就労移行支援と就労継続支援を併用できる?原則と例外・切り替え手順を解説

日本人女性が併用制度を相談

就労移行支援と就労継続支援の両方を同時に使えるのか、迷っている方は少なくありません。名前が似ていて、どちらも障がいのある方の「働く」を支える制度だからこそ、「一緒に使えば効果が高まるのでは」と考えるのは自然なことです。

結論からお伝えすると、就労移行支援と就労継続支援A型・B型の同時併用は、原則として認められていません。厚生労働省の事務処理要領(令和4年版)では、日中活動サービスは通常1種類に絞って利用することが一般的と位置づけられています。ただし「明確に禁止」とも書かれておらず、市区町村が特に必要と認めた場合には複数の日中活動サービスを組み合わせることも可能とされています。

この記事では、3つのサービスの違いを表で整理したうえで、なぜ併用が難しいのか、例外的に認められるのはどんなケースか、そして切り替えや移行の手順まで順を追って説明します。サービス選びに迷っている方は、ぜひ最後まで読んでみてください。

就労移行支援・就労継続支援A型・B型の違いを整理する

3つのサービスはどれも障害者総合支援法に基づく「就労系障害福祉サービス」ですが、目的・対象・報酬の仕組みがそれぞれ異なります。まず全体像を把握しておくと、併用の可否もすっきり理解できます。

就労移行支援が目指すのは一般就労への移行

就労移行支援は、一般企業や公共機関での雇用を希望する方が、就職に必要な知識・スキル・体調管理の方法などを学ぶ場です。訓練の場であるため、原則として賃金は発生しません。

利用できるのは18歳以上65歳未満(利用開始時点)で、標準利用期間は2年間です。必要性が認められた場合は最大1年の延長申請ができます。就職活動のサポートや就職後の定着支援も含まれており、一般就労を目標とする方に向いています。

就労継続支援A型は雇用契約を結んで働く場

就労継続支援A型は、一般企業での就労が現時点で難しい方が、事業所と雇用契約を結んで働く場です。雇用契約があるため、原則として最低賃金以上の給与が支払われます。労働基準法も適用されます。

対象は、就労移行支援を経たが雇用に結びつかなかった方、特別支援学校を卒業後に雇用に結びつかなかった方、過去に一般企業で就労経験があり現在は雇用されていない方などです。利用期間に制限はありませんが、18歳以上65歳未満という年齢要件があります。

背景として、A型事業所は生産活動収入から経費を差し引いた額が利用者への賃金総額以上となるよう運営基準で定められており、賃金の安定性が一定程度担保されています。

就労継続支援B型は雇用契約なしで働く場

就労継続支援B型は、雇用契約を結ばずに就労や生産活動の機会を提供するサービスです。賃金ではなく「工賃」として報酬が支払われるため、最低賃金を下回るケースが多くなります。

対象者は、就労経験があり年齢・体力の面で一般企業での雇用が困難になった方、50歳以上の方、障害基礎年金1級受給者、または就労移行支援事業者によるアセスメントで就労面に課題があると評価された方などです。B型には年齢の上限がなく、65歳以上でも利用できます。

自分のペースで働けるのがB型の大きな特徴で、体調管理に不安がある方や、まずは短時間の作業から始めたい方に利用されることが多いです。

3つのサービスを一覧で比較する

項目 就労移行支援 就労継続支援A型 就労継続支援B型
主な目的 一般就労への移行訓練 雇用契約を結んで働く場の提供 雇用契約なしで働く場の提供
雇用契約 なし あり なし
収入 原則なし(賃金発生しない) 給与(最低賃金以上) 工賃(最低賃金以下の場合あり)
利用期間 原則2年(最大3年) 制限なし 制限なし
年齢 18歳以上65歳未満 18歳以上65歳未満 18歳以上(上限なし)
  • 3つのサービスはすべて障害者総合支援法に基づく就労系障害福祉サービスです。
  • 就労移行支援は訓練の場で、就労継続支援A・B型は実際に働く場です。
  • A型は雇用契約あり、B型は雇用契約なしが最大の違いです。
  • 利用期間が定められているのは就労移行支援のみです(原則2年)。
  • どのサービスが適切かは、体調・就労経験・一般就労への希望の有無などで変わります。

