就労継続支援B型は、障害のある方が自分のペースで働きながら工賃を受け取れる福祉サービスです。原則として18歳以上が対象ですが、15歳以上の障害児でも一定の条件を満たせば利用できることが、障害者総合支援法の仕組みの中に定められています。
「中学を卒業したばかりでも使えるの?」「高校生は対象外?」と疑問を抱く方は少なくありません。制度上の年齢の扱いは複雑で、在学中かどうか、学校の種別、家庭の状況によって判断が変わります。まず制度の枠組みをしっかり押さえておくと、手続きの全体像が見えやすくなります。
この記事では、就労継続支援B型を15歳から利用するための条件、必要な手続きの流れ、高校生・特別支援学校在学中のケース、利用料金の仕組みまでを順番に整理しています。個別の判断は最終的に市区町村が行うため、具体的な状況については必ずお住まいの市区町村窓口にご相談ください。
就労継続支援B型の年齢の原則と15歳という特例
就労継続支援B型は障害者総合支援法に基づく福祉サービスであり、対象は「障害者」として定義されています。障害者総合支援法では障害者を「18歳以上」と定めているため、利用の下限は原則として18歳となっています。ただし、同法には15歳以上の障害児について障害者とみなす特例規定があり、この特例によって18歳未満でも一部の障害福祉サービスを利用できる道が開かれています。
18歳が原則である理由
就労継続支援B型は、通常の事業所での雇用が困難な方を対象に、雇用契約を結ばずに生産活動の機会を提供するサービスです。障害者総合支援法上、障害福祉サービスの対象は原則として18歳以上の障害者であり、18歳未満の子どもは基本的に児童福祉法のサービス体系(放課後等デイサービスなど)で支援を受ける枠組みになっています。
この区分は義務教育制度とも連動しています。中学校を卒業するまでの15歳未満は就学義務の対象であるため、就労系サービスの利用は想定されていません。高等学校や特別支援学校の在学中は学業が本来の役割とされているため、日中活動として就労継続支援B型を利用することは基本的に難しいとされています。
ただし、学校を離れた15歳以上の場合は別の扱いになります。就学義務が終了した上で、在学中でもない状況であれば、特例の適用が検討されます。
15歳から使える特例とは何か
厚生労働省の「障害者就労支援マニュアル」では、15歳以上の障害児について次のように定められています。「児童相談所長が障害者のサービスを受けることが適当と認め、その旨を市町村長に通知した場合は、この通知に係る障害児を障害者とみなして訓練等給付費等の対象とする」という規定です。
つまり、15歳以上の障害児は、児童相談所長の意見書(通知)を根拠として、障害者向けの訓練等給付(就労継続支援B型を含む)を受けられる「障害者」として扱われます。これは法律上の例外規定であり、自動的に適用されるわけではありません。意見書の発出には、支援の必要性を示す根拠が求められます。
実際のところ、全国のB型事業所を利用している18歳未満の利用者数は非常に少なく、厚生労働省の統計では全体の0.06%程度にとどまっています。制度として可能ではあるものの、適用されるケースはかなり限られています。
どのような状況で15歳からの利用が検討されるか
特例が実際に認められやすいのは、学校に在籍していない15歳以上の障害児のケースです。中学卒業後に高校へ進学せず、また一般就労も困難な状況にある場合などが典型的な例として挙げられます。児童養護施設に入所していた事例のように、教育機関に在籍していない状況がひとつの判断要素になります。
一方で、発達障害や精神障害のある場合は、精神保健福祉センターが意見を出すケースもあります。いずれにしても、意見書の発出が必要であるため、まずは市区町村の障害福祉窓口か、関わっている相談支援専門員に現状を伝えることが出発点になります。
・原則18歳以上が対象。上限年齢はなし(65歳以上でも利用可)
・15歳以上は、児童相談所長の意見書があれば利用できる
・15歳未満(中学生以下)は対象外
・在学中かどうかが判断の重要な要素になる
- 就労継続支援B型の下限年齢は「15歳以上」で、上限は設けられていない
- 15歳以上でも、原則は18歳以上。特例適用には児童相談所長の意見書が必要
- 就学義務中(15歳未満)は対象外
