就労移行支援の事業所で働くことを考えたとき、「給料の水準はどのくらいか」「どんな職種があって、どんな仕事をするのか」という疑問は自然なことです。福祉の仕事に興味はあっても、収入やキャリアの見通しが立ちにくいと、一歩踏み出しにくさを感じることもあるでしょう。
この記事では、就労移行支援事業所で働く職員(障がいのある方をサポートする側)の給料を職種別・常勤非常勤別に整理し、処遇改善加算が給与に与えるしくみ、未経験からのキャリアパス、向いている人の特徴まで、一次情報をもとに解説します。
職員として就労移行支援に関わることを検討している方にとって、制度と実態を両面から把握しておくことが、就職・転職判断の土台になります。具体的な数字と制度の全体像を一緒に確認していきましょう。
就労移行支援で働く職員の給料はどのくらい?職種別年収の目安
就労移行支援事業所には複数の職種があり、給料は職種と雇用形態によって大きく異なります。まず調査データに基づいた年収の目安を職種別に確認しましょう。
調査データで見る職種別の年収(常勤・非常勤別)
厚生労働省が実施した「平成29年 障害福祉サービス等経営実態調査」によると、就労移行支援事業所の職員年収は以下のとおりです。
| 職種 | 常勤(年収目安) | 非常勤(年収目安) |
|---|---|---|
| 施設長・管理者 | 約492万円 | 約498万円 |
| サービス管理責任者 | 約413万円 | 約150万円 |
| 就労支援員 | 約334万円 | 約211万円 |
| 職業指導員 | 約315万円 | 約185万円 |
| 生活支援員 | 約303万円 | 約204万円 |
常勤の直接支援職(就労支援員・職業指導員・生活支援員)は年収300〜340万円前後に集まっています。管理職と直接支援職の差は大きい一方、直接支援職同士の差は比較的小さい点が特徴です。このデータは平成29年時点のものです。令和6年度の処遇改善加算の一本化・引き上げにより、現在は水準が変動している可能性があります。最新の給与水準は各事業所の求人票や面接時の確認が確実です。
常勤と非常勤で年収差が大きくなる理由
上の表でサービス管理責任者の常勤(約413万円)と非常勤(約150万円)の差が約260万円にのぼる点が目を引きます。非常勤は実働時間に応じた報酬となるため、年収ベースの集計では常勤より大幅に低くなることが主な要因です。就労支援員や生活支援員でも常勤と非常勤の差は100万円以上あります。
就労移行支援事業所で長期的に働き、安定した収入を得ることを考えるなら、常勤雇用を前提に探すのが基本です。求人票に「常勤」「正職員」と記載されているかどうかを最初に確認しておきましょう。非常勤から始めて後から常勤に移行できる事業所もあるため、面接時に昇格・転換の制度があるかを聞いてみることも選択肢の一つです。
就労継続支援A型・B型の職員給料との比較
同じ経営実態調査のデータで就労移行支援の常勤職員と就労継続支援を比べると、就労移行支援は就労継続支援B型に近い水準です。施設長・管理者では就労移行支援(約492万円)が就労継続支援A型(約396万円)を大きく上回り、生活支援員クラスでは各サービス間の差が縮まります。
就労移行支援は一般就労への移行実績がスコアとして報酬に反映される制度設計になっており、就職率の高い事業所ほど事業収入が増える仕組みです。収入が安定している事業所ほど職員給与に回せる財源も生まれやすいため、事業所を選ぶ際の一つの参考になります。
- 常勤の直接支援職年収は概ね300〜340万円前後(平成29年度調査)
- 管理者・サービス管理責任者は400万円台が目安
- 常勤と非常勤の差は職種により100〜260万円以上に開く
- 就労移行支援の給与水準は就労継続支援B型と近い傾向
- 最新データは各事業所の求人情報・面接時の確認が確実
処遇改善加算が職員の給料を変えるしくみ
