就労支援と在職中の利用ルール|使える制度と申請の流れをわかりやすく解説

在職中に就労支援を受ける日本人女性

就労支援は、在職中の人には「使えない」と思い込んでいる方が少なくありません。確かに就労移行支援は原則として在職中の利用が認められていませんが、休職中や短時間勤務のケース、あるいは別の支援機関を活用することで、在職中でも必要なサポートを受けられる道はあります。

この記事では、就労移行支援をはじめとする就労系福祉サービスを在職中・休職中に利用できる条件を、令和6年度の制度整備の内容も含めて整理します。「今の職場に在籍したまま支援を受けたい」「休職中に何かできることはないか」と感じている方に、次のステップを考えるための情報をまとめました。

まずは、就労移行支援が在職中に利用できない理由と、例外が認められるケースの全体像から確認しましょう。

就労支援を在職中に利用できないのはなぜか

就労支援サービス、なかでも就労移行支援は「就労が困難な状態にある障害者」を対象とした福祉サービスです。在職中の方はすでに就労できている状態とみなされるため、自治体から支給決定を受けることが原則として認められません。

就労移行支援の対象者と「在職中」の関係

就労移行支援の目的は、一般企業への就職を実現することです。すでに企業に在籍し働いている方は、その目的を達成していると判断されます。

そのため、自治体は「税金を使って、すでに働けている人に訓練を提供する必要はない」と判断するケースが多く、支給決定が下りないのが通常です。制度上、法律で明確に禁止されているわけではありませんが、自治体と事業所の双方から許可を得る必要があります。

アルバイトやパートも「就労」に含まれるのか

アルバイトやパートも、原則として「一般就労」に該当するとみなされます。週数日の短時間勤務であっても、自治体から就労移行支援の支給決定が認められないケースがほとんどです。

ただし、自治体によっては週数時間程度のごく短い就労であれば柔軟に判断する場合もあります。気になる方は、居住地の市区町村の障害福祉窓口か利用を検討している就労移行支援事業所に直接相談するとよいでしょう。

「在職中は使えない」が原則でも例外がある

就労移行支援が原則として在職中利用不可であるのは確かです。しかし、令和6年度(2024年度)の障害福祉サービス等報酬改定により、従来は運用上の取り扱いにとどまっていた「一般就労中の一時的な利用」が法令上に明確に位置づけられました。

この改定によって、在職中でも利用できる3つのパターンが整理されています。次章でそれぞれの条件を詳しく確認します。

就労移行支援が在職中に利用できない主な理由は次のとおりです。
・すでに一般就労できている状態とみなされること
・自治体による支給決定が「就労困難な方」を対象としていること
・アルバイト・パートも原則として就労とみなされること
ただし、令和6年度改定で一時的利用が法令上に整備され、条件付きで利用できるケースが明確化されました。
  • 就労移行支援は「就労が困難な障害者」を対象にしており、在職中は原則対象外です。
  • アルバイトやパートも一般就労に含まれる場合が多く、同様の扱いです。
  • 法律で一律に禁止されているわけではなく、自治体と事業所の判断が鍵になります。
  • 令和6年度改定で「一般就労中の一時的な利用」が法令上に位置づけられました。

在職中・休職中でも利用できる3つのパターン

令和6年度報酬改定で整備された「一般就労中の一時的な利用」には、就労移行支援・就労継続支援A型・就労継続支援B型のいずれかを短期的に利用できる3つのパターンがあります。それぞれ対象者と条件が異なるため、自分の状況に当てはまるパターンを確認しましょう。

パターン1:労働時間延長支援型

短時間勤務(概ね週10時間以上20時間未満)で就職した後、段階的に労働時間を延ばしていく段階で、引き続き就労系事業所の支援を一時的に受けられるパターンです。

利用するには、就職前から同じ就労系事業所を利用していたこと、雇用先企業が事業所への通所を認めていること、市区町村が必要と認めることの3つをすべて満たす必要があります。利用期間は原則3か月から6か月以内で、延長が必要な場合も合計1年までです。生活リズムの維持や、雇用先と事業所との情報共有が主な目的です。

パターン2:復職支援型

在籍する企業に休職中の方が、復職に向けて就労系福祉サービスを利用するパターンです。就労移行支援のほか、就労継続支援A型・B型、自立訓練(生活訓練・機能訓練)、生活介護なども対象サービスに含まれます。

利用するには、以下の3つをすべて満たすことが必要です。第一に、雇用企業や地域の就労支援機関・医療機関による復職支援の実施が見込めない、または困難であること。第二に、本人が復職を希望し、企業および主治医が福祉サービスによる復職支援で復職することが適当と判断していること。第三に、市区町村がより効果的に復職できると認めることです。支給決定期間は1か月から6か月の範囲(上限は企業の定める休職期間終了まで、最長2年)です。

