就労継続支援B型(B型作業所)には、国や自治体から一定のお金が事業所に支払われます。「補助金をもらっている」という話を耳にして、その金額や仕組みが気になっている方は少なくありません。
このお金は、正確には「訓練等給付費」と呼ばれる給付金であり、利用者一人ひとりの通所日数や事業所の規模・地域・支援内容に応じて計算されます。補助金・助成金とは制度上の区別があり、混同されやすい点でもあります。
この記事では、訓練等給付費の仕組みと一人あたりの金額の目安、計算の構造、給付費が運営にどう使われているかを順に整理します。制度の全体像をつかむことで、事業所選びや制度理解の判断材料にしていただければと思います。
B型作業所に入る「補助金」とは何か――訓練等給付費の基本
B型作業所の収入源として語られる「補助金」は、制度上は「訓練等給付費(自立支援給付)」と呼ばれます。障害者総合支援法にもとづく障害福祉サービスを提供した対価として、国と自治体が事業所に支払う給付金です。この章では、給付費がどのような仕組みで支払われるかを整理します。
訓練等給付費とは何か
訓練等給付費は、就労継続支援B型をはじめとする障害福祉サービスを提供する事業所に対して、国と市区町村が支払う公費です。サービスの利用実績(利用者数×通所日数)をもとに毎月請求・支払いが行われます。
費用の負担割合は、国が50%、都道府県が25%、市区町村が25%です。利用者本人は原則として1割を負担しますが、世帯所得に応じた上限月額が設定されており、多くの利用者は実質的に無料か低負担で利用しています。
この給付費が事業所の主な収入源となっており、人件費・家賃・光熱費・設備費などの運営コストに充てられます。工賃は別の仕組み(生産活動収益)から支払われるため、給付費と工賃は区別して考えることが大切です。
「補助金」「助成金」「給付費」の呼び方の違い
「補助金」「助成金」「給付費」はそれぞれ異なる制度上の区分です。混同されやすいため、整理しておきます。
補助金:施設整備や設備導入を対象とした公的な補助。申請・審査が必要。
助成金:雇用に関する要件を満たした場合に厚生労働省等から支払われるもの。
なお、B型事業所の利用者は雇用契約を結ばないため、雇用系の助成金の対象外になるケースが多い。
給付費が支払われる流れ
事業所は毎月の利用実績をもとに、国民健康保険団体連合会(国保連)を通じて給付費を請求します。国保連が内容を審査したうえで、翌々月に事業所へ支払われる仕組みです。
請求額は「基本報酬単位×地域区分単価×利用者数×通所日数」を基本として算出されます。この計算式の各要素がどう決まるかが、一人あたりの金額を理解する鍵です。
- 利用実績にもとづき毎月請求する
- 国保連の審査を経て翌々月に支払われる
- 基本報酬単位・地域区分・定員規模などで金額が変動する
- 加算が取れている事業所は受取額がさらに増える
一人当たりの金額はどう決まるか――報酬の計算構造
「利用者一人あたりいくら」という問いに答えるには、基本報酬の単位数と地域区分単価を理解する必要があります。単純な固定額ではなく、複数の変数によって決まる仕組みです。この章ではその計算構造を整理します。
基本報酬の単位数と区分
令和6年度(2024年4月)の報酬改定後、就労継続支援B型の基本報酬は大きく2つの体系から選択します。一つは「平均工賃月額に応じた体系(サービス費Ⅰ〜Ⅲ)」、もう一つは「利用者の就労・生産活動等への参加等で一律評価する体系(サービス費Ⅳ〜Ⅵ)」です。
平均工賃月額に応じた体系では、利用者への工賃が高いほど事業所が受け取る単位数も高くなる設計です。令和6年度改定では、工賃が高い区分の単価が引き上げられた一方、1万円未満の区分は引き下げられました。これにより工賃向上への取り組みが報酬に反映されやすくなっています。
地域区分単価の影響
基本報酬は「単位数」で設定されており、1単位あたりの金額(円換算)は事業所の所在地域によって異なります。この地域ごとの掛け率を「地域区分単価」と呼びます。
地域区分は1〜8級地と「その他」に分類されており、東京都特別区や政令指定都市では単価が高く設定されています。たとえば大阪市(2級地)では1単位あたり約10.84円、奈良市(その他)では10.34円となります(令和6年度時点。最新の地域区分は厚生労働省の告示でご確認ください)。
定員規模による単位数の違い
利用定員の規模によっても単位数が変わります。定員が20人以下の小規模事業所ほど1人あたりの単位数が高く、定員が大きくなるにつれ単位数は低くなる傾向があります。
たとえばサービス費Ⅰ・定員20人以下の事業所と定員81人以上の事業所では、同じ平均工賃区分でも1日あたりの単位数に差があります。事業所の規模設計が収支にも影響するため、開設を検討する場合は定員設定が重要な判断項目の一つになります。
