就労継続支援A型には、雇用契約を結んで最低賃金以上の賃金を受け取れるという大きな特徴があります。障害のある方が福祉的な支援を受けながら働ける仕組みとして、多くの方が活用しています。一方で、「やめとけ」「デメリットが多い」という声も見聞きすることがあり、利用を検討している段階で不安を感じる方も少なくないでしょう。
デメリットの内容を具体的に把握しないまま利用を始めると、「思っていた収入と違った」「一般就労への支援がほとんどなかった」といったミスマッチが起きやすくなります。この記事では、就労継続支援A型のデメリットを制度の仕組みと照合しながら整理し、メリットや向き・不向きとあわせて確認できるようにまとめています。
利用するかどうかの判断に必要な情報を、できるだけ中立に整理していますので、ぜひ参考にしてください。
就労継続支援A型とはどのようなサービスか
就労継続支援A型の制度的な位置づけを確認しておくことが、デメリットを正確に理解する前提になります。障害者総合支援法に基づく就労系障害福祉サービスの一つであり、厚生労働省の資料では「一般企業に雇用されることが困難であって、雇用契約に基づく就労が可能である者に対して、雇用契約の締結等による就労の機会の提供及び生産活動の機会の提供を行う」サービスと定義されています。
雇用契約あり・最低賃金保証という仕組み
就労継続支援A型の最大の特徴は、利用者と事業所が雇用契約を結ぶ点です。雇用契約が存在するため、労働基準法や最低賃金法の適用を受け、最低賃金以上の賃金が支払われます。これは雇用契約のない就労継続支援B型との大きな違いです。
厚生労働省が公表している令和6年度の実績によると、就労継続支援A型事業所の平均賃金月額は91,451円で、前年度の86,752円から約5,000円増加しています(令和6年度工賃(賃金)の実績、厚生労働省)。最低賃金が保証される仕組みである一方、勤務時間が短いケースでは月収がこれを大きく下回ることもあります。
就労系障害福祉サービスの中での位置づけ
障害者総合支援法における就労系障害福祉サービスには、就労選択支援・就労移行支援・就労継続支援A型・就労継続支援B型・就労定着支援の5種類があります。このなかでA型は「雇用契約を結びながら就労の機会を得る」という位置づけであり、「一般就労への移行支援」を主目的とする就労移行支援とは役割が異なります。
この制度的な役割の違いが、後述するデメリットとも深く関わっています。A型はあくまで「就労の機会の提供」が主目的であるため、一般就労を目指すための訓練やサポートは制度上の中心課題ではありません。
利用対象と受給者証の取得
就労継続支援A型を利用するには、障害福祉サービス受給者証が必要です。市区町村の窓口に申請し、支給決定を受けることで利用が始まります。障害者手帳の有無だけで判断されるわけではなく、医師の診断書や支援の必要性などを総合的に確認して決定されます。
利用料については、前年度の収入に基づいて自己負担額が決まります。多くの場合、住民税非課税世帯または生活保護受給者は自己負担ゼロで利用できます。利用料の詳細は、お住まいの市区町村の福祉窓口または自立支援給付担当窓口で確認するとよいでしょう。
一般就労への移行支援を主目的とする就労移行支援とは異なります。
利用前に「自分が何を目的とするか」を整理しておくことが判断の基準になります。
- 就労継続支援A型は障害者総合支援法に基づくサービスで、雇用契約を結んで就労する仕組みです。
- 令和6年度の全国平均賃金は月額91,451円(厚生労働省調べ)ですが、勤務時間によって個人差があります。
- 就労移行支援・就労継続支援B型とは制度上の目的が異なるため、利用前に違いを整理しておくとよいでしょう。
- 利用には受給者証の取得が必要で、申請先はお住まいの市区町村の福祉窓口です。
就労継続支援A型の主なデメリット
複数の情報源にあたると、就労継続支援A型のデメリットとして共通して挙げられる点がいくつかあります。以下では、それぞれの内容を制度の仕組みと照合しながら整理します。
一般就労を目指す訓練・支援が少ない
就労継続支援A型は「雇用契約による就労機会の提供」が目的であり、一般企業への就職を目指すための訓練や就職活動サポートは制度上の主眼ではありません。履歴書の書き方・面接練習・就職先の開拓といった一般就労に特化した支援を行う事業所は存在しますが、すべての事業所で提供されているわけではなく、事業所ごとの差が大きい点に注意が必要です。
厚生労働省の資料(障害者の就労支援について、令和元年データ)では、A型事業所から一般就労に移行する利用者の割合は約25%とされています。4人に1人が一般就労に進む一方、多くの利用者が長期的にA型事業所を活用し続けるという実態があります。
一般就労を2年以内に目指したいという場合は、就労移行支援の利用が制度上の趣旨に合っています。A型を選ぶ前に、自分の目標時期と支援内容を照合しておくとよいでしょう。
安定した出勤が求められる
就労継続支援A型は雇用契約を伴うサービスのため、労働者としての責任が生じます。一般的に週3〜5日の出勤が求められるケースが多く、就労継続支援B型(週1日からの利用も可)と比較すると通所頻度の面での負担が大きいといえます。
