就労支援でデザインスキルを身につける|種類・費用・事業所選びの要点

就労支援のデザイン制作風景

就労支援でデザインを学び、Webデザイナーやグラフィックデザイナーとして働くことを目指す方が増えています。「未経験でも学べるのか」「どの制度を使えばよいのか」「費用はどのくらいかかるのか」——こうした疑問をまとめて整理します。

就労支援の中でデザインスキルを身につける場合、主に「就労移行支援」と「就労継続支援B型」の2つの制度が関係します。どちらを使うかによって目的や通い方が異なるため、最初に制度の違いを把握しておくことが大切です。

この記事では、デザインを学べる就労支援の制度のしくみ、身につくスキルの種類、費用のしくみ、事業所を選ぶ際の確認ポイント、就職後の定着まで、順を追って整理します。まずは制度の全体像から確認していきましょう。

就労支援でデザインを学ぶとはどういうことか

就労支援の中でデザインスキルを習得できる制度は複数あります。どの制度を使うかによって、通所の目的や期間、費用のしくみが変わります。まず制度の区分を整理しておきましょう。

就労移行支援でデザインを学ぶ場合

就労移行支援は、障害者総合支援法に定められた障害福祉サービスのひとつです。一般企業への就職を目指す障害のある方が、職業訓練や就職活動支援、就職後の定着支援を受けられます。利用期間は原則2年間で、この期間内に就職を目指す仕組みです。

デザインを学べる就労移行支援事業所では、Webデザインやグラフィックデザイン、DTP(印刷物のデザイン)、動画編集などのカリキュラムを提供しています。講師に実務経験者を招いているところや、実際にクライアントから受けた制作案件を通じてポートフォリオを作成できる事業所もあります。就職後も最長6か月間の職場定着支援を受けられます。

就労移行支援でデザインを学ぶ場合は、スキル習得だけでなく「一般企業への就職」という明確なゴールに向けたプログラムが組まれている点が特徴です。ビジネスマナーやコミュニケーション訓練もあわせて学ぶことで、就職後の定着にもつながります。

就労継続支援B型でデザイン作業をする場合

就労継続支援B型は、すぐに一般就労が難しい方が、自分のペースで働くことを目的とした福祉サービスです。事業所との雇用契約は結ばず、作業に応じた工賃が支払われます。デザイン作業(バナー制作・ロゴ制作・チラシ作成など)を実務として行う事業所も存在します。

就労継続支援B型でのデザイン作業は、「作業訓練」として位置づけられます。就労移行支援のように「就職を目指す」ためのスキル訓練とは目的が異なる点に注意が必要です。ただし、B型事業所での作業を通じて実績を積んでから、就労移行支援へ移行して就職を目指すという流れをたどる方もいます。

どちらの制度が自分に合うかは、現在の体調の安定度や就職の希望時期によって変わります。まずは相談支援専門員や市区町村の障害福祉窓口に現状を話してみるとよいでしょう。

障害者手帳がなくても利用できる場合がある

就労移行支援は、障害者手帳を持っていなくても、医師の診断書や意見書があれば自治体の判断により利用できる場合があります。精神的な不調で休職中の方や、発達障害の診断を受けた方も対象になるケースがあります。

利用できるかどうかは自治体ごとに判断が異なるため、「手帳がないから使えない」と決めつけず、まず居住地の市区町村の障害福祉窓口やハローワークの障害者専門窓口に問い合わせてみることが大切です。詳細な要件は、厚生労働省の就労支援対策ページやお住まいの自治体の窓口でご確認ください。

就労移行支援:就職を目指すスキル訓練と就職活動支援が中心。利用期間は原則2年間。
就労継続支援B型:自分のペースで働きながら工賃を得る。就職が直接の目的ではない。
どちらでもデザイン関連の訓練・作業を行う事業所がある。
利用できる制度は体調・就職希望時期・自治体の判断によって異なる。
  • 就労移行支援は一般就労を目指す方向けで、利用期間は原則2年間
  • 就労継続支援B型は就職が難しい段階の方が自分のペースで作業する場
  • どちらでもデザイン作業・訓練を提供する事業所がある
  • 障害者手帳がなくても利用できる場合があるため窓口への確認を
  • 自分に合う制度は相談支援専門員や福祉窓口への相談で整理できる

就労支援で学べるデザインスキルの種類と使うツール

デザイン系の訓練を行う事業所では、扱うジャンルや使用ソフトが事業所ごとに異なります。自分が目指す職種に合ったカリキュラムかどうかを事前に確認することが大切です。

Webデザインとコーディング

Webデザインを学べる事業所では、Webページのレイアウトやデザインカンプ(完成イメージ図)の作成から、HTML・CSSを使った実装(コーディング)までを扱うところが多くあります。Adobe Photoshop・Illustratorを使った画像加工やバナー制作も含まれることが一般的です。

