就労移行支援を利用しながら就職活動を進める段階になると、履歴書の書き方に悩む場面が出てきます。事業所での通所期間は「職歴」なのか、障がいのことはどこにどう書けばよいのか、判断に迷うポイントが複数あります。
履歴書は採用担当者が最初に目にする書類であり、正確な情報を誠実に伝えることが基本です。就労移行支援の利用経験がある場合には、通常の書き方とは少し異なる点があるため、あらかじめ整理しておくとよいでしょう。
この記事では、訓練歴の記載方法・基本情報欄の書き方・障がいや配慮事項の伝え方・志望動機のポイントまで、就労移行支援を経て就職活動をする方に向けて整理します。
就労移行支援の通所は「訓練歴」として書く
就労移行支援の通所期間をどう記載するかは、多くの方が悩む部分です。職歴欄に書いてよいのか、空白のままにすべきか、判断の基準を整理しておきましょう。
職歴ではなく訓練歴として分けて書く
就労移行支援事業所への通所は、事業所との間に雇用契約がありません。そのため、職歴として記載すると経歴を誤解される可能性があります。
記載する場合は、学歴・職歴欄の職歴の最後に一行空けて「訓練歴」という見出しを立て、その下に事業所名と通所期間、主な訓練内容を記入します。職歴がない場合は、学歴の最後に一行空けてから同様に記載します。
事業所名と通所の開始・終了(または現在通所中)の年月、身につけたスキルの概要を一行程度でまとめます。詳しい実績は職務経歴書で補足するとよいでしょう。
書くか書かないかはオープン・クローズで判断する
訓練歴を記載するかどうかは、障がいを開示するオープン就労か、開示しないクローズ就労かによって判断が変わります。
障がいを開示するオープン就労では、訓練歴を記載することがプラスに働くことが多くあります。継続的に通所できていた実績は勤怠の安定を示す材料になり、事業所で身につけたスキルや自己対処の経験をアピールできます。
一方、クローズ就労では訓練歴を記載すると障がいが伝わる可能性があります。応募の方針に合わせて、利用中の事業所の支援員にも相談しながら判断するとよいでしょう。
枠が足りない場合は本人希望欄を活用する
職歴が多く、訓練歴を学歴・職歴欄に書ききれない場合は、本人希望記入欄を活用できます。「〇〇年〇月より就労移行支援事業所にて訓練を受け、基本的なPCスキルを習得しました」のように概要を記載します。
ただし、採用担当者は最初に学歴・職歴欄を確認します。本人希望欄への記載は、あくまでスペースがない場合の補足として位置づけましょう。
通所中の記載は現在の状況を正確に書く
現在も通所中の場合は、記載例として「〇〇年〇月 就労移行支援事業所〇〇 通所中」のように記入します。終了している場合は「〇〇年〇月 利用終了」と書きます。
「現在に至る」は就労中の場合に使う表現であり、事業所通所中には使いません。退職・離職の表現も職歴欄にのみ使う言葉のため、訓練歴の欄では使わないように気をつけましょう。
オープン就労では積極的に書くとプラスになりやすい
クローズ就労では記載すると障がいが伝わる可能性があるため、支援員に相談して判断する
「現在に至る」「退職」などの表現は訓練歴欄では使わない
- 就労移行支援の通所は「職歴」ではなく「訓練歴」として分けて記載する
- 記載の要否はオープン・クローズの就労方針によって異なる
- 枠が足りない場合は本人希望記入欄に概要を記載できる
- 通所中・終了それぞれに合った表記を使い分ける
基本情報欄・学歴・職歴の書き方ルール
履歴書の基本的な書き方は、障がいの有無にかかわらず同じルールが適用されます。細かいルールを確認しておくことで、採用担当者に誠実な印象を伝えられます。
日付・年号・氏名の基本ルール
日付は、郵送する場合は投函日、持参する場合は提出当日の日付を記入します。作成した日付ではない点に注意が必要です。
