障害福祉サービスを使いたいと思ったとき、最初の壁になりやすいのが「障害区分認定調査」です。どんな質問をされるのか、どんな基準で区分が決まるのか、事前にイメージしておくだけで、当日の調査がかなり変わります。
障害支援区分の認定は、非該当から区分6までの7段階で判定されます。数字が大きいほど支援の必要度が高いと判断され、利用できる障害福祉サービスの種類が広がります。一方で、就労移行支援や就労継続支援A型・B型など、訓練等給付に分類されるサービスは、区分の認定なしでも利用できます。
この記事では、認定調査の80項目の内容・判定の流れ・シミュレーションの使い方・結果に納得できなかったときの対応まで、制度の仕組みをもとに整理しています。これから申請を考えている方の参考になれば幸いです。
障害区分認定調査とは何か、まず押さえておきたい基本
認定調査の全体像を把握しておくと、申請後の流れに見通しが持てます。障害者総合支援法にもとづくこの調査は、支援の必要度を7段階で判定するためのものです。どの段階でどんなことが行われるかを事前に知っておくと、準備がしやすくなります。
障害支援区分とは何か
障害支援区分とは、障害のある人に必要な支援の度合いを総合的に評価した区分です。障害者総合支援法にもとづく制度であり、非該当・区分1〜6の7段階で表されます。
数字が大きいほど支援の必要度が高いとされており、区分によって利用できる介護給付サービスの種類が異なります。以前は「障害程度区分」と呼ばれていましたが、2014年4月から現在の名称に変更されています。
対象は18歳以上の障害のある人で、身体障害・知的障害・精神障害(発達障害を含む)および障害者総合支援法で指定された難病のある人が含まれます。
認定調査が必要なサービスと不要なサービス
すべての障害福祉サービスに区分認定が必要なわけではありません。就労移行支援・就労継続支援A型・B型・就労定着支援などの訓練等給付は、区分認定なしで利用できます。
区分認定が必要になるのは、主に介護給付に分類されるサービスです。居宅介護・行動援護・生活介護・施設入居支援・重度訪問介護などがこれにあたります。また、共同生活援助(グループホーム)は、入浴・排泄・食事などの介護を伴う場合に認定が必要となります。
利用したいサービスが認定を必要とするかどうかは、申請前に市区町村の障害福祉窓口で確認しておくと安心です。
認定の有効期限と更新のタイミング
障害支援区分の認定には有効期限があり、原則3年です。継続してサービスを利用する場合は、有効期限が切れる前に更新申請を行い、再度認定調査を受ける必要があります。
更新手続きも新規申請と同様の流れで進みます。有効期限が近づいたら、余裕を持って市区町村の窓口に問い合わせるとよいでしょう。
認定なしで利用できるサービスの例:就労移行支援・就労継続支援A型・B型・就労定着支援など
どちらか判断に迷う場合は、市区町村の障害福祉窓口または相談支援事業所に確認してください。
- 障害支援区分は非該当〜区分6の7段階で判定される
- 2014年4月に「障害程度区分」から現在の名称に変更された
- 就労系サービスの多くは区分認定なしで利用できる
- 有効期限は原則3年で、更新には再調査が必要
認定調査の80項目、シミュレーションで事前に確認できること
認定調査では、調査員が自宅などを訪問し、全80項目の聞き取りを行います。この80項目がどのようなカテゴリーに分かれているかを事前に知ることで、当日どんな点を丁寧に伝えるべきかが見えてきます。
80項目の5つのカテゴリー
認定調査の80項目は、厚生労働省の認定調査員マニュアルにもとづき、次の5つのカテゴリーに分類されています。
| カテゴリー | 項目数 | 主な内容 |
|---|---|---|
| 移動や動作等に関連する項目 | 12項目 | 歩行・立ち上がり・移乗など |
| 身の回りの世話や日常生活等に関連する項目 | 16項目 | 食事・入浴・排泄・着替えなど |
| 意思疎通等に関連する項目 | 6項目 | 言語理解・コミュニケーションなど |
| 行動障害に関連する項目 | 34項目 | 自傷・異食・多動・不眠など |
| 特別な医療に関連する項目 | 12項目 | 点滴管理・経管栄養・透析など |
行動障害に関連する項目が34項目と最も多く、日常的にどのような行動上の困難があるかが詳しく問われます。身体機能だけでなく、精神・行動面の状況が幅広く反映される構造になっています。
シミュレーションツールで事前確認する方法
認定調査の受け答えを事前にイメージするために、民間が提供するシミュレーションツールが活用できます。厚生労働省の認定調査員マニュアルに準拠した80項目をもとに、区分の目安を確認できるものがあります。
ただし、これらのシミュレーションはあくまで目安です。実際の判定は、調査員の聞き取り内容・医師の意見書・市町村審査会での二次判定を経て決定されるため、シミュレーション結果と必ずしも一致しません。