就労移行支援と就労継続支援の併用が原則できない理由

「2つのサービスを同時に使えれば、訓練もできて収入も得られて一石二鳥では」と感じる方もいます。しかし実際には、ほぼすべての市区町村で同時の利用は認められていません。その理由を制度の仕組みから整理します。

日中活動サービスの報酬は1日1事業所が基本

就労移行支援も就労継続支援A・B型も、障害福祉サービスの中で「日中活動サービス」に分類されます。日中活動サービスの報酬は1日単位で算定される仕組みのため、同じ日に2か所以上の事業所を利用することは、どの地域でも認められていません。

これは制度上の構造的な理由であり、特定の地域だけの話ではありません。たとえ別々の曜日に通う計画を立てたとしても、支給決定(市区町村による利用許可)の段階でほぼ認められないのが現状です。

事務処理要領が「原則1種類」を示している

厚生労働省の事務処理要領(令和4年版)には、日中活動サービスについて「通常、同一種類のサービスを継続して利用することが一般的」と記されています。一方で、「市町村が特に必要と認める場合には、複数の日中活動サービスを組み合わせて支給決定を行うことは可能」とも書かれています。

つまり、厚生労働省が「絶対に禁止」と断言しているわけではありません。ただし、就労移行支援と就労継続支援A・B型の組み合わせは「想定されない」とする行政説明資料もあり、実際に認められるケースはほとんどないのが実態です。

2つのサービスは目的が根本的に異なる

就労移行支援は「一般就労を目指す訓練の場」です。一方、就労継続支援は「現時点で一般就労が困難な方が働く場」です。対象者の要件がそもそも重なりにくく、両方の支給決定を同時に受けることは制度の趣旨に合わないとされています。

支援効果の観点からも、1つのサービスに集中することで目標達成が早まるという考え方が制度設計の背景にあります。どちらかを選ぶことが、結果として本人の支援効果を高める方向に働く場合が多いとされています。

【原則:就労移行支援と就労継続支援A・B型は同時併用不可】
理由1:日中活動サービスの報酬は1日1事業所のみ算定される
理由2:厚生労働省の事務処理要領(令和4年)が原則1種類の継続利用を示す
理由3:2つのサービスは対象者・目的が根本的に異なる
例外:市区町村が特に必要と認めた場合は複数の日中活動サービスの組み合わせが可能(ただし承認事例はごく少数)
  • 同一日の2事業所利用は制度上あらゆる地域で不可です。
  • 日を分けて通う計画でも、支給決定の段階でほぼ認められません。
  • 厚生労働省は「禁止」とは書いていませんが、想定外の組み合わせとされています。
  • 市区町村が特別に必要と判断した場合のみ、例外的な支給決定があり得ます。
  • 「一方を選んで集中する」ことが支援効果の面でも推奨されています。

例外的に組み合わせが認められる可能性のあるケース

就労移行支援と就労継続支援の併用図解

原則は「同時利用不可」ですが、制度上は完全に禁止されているわけではありません。特定の条件のもとでは、市区町村の判断によって複数の日中活動サービスが認められる場合があります。また、令和6年4月からは新たな利用パターンが法令上で整理されました。

生活介護・自立訓練とB型の組み合わせは認められやすい

すべての日中活動サービスの組み合わせが難しいわけではありません。「生活介護と就労継続支援B型」や「自立訓練と就労継続支援B型」の組み合わせは、市区町村によって支給決定される事例が報告されています。

これは厚生労働省の事業所説明会資料(令和3年3月)でも一定程度示されている組み合わせです。就労移行支援との組み合わせとは異なり、より認められる可能性があります。ただし、最終的な判断は各市区町村が行うため、必ず担当窓口に確認するとよいでしょう。

令和6年4月から「一般就労中の一時的利用」が法令上明確化された

令和4年の障害者総合支援法改正にともない、令和6年4月1日より、一般企業に雇用されている障がい者でも就労系障害福祉サービスを一時的に利用できることが法令上に位置づけられました。これは「一般就労中の一時的な利用」と呼ばれるもので、以下の3つのパターンがあります。

