就労移行支援でWebデザインを学ぶ方法|費用・選び方で差がつく

就労移行支援でWebデザインを学びながら、男性利用者がパソコンでバナー制作に取り組む様子

就労移行支援を活用してWebデザインを学べることを、ご存じでしょうか。障がいのある方が費用の負担を大幅に抑えながらデザインスキルを習得し、一般就労を目指せる仕組みが整っています。ただし、Webデザインに対応した事業所は限られており、カリキュラムの内容や支援の質は事業所によって大きく異なります。

この記事では、就労移行支援でWebデザインを学ぶ際の制度の概要、カリキュラムの内容と費用の目安、そして事業所を選ぶ際に確認しておきたいポイントを整理しています。就職後の働き方の選択肢についても合わせて触れています。

就労移行支援の利用を検討していて「Webデザインの仕事に就きたいけれど、費用が心配」「どんなスキルが身につくのか知りたい」という方は、制度の概要から確認してみてください。

就労移行支援とWebデザインの関係を整理する

就労移行支援は障害者総合支援法に基づく福祉サービスです。一般企業への就職を希望する障がい・難病のある方が、訓練や就職活動支援を受けながら就労を目指す制度で、Webデザインなどの専門スキル習得もその支援の一つとして位置づけられています。

就労移行支援の制度的な位置づけ

障害者総合支援法第5条第13項では、就労移行支援について「通常の事業所に雇用されることが可能と見込まれる者に対し、就労に必要な知識及び能力の向上のために必要な訓練、求職活動に関する支援等を行う」サービスと定めています。利用対象は原則18歳以上65歳未満で、一般就労への意欲がある方です。

サービスの利用期間は標準で2年間(原則)です。一部の自治体では条件によって延長が認められる場合があります。利用期間の詳細は、お住まいの自治体の障害福祉窓口でご確認ください。

就労移行支援事業所では、Webデザインに限らず「カウンセリング・スキル習得・職場体験・就職活動サポート・職場定着支援」という一連の流れが提供されます。Webデザインはそのスキル習得部分にあたります。

すべての事業所でWebデザインが学べるわけではない

就労移行支援事業所の訓練内容は事業所ごとに異なります。Webデザインに関するカリキュラムを設けている事業所もあれば、一般事務やビジネスマナー中心の事業所もあります。同じ事業者の事業所でも、拠点によってカリキュラムの内容が異なる場合があります。

Webデザインを学ぶことを目的に事業所を探す場合は、見学や問い合わせの段階でカリキュラム内容を直接確認することが大切です。「IT・Web系に特化した事業所」「クリエイティブコースがある事業所」といった表記を手がかりに絞り込むとよいでしょう。

Webデザイナーとして就職した実績があるか確認する

就労移行支援事業所を選ぶ際に確認しておきたいのが、過去の利用者でWebデザイナーとして就職した実績があるかどうかです。就職実績がある事業所は、就職に直結するカリキュラムと就職活動サポートの質が一定以上あると考えられます。

事業所のホームページや見学時に「Webデザイン・IT系での就職者数」「就職後の定着率」を確認しておくと、事業所選びの判断材料になります。

就労移行支援でWebデザインを学ぶ前に確認したい3つのこと
①その事業所にWebデザイン専用のカリキュラムがあるか
②Webデザイナーとして就職した実績があるか
③在宅や遠隔での訓練に対応しているか
  • 就労移行支援は障害者総合支援法に基づく福祉サービスで、Webデザインの習得もその支援内容に含まれる
  • 利用期間は原則2年間(条件によって延長可能な場合あり)
  • Webデザインに対応しているかは事業所によって異なるため、見学時に直接確認する
  • 就職実績の有無が事業所選びの重要な判断材料になる

就労移行支援で学べるWebデザインのカリキュラム内容

Webデザインに対応した事業所では、基礎的なデザイン知識からコーディング、就職用ポートフォリオの制作まで、段階的にスキルを積み上げられるカリキュラムが組まれています。具体的にどのような内容が学べるのかを確認しておくと、事業所選びの判断がしやすくなります。

基礎スキル:デザインツールとコーディングの習得

Webデザインの訓練では、まずデザインの基礎とツールの操作から始まります。主に学ぶ内容は以下の通りです。

Adobe Photoshop・Illustratorなどのグラフィックソフト、HTML・CSS・JavaScriptを使ったコーディング、WordPressなどのCMSの基本操作が代表的な学習内容です。事業所によってはWebマーケティング(SEO・SEM)やUIデザインの基礎まで学べるところもあります。

授業形式と動画視聴の自習形式を組み合わせる事業所が多く、わからない部分はスタッフに相談しながら進めることができます。未経験からでも基礎から学べる設計になっている点が特徴です。

実践スキル:ポートフォリオ制作と就職準備

Webデザイナーとして就職活動を進める際には、自分の制作物をまとめたポートフォリオ(作品集)の提出を求める企業が多くあります。就労移行支援事業所では、訓練の中でポートフォリオに載せられる実績を作ることができる場合があります。