事前確認の目的はあくまで「どんな項目があるかを把握する」ことです。本番の調査に向けて、日常の状況を正確に伝えられるよう準備する手がかりとして使うとよいでしょう。
調査当日に伝えるべき「最悪の状態」の記録
認定調査では、「できる日もあるができない日もある」といった状況が反映されにくい場合があります。調査では「直近1か月の状態」が基準となるため、調子が悪い日の具体的な様子を記録しておくことが大切です。
たとえば、「食事に1時間以上かかることがある」「外出後に数日間動けなくなる」「夜中に何度も起きてしまう」といった具体的なエピソードを事前にメモしておくと、当日の聞き取りに答えやすくなります。調査員に「普段の状態」だけでなく「困っている状態」も伝えることを意識してください。
・直近1か月で困った場面をメモする
・「できる日」ではなく「できない日・しんどい日」の状態を記録する
・介助してもらっていることをリストアップする
・主治医に現在の状態を共有しておく
- 80項目は5カテゴリーに分類されており、行動障害が34項目と最も多い
- シミュレーションは目安確認が目的で、判定結果と一致するとは限らない
- 調査は直近1か月の状態が基準になる
- 「最も困っている状態」を具体的に伝える準備が重要
申請から認定通知まで、一次・二次判定の流れ
認定調査には、申請後に複数のステップがあります。一次判定と二次判定の違いや、それぞれで何が評価されるかを把握しておくと、結果の受け取り方も変わります。
申請から認定調査までの手順
障害支援区分の認定は、市区町村の障害福祉窓口への申請から始まります。申請後、市区町村が主治医に意見書の作成を依頼し、認定調査員による訪問調査が行われます。
認定調査員は市区町村の職員またはその委託を受けた専門員で、自宅や施設を訪問し、全80項目の聞き取りを実施します。調査では本人の状況を直接確認するとともに、家族や介護者からの補足情報も聴取できます。
申請から認定通知まで、おおむね2か月程度かかることがあります。サービス利用の開始時期に余裕が必要な場合は、早めに申請することをおすすめします。
一次判定(コンピューター判定)のしくみ
一次判定では、認定調査員の調査結果と医師意見書の一部をもとに、コンピューターが自動的に区分を算出します。80項目のうち、選択式で回答した内容がデータとして処理されます。
一次判定はあくまで「機械的な算出」であり、最終的な区分を決定するものではありません。特記事項や医師意見書の詳細情報は、二次判定で別途評価されます。
二次判定(市町村審査会)で何が加味されるか
二次判定は、市町村審査会において医療・福祉・保健の専門家が集まり、一次判定結果を見直す審査です。認定調査の特記事項・医師意見書の記載内容・日常的な支援の必要度などを総合的に勘案して、最終的な区分が決定されます。
特記事項とは、80項目の選択式回答だけでは伝えきれない本人の状況を調査員が文章で補足したものです。たとえば「一人では外出できないが、手帳の等級が軽度のため選択項目には反映されにくい」といった状況が特記事項として記載されると、二次判定で考慮される余地があります。
認定結果は市区町村から申請者に通知され、結果に合わせて「障害福祉サービス受給者証」が発行されます。
一次判定はコンピューターによる自動算出。選択式の80項目が対象。
二次判定は審査会による人的評価。特記事項・医師意見書の詳細が加味される。
実際の区分は二次判定の結果で決まる。
- 申請後、認定調査員が訪問して80項目の聞き取りを行う
- 一次判定はコンピューター処理で、二次判定で専門家が見直す
- 特記事項は実態を補足するための重要な情報になる
- 申請から結果通知まで約2か月かかることがある
区分ごとに受けられるサービスの違い

障害支援区分の結果によって、利用できる介護給付サービスの種類が異なります。自分が必要としているサービスに区分の要件があるかどうかを、事前に確認しておくと申請の準備がしやすくなります。
介護給付サービスと区分要件の一覧
厚生労働省の資料では、介護給付サービスごとに利用可能な区分が定められています。代表的なサービスと区分要件を整理すると以下のとおりです。
| サービス名 | 利用可能な最低区分 | 備考 |
|---|---|---|
| 同行援護 | 非該当以上(全区分) | 視覚障害のある人が対象 |
| 短期入所(ショートステイ) | 区分1以上 | |
| 居宅介護 | 区分1以上(例外あり) | 区分1は条件付き |
| 生活介護 | 区分3以上(例外あり) | 区分2以下は一部条件付きで利用可 |
| 行動援護 | 区分3以上 | |
| 施設入居支援 | 区分4以上 | |
| 重度訪問介護 | 区分4以上 | |