和暦・西暦はどちらでも問題ありませんが、1枚の履歴書内で統一することが求められます。学歴の入学・卒業年と職歴の入退社年で表記が混在しないように確認しましょう。
氏名は戸籍に記載されているとおりに書き、略字を使いません。フリガナは欄の表記に合わせて、「フリガナ」はカタカナ、「ふりがな」はひらがなで記入します。
住所・連絡先の書き方
住所は都道府県から記入し、番地は「〇丁目〇番〇号」と略さずに書きます。市区町村だけを書くことや「〇-〇-〇」のような略記は避けましょう。
電話番号は市外局番から記入します。携帯番号を記入する場合、欄の種別に応じて「(携帯)」と明記するとよいでしょう。メールアドレスは手書きの場合、見間違えやすい英字・数字に注意して丁寧に記入します。
学歴欄・職歴欄の記入上の注意
学歴は高校入学から記入するのが一般的です。学校名は正式名称で書き、「県立」「市立」の区別も省略しません。大学は学部名・専攻まで記入します。
職歴欄は会社名と配属先を記入します。会社名は「(株)」などの略記を使わず、株式会社・有限会社と正式に書きます。現在在職中の場合は「現在に至る」、退職済みの場合は「一身上の都合により退職」と記入し、最後に「以上」で締めます。
修正液の使用と書き間違いの対処
修正液・修正テープは使用不可です。手書きで書き間違えた場合は、新しい用紙に最初から書き直します。鉛筆・消えるボールペンも使用不可で、黒のボールペンが基本です。
使用するペンは途中で変えないようにすると、文字の太さや濃さが統一されて読みやすい印象になります。空欄が残る場合は「特になし」などと記入し、空白箇所をなくします。
| 項目 | よくあるNG例 | 正しい書き方 |
|---|---|---|
| 日付 | 作成した日付を書く | 郵送なら投函日、持参なら提出日 |
| 年号 | 和暦・西暦を混在させる | 1枚の中で和暦か西暦に統一 |
| 会社名 | (株)と略す | 「株式会社〇〇」と正式名称で書く |
| 書き間違い | 修正液で消す | 新しい用紙に書き直す |
| 空欄 | 何も書かずに空白にする | 「特になし」などと記入する |
- 日付は提出日を記入し、年号は1枚の中で統一する
- 学校名・会社名は正式名称で書く
- 書き間違いは修正液を使わず新しい用紙に書き直す
- 空欄には「特になし」と記入しておく
障がいや配慮事項はどこにどう書くか
障がいのある方が障がい者雇用枠に応募する場合、障がいの状況や必要な配慮を採用担当者に伝えることが求められます。どの欄に何を書くかを事前に整理しておくとよいでしょう。
一般的な履歴書には障がい記入欄がない場合がある
市販の一般的な履歴書には、障がいを記入する欄がないものがほとんどです。その場合は、障がい者雇用向けの専用様式を使うか、別紙(ナビゲーションブック・自己紹介シートなど)を作成して同封します。
別紙の記載内容には、障害者手帳の種類と等級・取得年月日、得意な業務と苦手な業務、企業や上司・同僚に求める合理的配慮の内容などが含まれます。就労移行支援の支援員と一緒に作成すると、自己理解を深める機会にもなります。
配慮事項は「できること」と一緒に伝える
配慮事項を書く際は、「苦手なこと(配慮してほしいこと)」だけでなく、「そのためにどう対処できるか」をセットで記載することが大切です。
たとえば「複数の指示が一度に来ると整理が難しい」という場合は、「一つずつ指示をいただくか、メモをいただけると正確に作業できます」という形にすると伝わりやすくなります。配慮を求めるだけでなく、自分なりの対処法を示すことで、採用担当者に具体的な就労イメージを持ってもらいやすくなります。
二次障がいや服薬情報はどこまで書くか
服薬の有無や通院の状況は、就労への影響がある場合に記載を検討します。本人希望記入欄に「月〇回(〇曜日)定期通院があります」のように書くことで、事前に会社側が対応を考えやすくなります。