ホームページ制作・バナーデザイン・ロゴ制作などを実際に手がけながらスキルを磨き、そのまま就職用の作品集として活用できます。事業所によっては、実際の企業案件を通した実習を提供しているところもあります。

取得を目指せる資格の例

事業所によっては、Webデザイン関連の資格取得を支援しているところがあります。取得が目指せる資格の例として以下が挙げられます。

資格名種別
ウェブデザイン技能検定国家資格
Webクリエイター能力認定試験民間資格
Photoshop®クリエイター能力認定試験民間資格
Illustrator®クリエイター能力認定試験民間資格
HTML5プロフェッショナル認定試験民間資格

資格取得の支援内容(受験費用の補助・学習サポートの有無など)は事業所によって異なります。見学時に確認しておくとよいでしょう。

ビジネスマナーと就職活動支援も並行して受けられる

Webデザインのスキル習得だけでなく、就職に必要なビジネスマナー、面接練習、履歴書・職務経歴書の作成サポートも就労移行支援事業所のサービスに含まれます。就職が決まった後は、職場への定着を支援する「職場定着支援」(就職後6ヶ月間)も利用できます。

就職活動から就職後のサポートまで一貫して受けられる点が、就労移行支援を活用する大きなメリットの一つです。

  • HTML・CSS・JavaScriptのコーディングとAdobe系ソフトが主な学習内容
  • 就職用ポートフォリオを訓練の中で制作できる事業所がある
  • 国家資格「ウェブデザイン技能検定」の取得支援を行う事業所もある
  • ビジネスマナー・就職活動サポート・職場定着支援まで一貫して受けられる

就労移行支援の利用料と費用の仕組み

「費用がかかるのではないか」という不安から、就労移行支援の利用を迷っている方もいるかもしれません。費用の仕組みを整理すると、多くの方が実質的に無料または低額で利用できる制度設計になっています。

利用料は世帯収入によって決まる

就労移行支援の利用料は、前年の世帯収入(18歳以上の場合は本人と配偶者の収入)によって月額の自己負担上限が決まります。下の表が現行の負担区分の目安です(詳細は最新の情報を市区町村窓口または厚生労働省の公式ページでご確認ください)。

区分世帯の収入状況の目安負担上限月額
生活保護生活保護受給世帯0円
低所得市町村民税非課税世帯0円
一般1収入が概ね670万円以下の世帯9,300円
一般2収入が概ね670万円を超える世帯37,200円

実際には、LITALICOワークスで「約7割以上」、ミラトレで「9割以上」、Kaienでも「約9割」が自己負担0円で利用しているとされています(各事業者の公開データより)。収入の状況によっては、負担が生じる場合もあります。自身が何区分に該当するかは、住所地の市区町村の障害福祉窓口で確認できます。

利用料以外にかかる費用

就労移行支援でWebデザインを学ぶためにパソコンで制作作業を行う支援利用者のイメージ

就労移行支援事業所の利用料とは別に、交通費・昼食代・資格の受験料などが発生する場合があります。交通費については、自治体によって助成を行っているところもあります(例:千葉県松戸市では月1万円を上限に公共交通機関の交通費を補助)。

事業所によっては交通費を全額支給しているところや、昼食を提供しているところもあります。見学時に確認しておくと、利用中の費用をより正確に見積もることができます。

また、就労移行支援の利用中は原則として工賃や給料は発生しません。生活費の確保については、障害年金・傷病手当金・生活保護など、それぞれの状況に応じた制度の活用が考えられます。詳しくは自治体の窓口や事業所のスタッフに相談してみてください。

費用について事前に確認しておきたいこと
①市区町村窓口で自分の負担区分(0円か有料か)を確認する
②交通費・昼食代の補助が事業所または自治体から受けられるか確認する
③利用中の生活費の確保(障害年金・傷病手当金等)について相談しておく
  • 世帯収入が市町村民税非課税であれば利用料は0円
  • 課税世帯でも上限月額は9,300円(一般1)または37,200円(一般2)
  • 交通費・昼食代は別途かかる場合があり、自治体や事業所によって補助あり
  • 利用中は原則として工賃・給料の支給なし

事業所を選ぶときに確認したいポイント

就労移行支援でWebデザインを学ぶ場合、事業所選びが就職の可否に大きく影響します。事業所によってカリキュラムの質・支援の手厚さ・就職実績に差があるため、複数の事業所を比較した上で体験利用や見学を経て判断するとよいでしょう。

カリキュラムの内容とスタッフの経験を確認する

Webデザインを本格的に習得するには、実務経験のある講師やスタッフから指導を受けられるかどうかが重要です。事業所によっては、現役またはフリーランスのWebデザイナーが講師を務めているところもあります。講師の経歴やカリキュラムの具体的な内容は、見学時に直接確認することをおすすめします。