| 療養介護 | 区分5以上(例外あり) | |
| 重度障害者等包括支援 | 区分6のみ |
上記はあくまで区分要件の目安です。各サービスの詳細な利用条件や例外については、厚生労働省「障害福祉サービスについて」のページで最新情報を確認してください。
訓練等給付は区分なしで利用できる
就労移行支援・就労継続支援A型・B型・就労定着支援・自立訓練・自立生活援助などの訓練等給付は、障害支援区分の認定を受けなくても利用できます。これらは、日常生活能力の向上や就労に向けた準備を目的としたサービスです。
就労移行支援は、一般企業への就職を目指す人を対象に、就労スキルの訓練やビジネスマナー習得・職場実習などを支援します。就労継続支援A型は雇用契約を結んで働く形式、B型は雇用契約なしで軽作業などに取り組む形式です。区分認定がなくても申請できるため、まず相談支援事業所や各事業所に問い合わせるとよいでしょう。
共同生活援助(グループホーム)の区分要件
共同生活援助(グループホーム)は原則として訓練等給付に分類され、区分認定なしで利用できます。ただし、入浴・排泄・食事などの介護サービスを伴う場合は、障害支援区分の認定が必要となる場合があります。
どの程度の介護が必要かによって、認定が必要かどうかが変わるため、利用を検討する段階で事業所または相談支援専門員に確認することをおすすめします。
- 介護給付サービスは区分ごとに利用要件が異なる
- 重度障害者等包括支援は区分6のみが対象
- 就労系サービスの多くは区分なしで申請できる
- グループホームは介護の有無によって区分要件が変わる
認定結果に納得できないときの対応
認定調査の結果が、日常の状況と大きくかけ離れていると感じることがあります。そのような場合に取れる手段として、再調査の依頼と審査請求(不服申立)があります。
まず市区町村窓口に理由を確認する
認定結果に疑問がある場合、最初の対応は市区町村の障害福祉窓口に理由を確認することです。判定の根拠・調査員の記録内容・一次判定の結果などを確認できます。
認定調査時に伝えきれなかった情報がある場合は、再調査を依頼できることがあります。「調査員が来たときは比較的調子が良かった」「日常的な困りごとが十分に伝わらなかった」といった場合は、担当窓口に相談してみてください。
審査請求(不服申立)の手順と期限
市区町村の認定結果に不服がある場合は、都道府県ごとに設置されている「障害者介護給付費等不服審査会」に対して審査請求を行うことができます。これは障害者総合支援法第97条第1項にもとづく制度です。
審査請求の期限は、処分を知った日の翌日から3か月以内です。審査請求書を作成して都道府県に提出し、書面または口頭による審理を経て裁決が出ます。詳細な手続きは、お住まいの都道府県の担当窓口または市区町村の障害福祉窓口で確認できます。
不服申立て中のサービス利用について注意すること
審査請求を行っている期間中は、原則として不服を申し立てた処分の内容がそのまま適用されます。つまり、審査請求の結果が出るまでの間、新たなサービスが使えないケースがあります。
現在必要なサービスがある場合は、審査請求と並行して現行の認定範囲内で使えるサービスを確認したうえで、相談支援専門員に相談するとよいでしょう。
Q:調査当日に「できる」と答えてしまったが、実際はできない日も多い。変更できる?
A:調査後に状況を補足する情報を担当窓口に伝えることで、再調査の依頼ができる場合があります。主治医にも状態を共有しておくと、意見書に反映される可能性があります。
Q:認定結果の通知が届いてから審査請求まで何日あるか?
A:障害者総合支援法では、処分を知った日の翌日から3か月以内に審査請求を行う必要があります。期限に余裕を持って動くことをおすすめします。
- 結果に疑問があれば、まず市区町村窓口で判定根拠の確認を求める
- 調査で伝えきれなかった情報がある場合は再調査を依頼できる場合がある
- 不服申立は「処分を知った日の翌日から3か月以内」に行う必要がある
- 審査請求中もサービスが使えないケースがあるため、並行した対応が必要
まとめ
障害区分認定調査は、80項目の聞き取りと医師意見書をもとに、一次・二次判定を経て区分が決まる制度です。シミュレーションツールは事前確認に役立ちますが、あくまで目安として使い、日常の困りごとを具体的に伝える準備を優先してください。
まず「自分が利用したいサービスに区分認定が必要かどうか」を市区町村の障害福祉窓口か相談支援事業所に確認することから始めるとよいでしょう。就労系サービスは認定なしで利用できるものが多く、認定が必要なサービスと不要なサービスを整理するだけでも、申請の見通しが立ちやすくなります。
制度の詳細や個別の状況については、自治体の担当窓口や相談支援専門員に相談することで、より正確な情報が得られます。一人で悩まずに、まず身近な相談窓口を活用してみてください。


