不安」「障害年金の申請を考えたい」「生活保護について知りたい」という相談も、相談支援専門員を通じて適切な窓口につないでもらえます。詳細はお住まいの市区町村の障害福祉窓口にご確認ください。

基幹相談支援センターへの相談

事業所との関係や生活上のトラブル、「今の事業所が自分に合っていない気がする」といった悩みがある場合は、お住まいの市区町村の基幹相談支援センターに相談することもできます。基幹相談支援センターは、地域の障害福祉に関するさまざまな相談を受け付ける公的機関です。

事業所でのトラブルや苦情については、都道府県の障害者権利擁護センターに相談する方法もあります。相談先の電話番号や所在地は、お住まいの市区町村または都道府県のホームページで確認できます。

WAM NETで事業所の工賃情報を調べる

WAM NET(福祉医療機構が運営する情報サイト)では、全国の障害福祉サービス事業所の情報を検索できます。事業所の所在地・定員・前年度の平均工賃などを比較する際の参考資料として活用できます。

見学前の情報収集に役立ちますが、実際の雰囲気や支援の質は見学・体験通所を通じて確かめることが大切です。焦らず、複数の事業所を見学したうえで判断することをおすすめします。ご不明な点は相談支援専門員または支援機関にご相談ください。

補強:具体例
たとえば、相談支援事業所に「B型の工賃が少なくて生活が不安、障害年金の申請も考えたい」と伝えると、年金事務所への同行支援や申請書類の確認サポートをしてくれるケースがあります。ひとつの窓口に相談することで、複数の制度に同時につながれることも少なくありません。

  • 相談支援専門員は生活全般の不安・制度の活用について相談できる
  • 事業所トラブルや苦情は基幹相談支援センター・障害者権利擁護センターへ
  • WAM NETで事業所の平均工賃情報を事前に調べることができる
  • 読者が次にすべき行動:まずはお住まいの市区町村の障害福祉窓口か相談支援事業所に連絡を

まとめ

就労継続支援B型の手取りへの不安の多くは、工賃の仕組みと活用できる支援を知ることで、大きく和らげることができます。工賃だけで生活を成り立たせることを前提にする制度ではなく、障害年金・生活保護・各種減免制度と組み合わせて使うものと理解しておくことが大切です。

まずやることは、お住まいの市区町村の障害福祉窓口か相談支援事業所に問い合わせることです。「B型を利用したい」「生活費が不安」という相談だけで十分です。担当者がそれぞれの状況に合わせた方法を一緒に考えてくれます。

不安を感じているあなたが一歩を踏み出そうとしているなら、それだけで十分なスタートです。焦らず、使える窓口と制度を味方につけながら、自分のペースで進んでいきましょう。

本記事の情報は公開時点のものです。制度の詳細や利用要件は、お住まいの市区町村の窓口または相談支援専門員にご確認ください。利用料・工賃・支給額は自治体・事業所・世帯収入により異なります。本記事は特定の事業所・サービスの利用を推奨するものではありません。

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