- 実際に18歳未満で利用しているケースは全国で非常に少ない(全体の約0.06%)
高校生・特別支援学校在学中の場合はどうなるか
15歳以上であっても、在学中かどうかによって状況が大きく変わります。特に「高校生なら使えるのか」「特別支援学校の生徒は卒業前から手続きできるのか」という点は、混同されやすい論点です。ここでは学校種別ごとに整理します。
全日制高校の在学中は利用が難しい理由
全日制高校に在学中の場合、就労継続支援B型の利用申請をしても市区町村に却下されるケースがほとんどです。B型事業所は日中に活動が行われるため、日中に授業がある全日制高校との両立は現実的でないとみなされます。
また制度上、在学中の高校生の利用は「想定されていない」とされています。一般的には学校在学中の子どもは学業が本来の活動であり、就労継続支援B型の目的である「就労機会の提供」とは重複しないと判断されるためです。市区町村の裁量によって最終判断が下されますが、全日制在学中の利用は極めて難しいと考えておく方がよいでしょう。
定時制・通信制高校の場合は可能性がある
夜間帯の授業が中心の定時制高校に通っている場合、日中の活動が可能と判断され、利用申請が認められるケースがあります。在学中で利用が許可された事例のうち、定時制高校のケースが多いとされています。
通信制高校の場合も、登校頻度が低く日中に時間を取りやすい状況であることから、一部の市区町村で利用を認めたケースがあります。ただし、通信制の場合は履修形態によって判断が変わることもあるため、お住まいの市区町村窓口での確認が欠かせません。いずれも「可能性がある」という表現にとどまり、必ず利用できるとは言えない点に注意が必要です。
特別支援学校の在学中と卒業後の違い
特別支援学校の在学中は、進路選択のための実習としてB型事業所を短期間(1〜2週間程度)利用することはありますが、これは在学中の「通所利用」とは異なります。在学中の本格的な利用は難しいとされており、卒業後の利用を想定した制度設計になっています。
特別支援学校を卒業してすぐにB型事業所に通い始めることを「直B(ダイレクトB)」と呼びます。この場合は卒業後に通常の手続きを経ることになりますが、在学中から就労アセスメントを受けておくことができます。文部科学省の「学校基本統計」によると、特別支援学校の卒業生のうち約6割が社会福祉施設等を利用しており、B型事業所はその主な選択肢のひとつです。
・全日制高校:原則として利用が難しい
・定時制高校:日中活動が可能なため、認められるケースあり
・通信制高校:履修形態によっては可能性あり
・特別支援学校在学中:卒業後の利用が前提。在学中の本格的な通所利用は難しい
- 全日制高校の在学中は利用が想定されておらず、申請が通らないケースが多い
- 定時制・通信制は市区町村の判断により認められることがある
- 特別支援学校の卒業後は通常通り利用でき、卒業前から就労アセスメントを受けることが可能
- 最終的な判断は市区町村が行う。必ず窓口で確認を
15歳からB型事業所を利用するための手続きの流れ
15歳以上でB型事業所の利用を希望する場合、基本的な手続きの流れは18歳以上の場合と大きく変わりません。ただし、18歳未満であることから児童相談所長の意見書が必要になるという点が追加されます。手続きの全体像を把握しておくと、窓口への相談がスムーズになります。
最初のステップ:市区町村窓口への相談
まず行うべきことは、お住まいの市区町村役場の障害福祉窓口(または障害児福祉窓口)に相談することです。「就労継続支援B型を利用したい」「利用希望者は18歳未満」という点をあわせて伝えると、その後の手続きを案内してもらえます。
この段階で事業所探しや見学を並行して進めておくことも可能です。事業所ごとに作業内容や雰囲気、工賃水準が異なるため、複数の事業所を見学・体験してから選ぶとよいでしょう。WAM NET(福祉医療機構)の障害福祉サービス事業所検索を使うと、地域の事業所一覧を調べられます。
就労アセスメントの受け方
就職歴がない場合、B型事業所の利用には就労アセスメントが必要です。就労アセスメントとは、就労移行支援事業所等が面談や作業観察を通じて、利用希望者の作業能力・就労意欲・集中力などを把握するために行うものです。標準的な実施期間は約1か月とされていますが、地域の状況や家族の状況によって短縮されることもあります。