1つ目は「労働時間延長支援型」で、雇用後に労働時間を延ばすことを目指す場合です。2つ目は「復職支援型」で、休職からの復職を目指す場合です。3つ目は「就労移行支援短時間型」で、概ね週10時間未満の所定労働時間で一般就労へ移行した場合に引き続き訓練を受けるものです。いずれも事前に市区町村による支給決定が必要です。

例外を検討する場合は相談支援専門員に相談する

「自分のケースに例外が適用されるかもしれない」と感じた場合は、まず相談支援専門員(または担当の相談支援事業所)に相談するのが最初のステップです。相談支援専門員はサービス等利用計画を作成する専門職であり、市区町村との調整も担います。

自分で直接市区町村の障害福祉課に相談することも可能ですが、事業所やサービスの内容をよく知っている相談支援専門員を通したほうが、実情に合った提案が伝わりやすいとされています。例外的な支給決定がまったく不可能というわけではないため、あきらめる前に専門家に確認するとよいでしょう。

  • 「生活介護+就労継続支援B型」など、一定の組み合わせは認められやすいです。
  • 令和6年4月から「一般就労中の一時的利用」が法令上整理されました(3パターン)。
  • どのパターンも、市区町村による事前の支給決定が必要です。
  • 例外を検討する場合は、相談支援専門員に相談するのが確実です。
  • 市区町村ごとに判断が異なるため、最終確認は必ず担当窓口で行いましょう。

就労移行支援と就労継続支援を切り替えるときの流れ

「同時利用はできない」とわかったとき、次に気になるのが「切り替え」の手順です。就労継続支援からの移行も、就労移行支援からの移行も、どちらも手続きのうえで完全に可能です。

就労継続支援B型から就労移行支援へ移行するパターン

B型事業所で働く中で体調が安定し、「一般就労を目指したい」と思い始めた場合は、就労移行支援への切り替えを検討できます。この場合、現在の受給者証の変更手続きが必要です。

手続きはお住まいの市区町村の障害福祉課(または障がい福祉窓口)で行います。現在利用中の事業所に相談しながら、相談支援専門員と連携して進めると手続きが円滑です。切り替えに際しては、B型での工賃収入がなくなる点を念頭に置いて生活設計を整えておくとよいでしょう。

就労移行支援から就労継続支援へ切り替えるパターン

就労移行支援を利用したものの、期間内に一般就労が難しいと判断した場合や、体調面でより安定した環境が必要だと感じた場合は、就労継続支援への切り替えという選択肢があります。

A型への切り替えを希望する場合は、雇用契約があるため採用選考が行われることもあります。B型への切り替えは比較的手続きが進めやすく、就労移行支援事業者によるアセスメント結果が移行の判断材料になる場合もあります。切り替えを検討する場合は、担当スタッフや相談支援専門員と早めに話し合うとよいでしょう。

A型から就労移行支援への切り替えも選択肢のひとつ

就労継続支援A型で働きながら「やはり一般就労を目指したい」と感じた場合も、就労移行支援への切り替えは可能です。ただし、A型は雇用契約のある職場であるため、切り替えに際してはA型事業所との雇用関係を終了させる手続きが発生します。

就労移行支援の利用開始後は原則として賃金が発生しなくなります。生活費の見通しを立てたうえで動くことが、焦りを防ぐうえで大切です。障害年金や生活保護など他の収入確保手段についても、あわせて福祉窓口に相談しておくと安心です。

【切り替えの基本ステップ】
1. 現在の事業所スタッフまたは相談支援専門員に希望を相談する
2. 市区町村の障害福祉課で受給者証の変更申請を行う
3. 新しいサービスの支給決定を受け、新事業所との契約手続きを進める
4. 切り替え後の収入変化(特に就労移行支援への移行時)を事前に確認しておく
  • B型から就労移行支援への切り替えは、受給者証の変更手続きで対応できます。
  • 就労移行支援からA型またはB型への移行も制度上可能です。
  • A型から就労移行支援に移る場合は、雇用関係の終了手続きが必要です。
  • 切り替え時には収入が変わる場合があるため、生活設計の確認が欠かせません。
  • 相談支援専門員がいると、手続き全体の調整がスムーズになります。