パターン3:就労移行(継続)支援短時間型

概ね週10時間未満の短時間勤務で一般就労に移行した方が、さらなる労働時間の延長やスキルアップのために就労系事業所を一時的に利用するパターンです。

就労移行支援と就労継続支援A型が対象となります(就労継続支援B型は対象外)。就職前から利用していた事業所を引き続き使う形が基本で、市区町村による支給決定が必要です。いずれのパターンも申請前に必ず自治体の障害福祉窓口へ相談し、提出書類を確認するようにしてください。※最新の申請要件は厚生労働省の「障害者の就労支援対策の状況」または居住地の自治体窓口でご確認ください。

パターン 対象となる状況 主な利用期間
労働時間延長支援型 週10時間以上20時間未満の短時間勤務中で時間延長を目指す 原則3〜6か月(最長1年)
復職支援型 休職中で復職を目指す 1〜6か月(最長2年)
短時間型 週10時間未満の短時間勤務で労働時間の拡大を目指す 自治体の支給決定による
  • 3つのパターンはいずれも自治体の支給決定が前提です。
  • 復職支援型は、企業・主治医・市区町村の3者全員の確認が必要です。
  • 短時間型は就労移行支援とA型が対象で、B型は含まれません。
  • 利用期間や提出書類は申請するパターンによって異なります。

在職中でも使える別の支援機関と制度

就労移行支援の利用が認められない場合でも、在職者向けの支援窓口は別に存在します。職場での不安や困りごとを抱えたまま我慢する前に、まず相談できる機関を確認しておきましょう。

地域障害者職業センターのリワーク支援と職場定着支援

地域障害者職業センターは、障害者雇用促進法に基づき全国47都道府県に設置されている公的機関です。独立行政法人JEED(高齢・障害・求職者雇用支援機構)が運営しており、在職者・求職者・休職者のいずれも利用できます。利用料は無料です。

休職中の方向けには「リワーク支援(職場復帰支援プログラム)」があります。医師の助言を得ながら、生活リズムの回復や体力・集中力の改善を支援するプログラムです。東京障害者職業センターの実績では、毎年80%以上の方が職場復帰を果たしています。また、在職中に職場定着で悩む方に対して、講座・グループワーク・個別相談を組み合わせた「職業準備支援」も利用できます。

ジョブコーチ(職場適応援助者)支援

在職中に利用できる就労支援の相談場面

ジョブコーチ支援とは、専門の支援員(ジョブコーチ)が直接職場を訪問し、障害のある本人と事業主の双方に対して具体的なアドバイスをおこなう支援です。地域障害者職業センターに配置されたジョブコーチのほか、訪問型・企業在籍型の3種類があります。

在職中に「仕事のやり方が合わない」「職場の人間関係に困っている」といった困りごとが生じた場合に活用しやすい制度です。ジョブコーチが本人の特性を職場に伝え、合理的配慮の内容を調整する役割も担います。支援を受けるには、まず地域障害者職業センターに相談してみるとよいでしょう。

障害者就業・生活支援センターへの相談

障害者就業・生活支援センター(通称:なかぽつ)は、就労と日常生活の両面から継続的な支援をおこなう機関です。在職中の方も相談でき、職場での悩みや生活上の不安を聞いてもらいながら、必要に応じて他の支援機関につないでもらえます。

就労移行支援事業所が「就職するための訓練の場」であるのに対し、就業・生活支援センターは「就職後も長く働き続けるための伴走役」です。障害者手帳の有無にかかわらず相談でき、継続的な関わりを望む方に特に向いています。最寄りのセンターはハローワークや自治体の福祉窓口で案内しています。

在職中から使える主な支援機関をまとめました。
・地域障害者職業センター:職業評価、リワーク支援、ジョブコーチ支援(無料)
・ジョブコーチ支援:職場訪問による本人・事業主への直接支援
・障害者就業・生活支援センター:就労と生活の両面から継続的にサポート
いずれも手帳なしでも相談できるケースが多く、在職者でも利用のハードルは高くありません。
  • 地域障害者職業センターは在職者・休職者・求職者いずれも利用でき、費用は無料です。
  • ジョブコーチは職場に直接出向き、本人と事業主の両方を支援します。
  • 障害者就業・生活支援センターは就職後の長期定着に特化した相談機関です。
  • これらは就労移行支援と並行して利用できる場合もあります。

休職中に就労移行支援を利用するときの流れと注意点

休職中の方が就労移行支援の利用を検討する場合、事前に確認・準備すべきことがいくつかあります。手続きの順序を把握しておくと、必要書類の取得がスムーズになります。

利用開始までのおおまかな流れ

まず、利用を希望する就労移行支援事業所の見学・相談をおこないます。次に、主治医に「就労移行支援の利用が復職に有効かどうか」について意見を確認します。あわせて、勤務先の人事や担当部署に、事業所への通所について許可を取ることが必要です。

その後、居住地の市区町村の障害福祉窓口に申請し、支給決定を受けます。支給決定後に事業所と契約し、通所開始となります。支給決定は自治体が最終判断を下すため、申請段階で必要書類の種類を必ず窓口に確認しておくとよいでしょう。