どこまで開示するかは障がいの種類や応募先の特性によって異なります。書く内容の整理に迷う場合は、利用中の就労移行支援事業所の支援員や、地域の就労支援機関(ハローワーク障害者専門窓口など)に相談しながら決めるとよいでしょう。
ナビゲーションブックを活用する方法

障がいの特性や必要な配慮をまとめた「ナビゲーションブック(私の障がいについて)」という別紙を用意することで、履歴書本体に細かく書かなくても情報を伝えられます。
ナビゲーションブックには、自分の障がい特性・得意なこと・苦手なこと・配慮してほしい内容・通院状況などをまとめます。就労移行支援事業所によっては、作成をサポートするプログラムを設けている場合があります。
配慮事項は「苦手なこと」と「対処法」をセットで書く
何を書くかに迷う場合は、就労移行支援事業所の支援員や就労支援機関に相談する
- 一般的な履歴書に障がい記入欄がない場合は別紙を用意する
- 配慮事項は「苦手なこと+対処法」の形で伝えるとよい
- ナビゲーションブックを活用すると履歴書本体をスッキリまとめられる
- 開示内容に迷う場合は支援員や専門窓口に相談する
志望動機・自己PRの書き方
志望動機と自己PRは、採用担当者があなたの意欲と人柄を読み取る欄です。就労移行支援での経験をどう活かして書くかが、印象を左右するポイントになります。
志望動機は応募先に合わせて書く
志望動機は、参考書や例文をそのまま流用せず、自分の言葉で書くことが基本です。なぜその企業・職種に応募したのかという理由と、事業所で身につけたスキルや経験がどう活かせるかを結びつけて記載します。
たとえば、事務系の仕事に応募する場合は「就労移行支援事業所で表計算ソフトの訓練を行い、データ入力や書類作成に取り組んできました。このスキルを貴社の事務作業で活かしたいと考え、志望しました」のような形で、具体的な経験を示すとよいでしょう。
自己PRは強みと仕事との接点を明確にする
自己PRは「自分がどんな人物で、どんな価値を提供できるか」を伝える欄です。強みを示すだけでなく、過去の経験からその強みを裏づけるエピソードを加えると説得力が増します。
就労移行支援での取り組みをPRに使う場合は、事業所でどのような訓練をして、どんな力がついたかを具体的に書きます。「コツコツと課題に取り組む力が身につきました」よりも「毎日の作業訓練で入力速度が上がり、ミスなく業務を進められるようになりました」のように、変化や成果を言葉にするとよいでしょう。
趣味・特技欄も自分らしさを伝えるチャンス
趣味・特技の欄は、採用担当者があなたの人となりを知るきっかけになります。「読書」だけで終わらせるより、「週末に図書館でビジネス書を読み、翌週の訓練に活かすようにしています」のように一言添えると、生活習慣や意欲も伝わります。
仕事に直接関係しない趣味でも、継続性・集中力・コミュニケーション力といった仕事上の強みと結びつけて書けると効果的です。
就労移行支援での経験を自己PRに使う際の注意点
就労移行支援での経験は、訓練の内容を正確に書くことが大切です。「訓練をしていた」という事実を強調しすぎると受け身な印象になるため、そこで何を得て、どう仕事に活かせるかを前向きに表現しましょう。
また、事業所で支援員からフィードバックを受けた内容を参考にしながら書くと、自分では気づいていない強みを整理できることがあります。利用中であれば、添削サポートを積極的に活用するとよいでしょう。
ミニQ&A
Q:就労移行支援で身につけたことが少なく、自己PRに書くことがありません。
A:訓練の内容だけでなく、毎日通所を続けたこと自体も「継続力・勤怠の安定」としてアピールできます。通所中に得たフィードバックも、自己PR作成のヒントになります。
Q:複数の会社に応募するとき、志望動機を使い回してもよいですか。