コーディングとデザインを分けてどちらか一方を重点的に学ぶことを選択できる事業所もあります。「デザインには自信があるがコーディングが苦手」という場合はデザイン特化、逆の場合はコーディング特化の訓練で就職を目指すという方向性もあります。

Webデザインの就職先には、Web制作会社、事業会社のインハウスデザイナー、フリーランスとしての在宅ワークなどがあります。在宅ワーク可能な求人もあるため、通勤に不安を感じる方にとっても選択肢のひとつになります。

グラフィックデザインとDTP

グラフィックデザインは、チラシ・ポスター・パンフレット・ロゴ・パッケージなど、印刷物や視覚的な制作物をデザインする分野です。Adobe Illustrator・Photoshopを使い、デザインの基礎(色彩・タイポグラフィ・レイアウト)から学んで作品を作れる水準を目指します。

DTP(Desktop Publishing)はInDesignなどを使った冊子・カタログ・書籍の版面設計を扱います。印刷業界や広告代理店、デザイン事務所への就職を目指す場合に役立つスキルです。グラフィックデザインとDTPは重なる部分も多く、一緒に学べる事業所もあります。

就職先としては、広告制作会社・デザイン事務所・事業会社の宣伝部・印刷会社などがあります。将来的にフリーランスとして活動する方もいます。

動画編集・映像制作

動画編集を訓練の一環として提供する事業所もあります。Adobe Premiere Pro・After Effectsなどを使ってカット編集・テロップ挿入・エフェクト追加などの技術を習得します。SNSやYouTubeコンテンツの需要増加に伴い、動画クリエイターとして就職した事例も出ています。

動画編集はグラフィックやWebデザインと組み合わせて学ぶ事業所も多く、複数のスキルを持つことで就職先の選択肢が広がります。特定のスキルに絞るか複数を組み合わせるかは、訓練を進める中でスタッフと相談しながら決めるとよいでしょう。

動画編集も在宅ワーク可能な職種のひとつです。通所が難しい時期にはオンラインで訓練を受けられる事業所もあるため、見学時に確認しておくと安心です。

分野主なツール就職先の例
WebデザインPhotoshop・Illustrator・HTML/CSSWeb制作会社・インハウス・フリーランス
グラフィック・DTPIllustrator・InDesign広告制作会社・印刷会社・デザイン事務所
動画編集Premiere Pro・After Effects映像制作会社・広告代理店・フリーランス
  • Webデザインはレイアウト設計からコーディングまで幅広く学べる
  • グラフィック・DTPは印刷物のデザインに強い分野
  • 動画編集はWebやグラフィックとの組み合わせで学ぶ事業所が多い
  • 在宅ワーク可能な求人がある職種も含まれる
  • どのスキルに重点を置くかは訓練開始後でも相談しながら決められる

就労移行支援の費用のしくみと利用料の確認方法

就労移行支援の費用が気になる方は多くいます。費用のしくみは制度上定められており、約9割の利用者が自己負担なしで利用しているとされています。費用の考え方を正確に把握しておきましょう。

利用料の基本的なしくみ

就労移行支援の利用料は、サービスにかかる費用の9割を国と市区町村が負担し、残りの1割を利用者が負担する仕組みです。ただし、世帯の所得に応じて1か月あたりの「負担上限月額」が定められており、上限を超える費用は発生しません。

負担上限月額は所得区分によって、生活保護受給世帯・市町村民税非課税世帯の方は0円、市町村民税課税世帯でも所得割が一定額未満の場合は9,300円が上限になります。さらに所得が高い区分では最大37,200円が上限です。詳細な区分や金額は厚生労働省の「障害者の利用者負担」ページで確認できます(※最新情報は厚生労働省公式サイトでご確認ください)。

18歳以上の場合、所得の判定は本人と配偶者の収入で行われます。親や兄弟など同居家族の収入は原則として対象外です。障害年金・傷病手当金・失業保険などは非課税所得のため、判定の収入には含まれません。

利用料以外にかかる費用

利用料以外にも、交通費・昼食代が実費でかかる場合があります。交通費については、自治体によって補助制度を設けているところがあります。昼食については、食事提供体制加算を受けている事業所では負担が軽減されるケースや、無料で提供している事業所もあります。

資格取得費用(ウェブデザイン技能検定・Adobe認定資格等)が自己負担になるか、事業所が補助してくれるかも事業所によって異なります。見学や相談の際に「交通費・昼食代・資格受験料はどうなっていますか」と確認しておくと費用の見通しが立てやすいです。

就労移行支援の利用中は原則としてアルバイトができないため、生活費の確保も事前に考えておく必要があります。障害年金の受給資格がある場合は、利用前に確認しておくと安心です。

受給者証の申請が必要

就労移行支援を利用するには、居住地の市区町村に申請し「障害福祉サービス受給者証」の交付を受ける必要があります。申請の窓口は市区町村の障害福祉担当課です。受給者証が交付されて初めて、事業所との利用契約を結べます。