一人あたりの目安金額
複数の要因を組み合わせると、B型作業所が受け取る給付費の目安は一人1日あたり6,000円前後、地域や加算によっては8,000円台になるケースもあります。月平均の通所日数が15日程度の場合、一人あたり月額12万〜13万円前後の給付費が算定される計算になります。ただしこれはあくまで目安であり、地域区分・定員・工賃実績・加算の有無によって大きく変わります。
| 平均工賃月額 | 基本報酬(定員20人以下・サービス費Ⅰ)の単位数目安 |
|---|---|
| 1万円未満 | 590単位/日 |
| 1万円以上〜1.5万円未満 | 610単位/日 |
| 2万円以上〜2.5万円未満 | 660単位/日 |
| 4.5万円以上 | 760単位/日 |
※単位数は令和6年度改定時の参考値です。最新の告示・通知は厚生労働省の障害福祉サービス等報酬改定ページでご確認ください。
- 一人1日あたり6,000円〜8,000円台が目安(地域・規模・加算によって変動)
- 月額換算では12万〜13万円前後が一つの参考値
- 平均工賃が高いほど事業所の受取単位数が増える仕組み
- 地域区分・定員規模によっても金額が変わる
加算と減算――金額を左右する主な要素
基本報酬に上乗せされる「加算」や、一定の条件下で差し引かれる「減算」も、事業所が受け取る給付費の合計額に直接影響します。加算を適切に取得できているかどうかが、事業所の収支や支援の質にも関わります。
主な加算の種類
就労継続支援B型で算定できる主な加算には次のものがあります。福祉専門職員配置等加算(有資格の職員を一定割合配置した場合)、就労移行支援体制加算(一般就労に移行した実績がある場合)、ピアサポート実施加算(障害当事者が支援に関わる場合)、目標工賃達成加算(都道府県の工賃向上計画で目標を達成した場合)などがあります。
令和6年度改定では、各都道府県の工賃向上計画にもとづいて目標を達成した事業所に1日あたり10単位が加算される制度も新設されました。工賃を引き上げる取り組みが直接報酬にも反映される構造になっています。
短時間利用減算の注意点
令和6年度改定で新設・厳格化された「短時間利用減算」は、事業所にとって注意が必要な項目です。1日の利用時間が4時間未満の利用者が全体の50%以上を占める場合、基本報酬が30%減算されます。
ただし、個別支援計画で一般就労に向けた利用時間の延長支援が位置付けられている場合や、短時間利用となるやむを得ない理由がある場合は、割合の算定から除外できます。利用者の状況に応じた個別支援計画の整備が、減算回避の観点からも重要です。
加算・減算が利用者にとって何を意味するか
加算が多く取れている事業所は、それだけ収入が安定しており、支援員の人数を確保したり設備を整えたりする余裕が生まれます。逆に減算が続くと収益が圧迫され、支援の質に影響するリスクもあります。
見学時に「どんな加算を取得しているか」を事業所に確認してみることも、選び方の一つの視点です。WAM NET(障害福祉サービス等情報公表システム)では、各事業所の運営情報が公表されており、加算の取得状況を確認できる場合があります。
短時間利用が多い事業所では、令和6年度改定から30%の減算が適用される場合がある。
見学時に加算取得の状況を確認することが、事業所選びの一つの判断材料になる。
- 主な加算:福祉専門職員配置等加算・就労移行支援体制加算・ピアサポート実施加算など
- 短時間利用減算:4時間未満の利用者が50%以上で30%減算
- 加算状況はWAM NETの情報公表で確認できる場合がある
- 工賃向上目標を達成した事業所への加算(1日10単位)が令和6年度に新設
助成金・補助金との違い――給付費とは別の支援制度
「B型作業所は補助金で運営されている」という表現は広く使われますが、制度上は給付費・補助金・助成金は異なる枠組みです。それぞれの対象と目的を整理します。また、B型事業所が活用できる助成金には一定の制約もあるため、合わせて確認しておくとよいでしょう。
補助金の対象と種類
B型事業所が申請できる補助金として代表的なのは「社会福祉施設等施設整備補助金」です。これは事業所の新設や大規模な修繕を行う際に活用できる補助金で、国・都道府県・市区町村が費用の一部を補助します。株式会社や合同会社も対象となる場合がありますが、公益性の高い法人が優先される自治体もあります。
そのほか、IT導入補助金や小規模事業者持続化補助金など、事業所の業種を問わず申請できる補助金も活用の選択肢になります。ただし審査が伴うため、助成金に比べて採択のハードルは高くなります。