厚生労働省の資料では、50歳以上の方や障害基礎年金1級受給者はアセスメント不要とされていますが、15歳のケースでは該当しないため、アセスメントが原則必要です。なお、2025年10月からは「就労選択支援」という新しいサービスが導入され、就労に関するアセスメント体制が整備されつつあります(最新の制度動向は厚生労働省のウェブサイトでご確認ください)。
受給者証の申請から利用開始まで
就労アセスメントの結果をもとに、相談支援専門員がサービス等利用計画案を作成します。この計画案は市区町村に提出され、B型事業所の利用に係る支給決定(利用許可)が下ります。相談支援専門員への依頼は原則無料で、担当者の紹介は市区町村窓口で案内してもらえます。自分や家族で作成するセルフプランも認められています。
支給決定が下りると、障害福祉サービス受給者証が交付されます。交付までの期間は市区町村によって異なりますが、おおよそ1週間〜2か月程度が目安です。受給者証を受け取ったら希望の事業所と利用契約を結び、利用開始となります。
| 手順 | 内容 | 備考 |
|---|---|---|
| 1 | 市区町村窓口に相談 | 18歳未満である旨を伝える |
| 2 | 就労アセスメント | 就労移行支援事業所等で実施(約1か月) |
| 3 | サービス等利用計画案の作成 | 相談支援専門員に依頼(無料)またはセルフプラン |
| 4 | 支給決定・受給者証の交付 | 交付まで1週間〜2か月程度 |
| 5 | 事業所と契約・利用開始 | 見学・体験は事前から可能 |
- まず市区町村の障害福祉窓口に相談するのが最初のステップ
- 職歴がない場合は就労アセスメントが必要(約1か月)
- サービス等利用計画案の作成は相談支援専門員に無料で依頼できる
- 受給者証交付後に事業所との契約・利用開始となる
18歳未満の利用料金と障害児の世帯計算
就労継続支援B型の利用料金は、障害福祉サービス全体の仕組みとして所得に応じた上限月額が定められています。18歳未満の場合は「18歳以上の障害者」とは世帯の範囲の考え方が異なるため、この点を把握しておくと費用の見通しが立てやすくなります。
利用者負担の基本的な仕組み
厚生労働省の「障害者の利用者負担」によると、障害福祉サービスの自己負担は原則1割で、所得に応じて負担上限月額が定められています。月に何日利用しても、この上限額を超えることはありません。区分は「生活保護(0円)」「低所得(市町村民税非課税:0円)」「一般1(所得割16万円未満:9,300円)」「一般2(それ以外:37,200円)」の4段階です。
なお、厚生労働省のデータを見ると、就労継続支援B型の1日あたりの利用料は500〜700円程度が目安です。月20日程度利用した場合でも上限額の枠内に収まることが多く、実際には多くの利用者が上限に達する前に月の利用が終わる形になります。
18歳未満の場合の世帯の考え方
18歳以上の障害者の場合、世帯の範囲は「本人とその配偶者」で計算されます。しかし18歳未満(障害児)の場合は、「保護者の属する住民基本台帳での世帯」が基準になります。つまり、保護者を含む家族全体の市区町村民税の課税状況をもとに負担上限額が判定されます。
保護者の世帯が市区町村民税非課税であれば、負担上限月額は0円です。世帯収入の目安として、3人世帯で障害者基礎年金1級受給の場合は収入が概ね300万円以下なら低所得区分になるとされています(厚生労働省「障害者の利用者負担」参照)。世帯構成や控除の状況によって異なるため、詳細はお住まいの市区町村窓口にご確認ください。
放課後等デイサービスとの費用の関係
18歳未満の場合、障害者総合支援法上は「障害者とみなす」扱いになっても、児童福祉法上は引き続き「障害児」として扱われます。厚生労働省の「障害者就労支援マニュアル」では、就労移行支援について「障害者総合支援法において障害者とみなした場合であっても、児童福祉法に基づく放課後等デイサービスを利用することは可能」と記載されています。B型事業所についても同様に考えられています。
ただし、同一日に放課後等デイサービスとB型事業所の両方を利用することはできません。利用日の振り分けに工夫が必要になります。放課後等デイサービスとの併用の可否については、B型に関して明確に規定されているわけではないため、市区町村に確認するのが確実です。