就労移行支援職員の給料は事業所の基本報酬だけでなく「処遇改善加算」によっても変わります。令和6年度から制度が大きく整理されたため、働く前に基本的な仕組みを把握しておきましょう。
令和6年6月からの加算一本化とは
令和6年6月以前は「処遇改善加算」「特定処遇改善加算」「ベースアップ等支援加算」という3種類の別々の加算がありました。これが令和6年6月の報酬改定で「福祉・介護職員等処遇改善加算」として一本化され、加算率も引き上げられました。一本化後の加算は区分I〜IVの4段階に整理されており、事業所がキャリアパス要件や職場環境改善の取り組みをどれだけ満たしているかによって適用される区分が決まります。
加算率の詳細は事業所の種類や規模によって異なるため、正確な数字は厚生労働省が公表する各サービスの報酬改定概要でご確認ください。なお、令和6年度・令和7年度にはそれぞれ2.5%・2.0%のベースアップが目標とされており(厚生労働省資料より)、今後も段階的な改善が続く見通しです。
加算は誰に、どう配分されるか
処遇改善加算は事業所が受け取り、職員に給与として配分する仕組みです。配分の基本は福祉・介護職員への給与改善に充てることとされており、就労移行支援では就労支援員・職業指導員・生活支援員などが主な対象です。令和6年度改定から配分ルールが見直され、事業所の判断によって管理者や事務職員にも一部配分できるようになりました。
加算を適切に活用している事業所では、基本給やボーナスのベースアップという形で手取りが増えます。一方、加算を取得していない事業所では、加算分の収入が職員に届きません。求人情報や面接時に「処遇改善加算を取得しているか」「どの区分か」を確認しておくと、給与の実態をより正確に把握できます。
加算の有無で手取りにどれだけ差が出るか
処遇改善加算区分Iを取得している事業所と、未取得の事業所では、同じ職種でも年間の手取り額に数十万円単位の差が生じることがあります。事業所の収益構造と加算取得状況は、職員の待遇に直結する情報です。
福祉・介護分野全体では、他産業と比較して賃金格差があるとされており(厚生労働省資料)、処遇改善加算はその格差を縮める制度として位置づけられています。加算取得の有無は求人票に明記されていない場合もあるため、気になる事業所への見学や面接の際に率直に確認するのが確実です。
・令和6年6月から3つの加算が「福祉・介護職員等処遇改善加算」に一本化
・区分I〜IVの4段階。要件を満たすほど加算率が高く、職員手取りも増える
・加算を取得していない事業所では職員へのメリットがないため、必ず確認を
- 令和6年6月から処遇改善加算が一本化され、制度が整理された
- 区分I〜IVのどれが適用されるかで、実際の手取りが大きく変わる
- 令和6・7年度はそれぞれ2.5%・2.0%のベースアップが目標
- 配分の基本は就労支援員・職業指導員・生活支援員などの直接支援職
- 加算取得の有無は面接・見学時に必ず確認する
就労移行支援の職員はどんな仕事をするのか
給料と並んで気になるのが、実際の仕事内容です。就労移行支援には複数の職種があり、それぞれ役割が異なります。職種ごとの仕事内容と配置基準を整理します。
職種ごとの仕事内容と配置基準
就労移行支援事業所の主な職種は、管理者・サービス管理責任者・職業指導員・生活支援員・就労支援員の5つです。障害者総合支援法により、サービス管理責任者は事業所ごとに1人以上(利用者61人以上の場合は40人あたり1人以上)の常勤配置が義務付けられています。職業指導員と生活支援員は利用者6人あたり1人以上、就労支援員は利用者15人あたり1人以上の配置が必要です。
サービス管理責任者の主な業務は個別支援計画の作成・管理・評価、職員への指導・助言、関係機関との連携調整です。職業指導員は職業訓練や実習先の開拓・指導を担い、生活支援員は生活習慣の安定や健康管理面のサポートを行います。就労支援員は利用者に合った職場探しと就職後の定着支援が中心です。
1日の業務の流れ(就労支援員の例)