会社への報告と確認が欠かせない理由

休職中に就労移行支援を利用するには、勤務先企業の承諾が必要条件のひとつです。会社に内緒で利用することは制度上認められていません。

企業がすでに社内の復職支援制度(職場リワーク)を用意している場合、就労移行支援の利用は「支援の必要がない」とみなされて認可されないケースもあります。反対に、中小企業など社内に復職支援の仕組みがない場合は、就労移行支援の利用が認められやすい傾向があります。

休職期間の残り日数と利用可能期間のバランス

就労移行支援の利用を開始してから復職準備が整うまでには、一定の期間がかかります。事業所によって異なりますが、生活リズムの安定、自己理解の深化、職場環境への適応準備などを含めると、3か月から1年程度の利用を見込む場合が多いです。

休職期間の残り日数が少ない状態で利用を始めると、途中で打ち切られるリスクがあります。会社の就業規則で定める休職期間の上限を確認し、余裕をもって申請できるタイミングを見計らうことが大切です。不安な場合は事業所の相談員や自治体窓口に事前相談するとよいでしょう。

  • 利用開始までには「事業所見学→主治医確認→企業承諾→自治体申請」の順で進みます。
  • 会社への報告なしに利用することは制度上できません。
  • 企業に社内リワーク制度がない場合、就労移行支援が認められやすくなります。
  • 休職期間の残り日数と利用期間のバランスを事前に確認しておくとよいでしょう。

在職中に利用できる金銭的な支援制度も確認しておこう

就労支援を活用して休職・復職を目指す期間中は、収入が不安定になる心配もあります。制度を正しく理解しておけば、経済的な不安を和らげながら支援を利用しやすくなります。

傷病手当金の仕組みと就労移行支援との両立

傷病手当金とは、病気やケガで働けない状態になったとき、健康保険から給付される手当です。在職中に健康保険へ加入しており、就労できない状態にあることが条件です。支給額は標準報酬月額の3分の2程度で、通算1年6か月が上限です(詳細な要件は加入している健康保険組合にご確認ください)。

休職中に就労移行支援を利用している期間も、就労していない状態であれば傷病手当金を受け取りながら通所できる場合があります。ただし、就労できると判断される行動が支給停止の判断材料になることもあるため、主治医や加入先の健康保険組合にあらかじめ相談しておくと安心です。

在職中・復職後に使える就労定着支援

就労定着支援とは、就労移行支援や就労継続支援を経て一般企業に就職した方が、職場に定着できるよう最長3年間サポートを受けられる福祉サービスです。就職後に通い始めるサービスのため在職者向けと言えます。

支援内容は、生活リズムや職場環境への適応に関する相談、企業との連絡調整などです。月に1回程度、担当者と面談や連絡をとる形で進む場合が多く、復職後の「もう一度働き始めたばかりの不安定な時期」に継続的なサポートを受けられます。利用するには、就職後6か月以内に申請することが必要です。

障害年金は在職中でも受給できるか

障害年金は、障害を原因に日常生活や就労に著しい困難を抱えている場合に支給される公的年金制度です。在職中・就労中であっても、障害の程度が認定基準を満たしていれば受給できます。ただし、就労の状況(業務内容・収入・就業時間など)が審査に影響する場合もあります。

障害年金の受給要件や等級の判定基準は障害の種類によっても異なります。申請を検討している場合は、日本年金機構の年金事務所または社会保険労務士に相談することをお勧めします。詳細な要件は日本年金機構の公式サイトでご確認ください。

制度名 在職中の受給 主な確認先
傷病手当金 休職中かつ就労不能状態であれば可能 加入先の健康保険組合
就労定着支援 就職後6か月以内に申請、最長3年 就労移行支援事業所・自治体
障害年金 就労中でも受給できる場合あり 年金事務所・社会保険労務士
  • 傷病手当金は休職中の収入を補う手段として、就労移行支援と並行できる場合があります。
  • 就労定着支援は就職後6か月以内に申請する必要があります。
  • 障害年金は在職中でも等級要件を満たせば受給できる可能性があります。
  • いずれも個人の状況によって要件が変わるため、必ず担当窓口に直接確認しましょう。

まとめ

就労支援を在職中に利用できるかどうかは、状況によって異なります。就労移行支援は原則として在職中の利用が認められませんが、令和6年度の制度整備により休職中や短時間勤務の方向けの「一時的利用パターン」が法令上に明確化されました。また、地域障害者職業センターやジョブコーチ支援など、在職者でも利用できる支援機関は別途あります。

まず取り組みやすい最初の一歩は、居住地の市区町村障害福祉窓口か、地域障害者職業センターに現在の状況を相談してみることです。制度の利用可否も、電話や来所相談で確認できます。

「在職中だから何もできない」ということはありません。状況を整理することで、使える制度と相談先は必ず見えてきます。焦らず、今の自分に合ったルートを探していきましょう。

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