自分に合ったサービスを選ぶための考え方

就労移行支援・就労継続支援A型・B型のどれが自分に向いているかは、「一般就労を目指しているか」「体調・体力がどの程度安定しているか」「収入が必要か」という3点を軸に考えると整理しやすくなります。

一般就労を目指しているなら就労移行支援が基本の選択

「いつか一般企業で働きたい」という意志がある方にとって、就労移行支援は最もダイレクトなサービスです。就職活動のサポート、履歴書・面接練習、職場実習、就職後の定着支援まで一連の流れを支援してくれます。

ただし、就労移行支援には2年という期間制限があります。体調が大きく不安定な状態で飛び込むよりも、まず就労継続支援B型などで生活リズムを整えてから就労移行支援に移行するという順序も有効です。焦らず段階を踏むことが、長期的に見て定着につながりやすいとされています。

雇用契約を結んで安定した収入を得たい場合はA型

「就職活動のプレッシャーより、まず安定して働く経験を積みたい」という方には、就労継続支援A型が選択肢になります。A型は雇用契約があるため給与が保障され、社会保険にも加入できます。

注意点として、A型を利用するには採用選考を経る必要がある事業所もあります。また、就労移行支援と違い就職活動の直接的なサポートはない事業所も多いため、将来的に一般就労を目指すなら、早い段階から相談支援専門員と方向性を確認しておくとよいでしょう。

体調管理を優先したい場合はB型から始める方法もある

「いきなりフルタイムは難しい」「まず週数回、短時間から働きたい」という方には、就労継続支援B型が入り口として向いています。B型は年齢上限がなく、自分のペースで作業に取り組める環境が整っています。

B型から始めて、体調が安定したらA型や就労移行支援への移行を目指すというルートは、多くの方が実際に辿っている道筋です。最初から「正解のルート」を決める必要はなく、今の自分の状態に合ったサービスから始めることが、長続きする第一歩になります。

こんな状況の方に 向いているサービス
一般就労を目指していて、体調もある程度安定している 就労移行支援
一般就労は難しいが、雇用契約を結んで安定して働きたい 就労継続支援A型
まずは短時間・自分のペースで働くことから始めたい 就労継続支援B型
B型で体調が安定し、一般就労を目指したい B型から就労移行支援への切り替え
一般就労中だが支援が一時的に必要(令和6年4月以降) 就労系サービスの一時的利用(要支給決定)
  • 「一般就労を目指すか否か」がサービス選びの最初の分岐点です。
  • 体調が不安定な状態で就労移行支援を開始すると2年を十分に活用できない場合があります。
  • B型から就労移行支援への移行は、多くの方が選んでいる現実的なルートです。
  • どのサービスが適切かは、相談支援専門員や事業所スタッフと一緒に判断するのが確実です。
  • 令和6年4月以降は、一般就労中の一時的利用も条件つきで利用できます。

まとめ

就労移行支援と就労継続支援A型・B型の同時併用は、日中活動サービスの報酬構造と厚生労働省の事務処理要領(令和4年版)の整理から、原則として認められていません。ただし法令上の完全禁止ではなく、市区町村が特に必要と認めた場合に限り例外が生じる余地もあります。また令和6年4月からは、一般就労中の一時的な利用が法令上で明確に位置づけられました。

まず取り組むとよい行動は、「今の自分には就労移行支援・A型・B型のどれが合っているか」を相談支援専門員または現在利用中の事業所スタッフに相談することです。切り替えの手続きも担当窓口に確認できるため、「自分には無理かも」と判断する前に一度相談してみてください。

働きたいという気持ちに合ったサービスを選ぶことが、長く安定して働き続けるための土台になります。どのルートが正解かは人によって違いますし、状況が変われば切り替えることもできます。一歩ずつ進む中で、自分に合った道を見つけていきましょう。

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