就労支援員の午前は、利用者との面談・訓練プログラムの実施・ハローワークや企業との連絡調整が中心です。午後は求職者との面接練習や履歴書・応募書類の添削、支援記録の記入、翌日の訓練準備が続きます。就職が決まった利用者には職場訪問や定期面談を行い、入職後6か月間の定着支援も担います。
事業所によっては在宅利用者へのオンライン支援や企業訪問・求人開拓なども業務に含まれます。デスクワークと外出業務が混在するため、一日の動きにメリハリがある職種です。記録業務の量は事業所の規模やシステム整備状況によって大きく異なります。
就労移行支援の職員に資格は必要か
管理者を除き、職業指導員・生活支援員・就労支援員には法定の資格要件はありません。未経験・無資格でも応募できる求人は多く、他業種からの転職もしやすい職種です。ただし、社会福祉士・精神保健福祉士・介護福祉士などの資格を持つと採用時に評価されるケースが多く、利用者の障害特性に関する専門的な知識が仕事の質に直結します。
サービス管理責任者については、障害者の保健・医療・福祉・就労・教育分野での実務経験(5〜10年、保有資格により異なる)と、基礎研修・サービス管理責任者研修の修了の両方が必要です。要件の詳細は保有資格や実務の分野によって変わるため、各都道府県の研修実施機関または厚生労働省の公式資料でご確認ください。
- 直接支援職(就労支援員等)は資格不問で応募できる求人が多い
- 社会福祉士・精神保健福祉士などの資格は採用・処遇面で評価されやすい
- サービス管理責任者は5〜10年の実務経験と所定の研修修了が必要
- 記録業務・外出業務・オンライン支援が混在する多様な仕事内容
- 配置基準は障害者総合支援法で定められており、事業所ごとに職種ごとの最低人数がある
就労移行支援職員のキャリアパスと収入を上げる方法
就労移行支援の職員として長く働くためには、キャリアの見通しと収入を上げる方法を知っておくことが大切です。段階的なステップアップの道筋を整理します。
直接支援職からサービス管理責任者へのステップ
就労支援員・職業指導員・生活支援員として実務経験を積み、所定の年数(資格の有無により異なりますが目安は5〜10年)を満たした段階でサービス管理責任者(通称:サビ管)の研修受講資格が得られます。サービス管理責任者の平均年収は400万円台前半から500万円前後とされており、経験年数が上がるにつれて収入も増える傾向があります。
サービス管理責任者研修の受講は、実務経験の要件を満たす2年前から基礎研修を受けることができます。先を見越して早めに基礎研修を修了しておくと、資格取得のタイミングを早められます。研修費用を事業所が負担・補助しているかどうかも、求人時に確認しておきたいポイントです。
管理者・エリアマネージャーへのキャリアアップ
サービス管理責任者の経験を積んだ後は、事業所の管理者(施設長)へ昇格するルートがあります。管理者は事業所全体の運営・人事・収支管理を担う立場で、年収500万円前後以上が目安とされています。大手法人や複数拠点を持つ事業者では、複数拠点を統括するエリアマネージャーへの道もあります。
さらに、障がい福祉業界では実務経験と人脈を積んだ後に独立して事業所を立ち上げるケースも少なくありません。一般企業・NPO法人・社会福祉法人と多様な運営主体が参入している分野のため、キャリアの選択肢は比較的広いといえます。
収入を上げるために取れる資格と研修
直接支援職として給料を上げるために有効な資格として、社会福祉士・精神保健福祉士・公認心理師・ジョブコーチ(職場適応援助者)などがあります。特に精神・発達障がいの利用者が多い事業所では、精神保健福祉士の資格が採用・昇給の評価軸になるケースがあります。
また、処遇改善加算の区分Iを取得している事業所では、キャリアパス要件の一環として職員の資格取得・研修受講を積極的に支援している場合があります。入職後の研修費用補助や資格手当の有無は、給与に直結する条件です。求人票に記載がなければ面接時に確認しておくとよいでしょう。
直接支援職(就労支援員・職業指導員・生活支援員)