助成金の対象と制約
雇用関連の助成金(人材開発支援助成金・キャリアアップ助成金など)は、厚生労働省が提供するもので、主に雇用契約を結んだ従業員を対象とします。B型事業所の利用者は雇用契約を結ばないため、利用者を対象とした雇用系助成金は原則として活用できません。
一方、事業所が正規・非正規を問わず雇用する支援員スタッフは雇用契約を結んでいるため、支援員の処遇改善や研修にかかる費用に対する助成金は申請できます。A型事業所と比べて活用できる助成金の幅が狭い点は、B型事業所の運営上の特徴の一つです。
給付費と補助金・助成金を合わせた収入構造
B型事業所の収入は、訓練等給付費(給付収益)と生産活動収益の2本柱が基本です。これに補助金・助成金が加わる場合もありますが、給付費が収入の大部分を占めます。
| 収入の種類 | 対象・性質 | 事業所への影響 |
|---|---|---|
| 訓練等給付費 | 利用実績にもとづく毎月の給付 | 収入の主軸。利用者数と通所日数が重要 |
| 生産活動収益 | 利用者の作業・生産活動による売上 | 工賃の原資。余剰分は積み立てに制約あり |
| 施設整備補助金 | 新設・大規模修繕が対象 | 開設・改修時に活用できる |
| 雇用系助成金 | スタッフ(雇用契約者)が対象 | 研修費や処遇改善に活用できる場合がある |
- 給付費は制度上「補助金」ではなく「訓練等給付費」という給付金
- B型の利用者は雇用契約がないため、雇用系助成金の対象外になるケースが多い
- 施設整備補助金は新設・大規模修繕を対象とした別制度
- 給付費が収入の大部分を占めるのがB型事業所の基本的な収支構造
事業所の収支から見る「給付費の使われ方」
給付費が事業所にとって大きな金額であることは確かですが、その収入をどのように使っているかも重要な視点です。事業所の収支構造を理解すると、なぜ工賃が低くなりやすいのかも見えてきます。
人件費が支出の大部分を占める
B型事業所の支出で最大の割合を占めるのは人件費です。職業指導員・生活支援員・サービス管理責任者(サビ管)・管理者といったスタッフの給与・社会保険料・研修費などが含まれ、支出全体の3分の2程度に達する事業所も少なくありません。
人員配置基準(常勤換算で利用者7.5人に対してスタッフ1人以上など)が法令で定められており、基準を下回ると減算が発生します。質の高い支援を維持するためには、一定数のスタッフを確保し続ける必要があります。
家賃・光熱費・設備費などの固定費
人件費以外にも、事務所・作業スペースの賃料、光熱水費、作業設備・機器の維持費、送迎車の燃料費・保険料などが毎月かかります。都市部では賃料だけでも相当の金額になり、給付費の収入規模に対して固定費の比率が高くなりやすい傾向があります。
こうした固定費の存在が、工賃の引き上げを難しくする一因でもあります。工賃は生産活動収益から支払う原則があり、給付費から直接工賃を支払うことはできません。
なぜ工賃が低くなりやすいのか
工賃の低さについては「給付費が多いのになぜ」と疑問に感じる方もいます。制度上、工賃は生産活動収益(利用者が作った製品の販売収入や受注作業の収入)から支払う原則があります。給付費は事業所の運営コスト全般をまかなうためのものであり、工賃の財源として直接は使えません。
生産活動収益を増やすには、受注先の開拓や作業品質の向上が必要で、事業所の営業力や利用者の作業スキルに依存します。このため、給付費の額に関わらず工賃の水準は事業所ごとに大きく差が開くことになります。
給付費は人件費・家賃・設備費などの運営コストに充てられる。
給付費が多くても工賃が低い事業所があるのは、この収支構造によるもの。
- 支出の最大項目は人件費(全体の3分の2程度になるケースも)
- 家賃・光熱費・設備費などの固定費も相応の割合を占める
- 工賃は生産活動収益が原資であり、給付費とは区別される
- 工賃水準は事業所の受注力・営業力によって大きく変わる
まとめ
B型作業所(就労継続支援B型)に入る「補助金」の正体は、障害者総合支援法にもとづく「訓練等給付費」という給付金です。一人1日あたり6,000円前後(地域・規模・加算によって変動)が目安で、月額換算では12万〜13万円前後が参考値となります。
制度をより深く理解するための第一歩として、自分が利用する(またはスタッフとして関わる)事業所のWAM NET情報公表ページを確認してみることをおすすめします。加算の取得状況や運営規模が公開されており、事業所選びの比較にも役立ちます。
給付費の仕組みや金額が分かると、事業所の選び方や工賃の水準に対する見方も変わってきます。制度の枠組みを知ることが、よりよい就労支援との出会いにつながるはずです。