体調の波が大きい方や、通院が頻繁に必要な方にとっては、定期的な出勤を続けることが難しいこともあります。欠勤や遅刻が続くと契約の更新に影響する可能性があるため、利用前に自分の体調管理のパターンと照らし合わせて検討することが大切です。なお、事業所によっては相談のうえで労働時間や出勤頻度を柔軟に調整できる場合もあります。
収入だけで生活費を賄うことが難しい場合がある
令和6年度の全国平均賃金月額は91,451円(厚生労働省調べ)です。ただしこれは全国平均であり、勤務日数・時間・事業所の所在地域によって実際の月収は大きく異なります。短時間勤務の場合は月収が6〜7万円台にとどまることもあります。
家賃・食費・光熱費・通院費などを合計すると、賃金のみで一人暮らしの生活費を賄うことが難しいケースもあります。障害年金を受給している場合は収入を補う形になりますが、障害年金の受給状況は個人によって異なります。生活保護を受給している方については、A型事業所の賃金と生活保護費の関係が変化する可能性があるため、利用前に相談窓口で確認しておくと安心です。
失業手当の受給に関する注意点
就労継続支援A型で雇用契約を結び、週20時間以上・31日以上働く見込みがある場合、雇用保険に加入することになります。これは一般の雇用と同じ仕組みです。雇用保険に加入すると、A型事業所を利用している間は「失業状態ではない」とみなされるため、それまで受給していた失業手当(雇用保険の基本手当)は打ち切られます。
一方で、失業手当の受給残日数が一定以上ある状態でA型事業所に「就職」した場合は、「再就職手当」の対象になる可能性があります。また、A型事業所を退職した後は、雇用保険の加入期間に応じて失業手当の受給対象になり得ます。詳細な条件はハローワークで確認するとよいでしょう。
週の労働時間・雇用保険の加入状況・受給残日数などが関係するため、
ハローワーク(最寄りの公共職業安定所)への事前確認が確実な方法です。
- 一般就労を目指す訓練・就職活動サポートは事業所によって大きく差があります。
- 週3〜5日の安定した出勤が求められるため、体調の波がある場合は利用前に相談が必要です。
- 令和6年度の全国平均賃金は月額91,451円ですが、勤務時間により個人差があります。
- 雇用保険の加入・失業手当への影響はハローワークで事前に確認するとよいでしょう。
2024年度報酬改定と事業所の経営リスク
2024年度(令和6年度)の障害福祉サービス等報酬改定は、就労継続支援A型事業所の経営に大きな影響を与えました。事業所の経営状況はサービスの安定性にも関わるため、利用者にとっても把握しておくべき内容です。
スコア方式の厳格化とは
就労継続支援A型の基本報酬は「スコア方式」によって算定されています。スコア方式とは、就労時間・賃金・一般就労への移行実績・支援の質などの項目を点数化し、その合計に応じて事業所が受け取る報酬単価が決まる仕組みです。2024年度の改定では、この評価項目が厳格化されました。特に「生産活動収支が連続してマイナスの場合は減点」という要件が追加されたことで、売上が賃金支払い額を下回り続けている事業所では基本報酬が大幅に減少するケースが生じています。
事業所数の変化と閉鎖リスク
厚生労働省の令和6年度工賃実績報告によると、対象となった就労継続支援A型事業所の数は4,220箇所でした。事業所数が減少傾向にある背景には、報酬改定による収入減と最低賃金上昇による人件費増という両面からの経営圧迫があります。経営が悪化した事業所が閉鎖・廃止されるケースも報告されており、利用者が突然事業所を変更せざるを得ない状況になることもあります。
事業所が閉鎖になった場合、他の事業所を探す必要があります。移行先の事業所が見つかるまでの間、支援が途切れることへの不安を感じる方もいます。相談支援事業所(計画相談支援)や自治体の障害福祉担当窓口に相談すると、移行先の紹介や手続きのサポートを受けられます。
事業所を選ぶ際に確認するとよい点
経営の安定性に関わる情報を事前に把握しておくことで、リスクをある程度減らせます。例えば、事業所の開所年数・利用者の定着率・スタッフの体制・法人全体の規模などは、見学時に質問できる事項です。WAM NET(独立行政法人福祉医療機構が運営するサービス情報サイト)では、事業所の基本情報を確認できます。
| 確認項目 | 確認方法 |
|---|---|
| 事業所の開所年数・運営法人の規模 | 見学時の質問・WAM NET |
| 利用者の定着率・離職率 | 見学時の質問・口コミ |
| スタッフの人員体制 | 見学時の確認・情報公開 |
| 生産活動の内容・売上の状況 | 見学時の質問(任意公開) |
| 閉鎖時のサポート体制 | 見学時の質問・契約前確認 |
- 2024年度報酬改定でスコア方式が厳格化され、経営難に陥る事業所が増加しています。
- 事業所閉鎖のリスクに備えて、見学時に運営体制や生産活動の安定性を確認しておくとよいでしょう。
- 閉鎖が起きた際の相談先は、相談支援事業所または市区町村の障害福祉担当窓口です。
- WAM NETで事業所の基本情報を事前に確認することもできます。