↓ 実務経験5〜10年+研修修了
サービス管理責任者(サビ管):年収400万円台〜500万円前後
↓ 管理・マネジメント経験
管理者(施設長)・エリアマネージャー:年収500万円前後〜
- サービス管理責任者の平均年収は400万円台〜500万円前後とされる
- 研修は実務経験要件を満たす2年前から基礎研修の受講が可能
- 精神保健福祉士・社会福祉士などの資格は昇給・採用評価に影響することが多い
- 処遇改善加算区分Iの事業所では研修費用補助や資格手当が整備されていることが多い
- 独立・開業という選択肢もあり、業界内の人脈形成がキャリアの幅を広げる
就労移行支援の職員に向いている人とは
給料とキャリアの見通しが分かったら、自分がこの仕事に向いているかどうかも確認しておきましょう。就労移行支援の職員として長く活躍できる人の特徴を整理します。
利用者の成長に向き合える粘り強さ
就労移行支援では、利用者が就職に至るまでに数か月から2年間かかることが多く、その過程には気持ちの波や状態の変化があります。一朝一夕で結果が出る仕事ではないため、利用者の小さな変化や成長を一緒に喜べる粘り強さが求められます。就職が決まったときの達成感は、職員としての大きなやりがいの一つです。
逆に、短期間で成果を出すことや、数字の変化を追うことにやりがいを感じるタイプには、精神的な消耗を感じやすい仕事でもあります。利用者との関わりに充実感を見出せるかどうかが、長期就業の鍵になります。
企業・関係機関との連携を苦にしない人
就労移行支援の職員、とくに就労支援員やサービス管理責任者は、ハローワーク・企業・医療機関・相談支援専門員など多様な関係機関との連携が日常業務になります。電話・訪問・書類のやりとりが多く、社交的に動ける人や対外的な調整が苦にならない人が向いています。
地域の企業や支援機関に顔を知られることで、求人開拓や就労定着の支援がスムーズになります。人脈を少しずつ広げることが事業所の支援力につながるため、地道な外部連携を楽しめる気質が強みになります。
未経験・他業種からの転職でも活躍できるか
前述のとおり、直接支援職には資格要件がなく、他業種からの転職実績は多い分野です。前職がサービス業・教育・営業・IT・医療事務など、対人スポーツ・コミュニケーション業務に近い経験は、利用者支援や企業連携の場面で生かしやすいとされています。福祉の制度知識は入職後に研修で習得できるため、「人の役に立つ仕事がしたい」という動機があれば、出発点としては十分です。
ただし、精神障がいや発達障がいの方への支援では、障害特性や対応方法の知識が仕事の質に直結します。入職後に積極的に研修や勉強会に参加し、専門性を高めていく姿勢が長期的な活躍につながります。
- 利用者の就職という長期ゴールに向けて粘り強く関われる人が向いている
- ハローワーク・企業・医療機関との外部連携が業務の中心になる
- 資格不問の求人が多く、他業種からの転職もしやすい職種
- 精神・発達障がいの知識は入職後に研修で習得できる
- 研修・勉強会に積極的に参加できる人ほど専門性が早く高まる
まとめ
就労移行支援の職員給料は、職種・雇用形態・処遇改善加算の取得状況によって大きく異なります。常勤の直接支援職は年収300〜340万円前後が目安ですが、令和6年度の加算一本化・引き上げにより今後の水準改善が見込まれています。サービス管理責任者へのキャリアアップで400万円台以上も視野に入り、管理者・エリアマネージャーへのステップも開かれています。
まず取り組みやすいこととして、気になる事業所の求人票で「処遇改善加算の取得状況」「常勤・非常勤の区分」「研修・資格取得支援の有無」の3点を確認するところから始めてみてください。これだけで事業所間の給与の実態の違いがかなり見えてきます。
制度の理解が深まるほど、自分に合った事業所選びの精度が上がります。この記事を出発点に、見学や面接を通じて現場の雰囲気も確かめながら、納得できる一歩を踏み出してください。