A:企業ごとに書き直すのが基本です。応募先の業種・職種・企業の特徴を確認し、自分のスキルや経験との接点を毎回整理するとよいでしょう。
- 志望動機は事業所での経験と応募先での仕事を結びつけて書く
- 自己PRは強みと具体的なエピソードを組み合わせる
- 趣味・特技も仕事上の強みと関連づけると印象が伝わりやすい
- 利用中であれば支援員の添削サポートを積極的に活用する
履歴書を作成する前後に確認しておくこと
履歴書を提出する前には、記入内容の確認だけでなく、提出方法や送付書類についても整理しておく必要があります。準備の段階で抜けが出やすい点をまとめます。
提出前に見直す5つのポイント
提出前には以下の5点を確認しましょう。①誤字・脱字がないか、②年号表記が統一されているか、③空欄がないか(ある場合は「特になし」を記入しているか)、④会社名・学校名が正式名称になっているか、⑤志望動機・自己PRが応募先の内容に合っているかです。
手書きの場合は提出前にコピーを取っておくと、面接の際に何を書いたか確認できます。パソコン入力の場合はデータを保存し、応募先ごとに修正した内容を管理しやすくしておくとよいでしょう。
封筒への入れ方と郵送マナー
封筒への封入前に、再度ページ順・内容を確認してから入れます。折り曲げを避けるために、A4サイズの書類はクリアファイルに入れてから封筒に入れるのが一般的です。
郵送する場合は、送付状(添え状)を同封するとよいでしょう。送付状には氏名・応募職種・同封書類の一覧を記載します。送付状の書き方についても、就労移行支援事業所で確認できる場合があります。
就労移行支援事業所でのサポートを活用する
多くの就労移行支援事業所では、履歴書の作成・添削を就活支援の一環として行っています。作成に取り組む前に、事業所のカリキュラムで提供されている書類作成サポートを確認しておくとよいでしょう。
事業所によっては、週に複数回の個別添削に対応しているところや、志望動機・自己PR文の作り方をプログラムとして提供しているところもあります。自分一人で完成させようとせず、支援員のフィードバックを受けながら仕上げることで、採用担当者に伝わりやすい書類に近づけられます。
ハローワークや就労支援機関も活用できる
就労移行支援事業所以外にも、ハローワーク(公共職業安定所)の障害者専門窓口や、障害者就業・生活支援センターでも書類作成の相談に対応しています。事業所の利用と並行して活用することで、よりきめ細かなサポートを受けられる場合があります。
これらの機関は無料で利用でき、履歴書の確認だけでなく求人情報の紹介や面接対策まで相談できます。最寄りの窓口は厚生労働省のウェブサイト(障害者雇用のページ)または各自治体の障害福祉窓口で確認できます。
- 提出前に5つのポイント(誤字・年号・空欄・正式名称・志望動機)を確認する
- 手書きの場合はコピーを取り、面接の準備に活用する
- 就労移行支援事業所の添削サポートを積極的に活用する
- ハローワーク障害者専門窓口や障害者就業・生活支援センターでも相談できる
まとめ
就労移行支援での通所経験は「訓練歴」として職歴と分けて記載し、オープン就労では積極的にアピール材料として活用できます。
まず取り組むとよいのは、訓練歴の書き方を事業所の支援員に相談しながら整理することです。どの形式で書くか・障がいの開示をどこまで行うかを一つ一つ決めていくと、全体の記載内容が整ってきます。
履歴書は一度に完成させなくてよい書類です。添削を重ねながら自分の言葉で仕上げていきましょう。
本記事の内容は、厚生労働省・自治体などの公的機関の公開資料をもとに整理したものです。制度・利用条件・支給額などは改正・変更される場合があります。最終的な判断や申請手続きの前には、必ずお住まいの自治体窓口や各事業所の最新情報をご確認ください。