デメリットと合わせて知っておきたいメリット
就労継続支援A型のデメリットを正確に理解するためには、メリットとの対比で整理することが助けになります。制度の仕組みから確認できるメリットを以下に整理します。
最低賃金以上の賃金が保証される
就労継続支援A型の最大のメリットは、雇用契約を結ぶことで最低賃金以上の賃金が保証される点です。就労継続支援B型の平均工賃が月額24,141円(令和6年度、厚生労働省調べ)であるのに対し、A型の平均賃金月額は91,451円と大きな差があります。一般企業でのフルタイム就労は難しい状況でも、福祉的な配慮を受けながら賃金を得られる点は、A型ならではの特徴です。
社会保険への加入と労働者としての権利
雇用契約を結ぶことで、労働基準法・最低賃金法の適用を受けます。週20時間以上・31日以上の見込みで働く場合は雇用保険にも加入できます。また、事業所によっては社会保険(健康保険・厚生年金保険)の加入対象になるケースもあります。これらの社会保険への加入は、就労継続支援B型や就労移行支援との制度上の大きな差異です。
障害特性に応じた配慮のある環境
A型事業所では、障害のある利用者が働くことを前提とした職場環境が整えられています。一般企業と比較すると、体調管理・業務量の調整・コミュニケーションの方法などについて配慮を受けやすい環境です。利用期間に上限がないため(就労移行支援は原則2年)、自分のペースで長期にわたって働き続けることもできます。
これらが自分の状況に合うかどうかを、デメリットと並べて確認することが判断の起点になります。
- 最低賃金以上の賃金が保証され、令和6年度の全国平均は月額91,451円です。
- 週20時間以上・31日以上の勤務で雇用保険への加入対象になります。
- 利用期間に上限がなく、障害特性に応じた配慮を受けながら長期的に働けます。
- 就労継続支援B型・就労移行支援との違いを整理したうえで選択するとよいでしょう。
向いている人・向いていない人の判断基準
就労継続支援A型が自分に合うかどうかを判断するには、デメリット・メリットの両面と自分の状況を照合することが必要です。以下では、制度の仕組みと照らして整理した判断の目安を示します。
A型が向いていないと考えられるケース
2年以内に一般就労を目指しており、就職活動サポートを重視したい場合は、就労移行支援のほうが制度の趣旨に合います。就労移行支援は「安定した一般就労への移行」を主目的としており、履歴書作成・面接練習・就職先の開拓といった支援が中心になります。一般就労を目指す時期の目安として、2年以内であれば就労移行支援、それ以上の期間を見込む場合はA型かB型が検討候補になります。
また、体調の波が大きく、週3〜5日の安定した出勤が難しい方にとっては、出勤要件がハードルになりやすいです。体調に不安がある場合はまず就労継続支援B型での就労経験を積む、という選択肢もあります。
A型が活用しやすいと考えられるケース
一般企業でのフルタイム就労は現時点では難しいが、週3〜5日程度の安定した通所が見込める場合はA型の活用しやすいパターンです。障害年金などの収入と組み合わせて生活費を賄える見込みがある場合も、A型の収入水準と合わせて検討しやすいでしょう。今すぐ一般就労を目指すよりも、社会参加の経験を積みながら状況を整えたいという場合にも、利用期間に上限がないA型は選択肢として機能します。
就労移行支援・B型との比較で整理する
| サービス | 雇用契約 | 賃金・工賃 | 主な目的 | 利用期間 |
|---|---|---|---|---|
| 就労継続支援A型 | あり | 最低賃金以上 | 就労機会の提供・能力向上 | 上限なし |
| 就労継続支援B型 | なし | 工賃(平均24,141円/月) | 就労機会の提供・能力向上 | 上限なし |
| 就労移行支援 | なし | なし(訓練中) | 一般就労への移行支援 | 原則2年 |
- 2年以内に一般就労を目指す場合は、就労移行支援の利用が制度の趣旨に合います。
- 週3〜5日の安定通所が難しい場合は、まず就労継続支援B型を検討する方法もあります。
- 障害年金や生活保護と組み合わせて生活費を確保できる見通しがあれば、A型の活用しやすいパターンです。
- どのサービスが適しているかは、市区町村の障害福祉担当窓口や相談支援事業所に相談することが出発点になります。
まとめ
就労継続支援A型のデメリットとして押さえておくべき点は、一般就労支援の薄さ・安定出勤の要件・収入水準・失業手当への影響・事業所の経営リスクの5つです。これらはA型の制度的な役割から必然的に生じる特性であり、悪い制度というわけではなく「どの目的で使うか」によって評価が変わります。
自分の状況と照合する最初のステップとして、まずお住まいの市区町村の障害福祉担当窓口か相談支援事業所に相談することを検討してみてください。制度の説明を受けながら、就労移行支援・B型・A型のどれが現在の状況に合うかを一緒に整理することができます。
この記事がA型の利用を考えているあなたの判断に、少しでも役立てば幸いです。焦らず、自分のペースで情報を集めていきましょう。