・負担上限月額は保護者の属する世帯の市区町村民税で判定される
・世帯が市区町村民税非課税なら自己負担0円
・放課後等デイサービスとの同一日利用は不可
・詳細は市区町村窓口で確認を
- 18歳未満の負担上限月額は、保護者を含む世帯の市区町村民税で判定される
- 生活保護受給世帯・低所得世帯(市区町村民税非課税)は負担0円
- 放課後等デイサービスとの併用は可能だが、同一日の利用は不可
- 個別の金額は市区町村窓口への相談が最も確実
B型事業所で行う活動の内容と工賃の仕組み
就労継続支援B型で受け取る賃金は「工賃」と呼ばれ、雇用契約に基づく給与とは性質が異なります。利用を検討する際には、実際にどのような活動をしてどの程度の工賃を受け取れるのかを把握しておくと、事業所選びの際の参考になります。
B型事業所で行う主な作業内容
作業内容は事業所ごとに異なりますが、一般的なものとしては、封入・封筒折りなどの軽作業、菓子や食品の製造・販売、農作業、パソコンを使ったデータ入力、清掃作業、手工芸品の制作などがあります。近年は在宅ワーク対応やデジタル作業を導入している事業所も増えています。
利用時間は事業所によって異なりますが、1日2〜6時間程度、週3〜5日のペースで通う形が一般的です。自分のペースに合わせて日数や時間を調整しやすいことが特徴で、体調や障害の状況に応じて無理なく活動を続けられます。
工賃の水準と全国平均
厚生労働省が公表している「令和6年度工賃(賃金)の実績について」によると、就労継続支援B型事業所の全国平均工賃月額は24,141円です(令和6年度実績、令和8年3月公表)。前年度(令和5年度)の修正後実績22,649円から6.6%増加しています。
工賃は事業所の規模や作業内容、利用頻度によって個人差が大きく、全国平均をそのまま個人の見込み額として扱うことは難しい面があります。また、この金額だけで生活費を賄うことを想定した制度ではなく、障害年金や家族のサポート、その他の給付と組み合わせて生活を支える仕組みになっています。
事業所を選ぶ際に確認しておくポイント
事業所によって工賃・作業内容・雰囲気・支援体制が大きく異なるため、見学や体験の段階でいくつかのポイントを確認しておくとよいでしょう。確認しておきたい点としては、直近の平均工賃月額の実績、1日の活動時間と週あたりの利用日数の目安、スタッフの関わり方と利用者の様子、送迎の有無、食事の提供有無などがあります。
WAM NETの事業所検索では地域ごとの事業所一覧を確認でき、各事業所の情報も掲載されています。受給者証がなくても見学・体験は可能なため、申請手続きを進めながら並行して事業所を探すことができます。
| 確認項目 | チェックのポイント |
|---|---|
| 工賃の実績 | 直近年度の平均工賃月額を確認する |
| 作業内容 | 本人の特性に合った作業があるか |
| 利用時間・日数 | 1日・週あたりの活動量が無理なく続けられるか |
| スタッフ体制 | 支援の内容・スタッフの対応・他の利用者との雰囲気 |
| 通所手段 | 送迎サービスの有無、交通手段との相性 |
- 令和6年度の全国平均工賃は月額24,141円(厚生労働省公表値)
- 工賃は個人差が大きく、事業所ごとに実績が異なる
- 見学・体験は受給者証取得前から可能
- 作業内容・利用時間・スタッフ体制など複数の観点で比較するとよい
まとめ
就労継続支援B型は原則18歳以上を対象とした制度ですが、障害者総合支援法の特例として、15歳以上の障害児でも児童相談所長の意見書があれば利用できます。ただし実際に利用できるのは学校に在籍していないケースが中心で、全日制高校の在学中は難しく、定時制・通信制の場合は市区町村の判断次第というのが実情です。
手続きの出発点は、市区町村の障害福祉窓口への相談です。就労アセスメントを受け、相談支援専門員と一緒にサービス等利用計画案を作成し、受給者証の交付を経て利用開始という流れになります。並行して事業所の見学・体験を進めておくと、スムーズに利用先を決められます。
制度の細かい判断は市区町村ごとに異なる部分もあります。本記事の内容を参考にしながら、個別の状況については必ずお住まいの市区町村窓口や相談支援専門員にご相談ください。一人で抱え込まず、支援につながることが大切な一歩です。