また、カリキュラムが基礎に留まるか、ポートフォリオ制作や実際のWeb制作まで対応しているかも確認しておくとよいでしょう。Webデザイン未経験からでも段階的に学べる構成になっているかどうかも確認しておくと安心です。

在宅・オンライン対応の有無を確認する

体調が不安定で毎日通所することが難しい方や、将来的にリモートワークでの就労を目指す方にとって、在宅やオンラインでの訓練が可能かどうかは重要な判断材料になります。事業所によっては、eラーニング教材を使って自宅から訓練を受けられるところもあります。

在宅での訓練が可能な場合でも、その条件や日数制限は事業所によって異なります。「週に何日まで在宅可能か」「在宅時のサポート体制はどうなっているか」なども事前に確認しておくとよいでしょう。

見学・体験利用を活用して判断する

事業所の雰囲気や利用者の様子は、ホームページだけではわかりにくい部分があります。実際に見学や体験利用をすることで、スタッフの対応・施設の設備・利用者同士の関係性などを自分の目で確認できます。多くの事業所では無料で見学・体験を受け付けているため、気になる事業所が複数ある場合は積極的に訪問してみてください。

見学の際には、カリキュラムの内容・就職実績・在宅対応・資格取得支援の有無・交通費補助のほか、通所日数や1日のスケジュールなども確認しておくと比較しやすくなります。

見学・体験利用で確認しておくと良い項目例
・Webデザイン専用カリキュラムの内容と進め方
・Webデザイナーとして就職した実績(人数・就職先の業種)
・在宅・オンライン訓練の可否と日数上限
・資格取得支援(費用補助の有無を含む)
・交通費・昼食の補助内容
  • 実務経験のある講師からWebデザインを学べる事業所を選ぶ
  • 在宅・オンライン訓練の有無は体調管理や将来の働き方に関係する
  • 無料の見学・体験利用を複数事業所で活用して比較する
  • 就職実績と職場定着率は事業所の質を見る客観的な指標になる

就労移行支援でWebデザインを学んだ後の働き方

就労移行支援事業所でWebデザインのスキルを身につけた後は、どのような働き方が選択肢になるのかを整理しておきましょう。就職先の形態や雇用区分によって仕事の内容や働き方は異なります。

Web制作会社・事業会社(インハウス)への就職

Webデザインのスキルを活かす代表的な就職先として、Web制作会社や一般企業のWeb担当部門(インハウス)があります。障がい者雇用枠でWebデザイナーやコーダーとして採用されるケースがあるほか、一般採用枠での就職を目指すことも可能です。

会社によっては在宅勤務や時差出勤などの配慮に応じているところもあります。就職活動の際は、就労移行支援事業所のスタッフが面接への同行や職場との調整をサポートします。

在宅・リモートワークを活用した働き方

Webデザインはパソコン一台で作業が完結するため、在宅やリモートワークとの親和性が高い職種です。体調の波がある方や、通勤に負担を感じる方にとっても就労の選択肢が広がりやすい分野といえます。

就労移行支援事業所を通じて就職した場合、就職後6ヶ月間は職場定着支援を無料で受けることができます。在宅勤務での困りごとや職場とのコミュニケーションに関する相談も、この支援を通して継続的にサポートしてもらえます。

フリーランスという選択肢について

就労移行支援のWebデザイン訓練を経てフリーランスとして活動する方もいます。ただし、フリーランスは確定申告・案件管理・収入の安定といった点で、会社員とは異なるリスクや自己管理が求められます。

就労移行支援の目的は原則として「一般企業への就労移行」であるため、フリーランスを目指す場合は事業所のスタッフと事前にしっかり相談しておくことが大切です。

働き方の種類主なメリット注意点
Web制作会社・インハウス安定した雇用・社会保険通勤が必要な場合あり
在宅・リモート勤務通勤負担が少ないセルフマネジメント力が必要
フリーランス働き方の柔軟性が高い収入の不安定・自己管理が必要
  • Web制作会社・インハウスデザイナーのほか、在宅・リモートでの就職も選択肢になる
  • 就職後6ヶ月間は職場定着支援を無料で受けられる
  • フリーランスは就労移行支援の目的と異なる場合があるため、事前に事業所へ相談する

まとめ

就労移行支援でWebデザインを学ぶことは、費用の負担を大幅に抑えながら専門スキルを身につけられる選択肢の一つです。多くの方が実質的に無料または低額で利用でき、カリキュラムから就職活動・職場定着まで一貫した支援を受けられます。

まず、お住まいの地域でWebデザインに対応した就労移行支援事業所を探し、見学や体験利用を申し込んでみることが最初の一歩です。事業所のスタッフに利用料・カリキュラム内容・就職実績を直接確認することで、自分に合った事業所かどうかを判断できます。

Webデザインの道は未経験からでも着実に歩み始めることができます。一人で抱え込まず、就労移行支援という制度のサポートを活用しながら、自分に合った一歩を探してみてください。

当ブログの主な情報源