受給者証の申請からサービス利用開始までには、書類準備・面談・調査などのステップがあり、自治体によって異なりますが数週間から1か月程度かかることがあります。事業所への見学・相談と並行して手続きを進めるとスムーズです。手続きの流れの詳細は居住地の市区町村の窓口でご確認ください。

費用の流れをひとことで整理すると:
利用料の9割は国・自治体が負担 → 残り1割が対象だが、所得によって上限0円の方も多い。
交通費・昼食代は原則自己負担。補助制度は自治体・事業所ごとに確認が必要。
利用には受給者証の取得が必要。申請は市区町村の障害福祉窓口へ。
  • 利用料の自己負担には上限が設けられており、約9割の方が0円で利用している
  • 18歳以上の場合、所得判定は本人と配偶者のみ(親・兄弟は対象外)
  • 交通費・昼食代・資格費用は事業所や自治体によって扱いが異なる
  • 利用には受給者証の取得が必要。申請は市区町村の障害福祉担当課へ
  • 生活費の確保(障害年金等)も利用前に確認しておくと安心

デザイン系事業所を選ぶときの確認ポイント

就労支援デザインに取り組む日本人男性

デザインを学べる事業所は全国に複数あります。ただし、事業所によってカリキュラムの内容・講師の質・就職サポートの厚みは大きく異なります。以下の観点で比較すると選びやすくなります。

講師の実務経験とカリキュラムの内容

デザイン系の訓練において特に重要なのが、講師が実際のデザイン業務を経験しているかどうかです。Webデザイン・グラフィック・DTP・動画のどの分野に対応しているか、どのソフトを使って学べるか(Photoshop・Illustrator・InDesign・Premiere Proなど)は事業所によって異なります。

事業所のホームページや見学時に、講師のプロフィールや訓練で扱うソフトを確認するとよいでしょう。また、自分が目指す方向(Webデザイン寄りかグラフィック寄りか)と事業所の得意分野が合っているかも大切な確認ポイントです。カリキュラムは入所前に概要を見せてもらえる場合が多くあります。

なお、訓練内容は事業所の方針や定員状況によって変わることがあるため、見学時に最新の内容を直接確認することをお勧めします。

ポートフォリオ支援と実務経験の機会

デザイン職への就職活動では、ポートフォリオ(作品集)の提出が求められることがほとんどです。事業所がポートフォリオ制作をサポートしているか、また「架空の制作物」だけでなく実際のクライアントから依頼を受けた実績を積める機会があるかどうかは、就職活動の強みに直結します。

実際に使われるWebサイト・バナー・チラシなどの制作実績があれば、「実務経験あり」として職務経歴書に記載できる場合があります。こうした機会があるかどうかは見学・体験時に確認しておきましょう。ポートフォリオ指導・技術面接の練習対応の有無も合わせて聞いておくと安心です。

就職実績と定着支援の内容

事業所を選ぶ際には、デザイン系職種への就職実績があるかどうかも確認しておきましょう。全体の就職率だけでなく、「クリエイティブ職・IT職への就職者が何人いるか」「就職後も職場に定着しているか」を聞くと、事業所のサポートの実力が把握しやすくなります。

就労移行支援では、就職後6か月間の職場定着支援が含まれています。支援員が就職先との間に入って相談対応や環境調整を行います。この定着支援の内容(頻度・対応方法)も事業所によって異なるため、見学時に確認しておくとよいでしょう。就職後の不安を事前に解消しておくことが、長く働き続けることにつながります。

在宅訓練・在宅就職への対応

デザイン職は在宅ワーク可能な求人が比較的多い分野です。通所に不安がある場合や、就職後も在宅勤務を希望する場合は、事業所がオンラインでの訓練に対応しているか、在宅就職の実績があるかを見学時に確認しておきましょう。

在宅訓練に対応している事業所では、チャット・ビデオ通話などのツールを使って支援員とやりとりしながら訓練を進められます。体調の変動がある方や遠方に住んでいる方にとっても選択肢が広がります。

  • 講師の実務経験と対応ソフト・ジャンルを見学時に確認する
  • 実際のクライアント案件などポートフォリオに使える制作機会があるか
  • デザイン系職種への就職実績と就職後の定着率
  • 就職後6か月間の職場定着支援の内容と頻度
  • 在宅訓練・在宅就職への対応状況

デザイン系就労支援の利用から就職までの流れ

就労移行支援を使ってデザイン職を目指す場合、利用開始から就職・定着までにはいくつかのステップがあります。全体の流れを把握しておくと、見通しを持って準備を進めやすくなります。

見学・体験から受給者証取得まで

まず気になる事業所に問い合わせて、見学または体験に参加します。見学では、事業所の雰囲気・カリキュラム内容・スタッフの対応を確認できます。1か所だけでなく複数の事業所を見学して比較することをお勧めします。家族や支援者の方の同席も可能です。

事業所を決めたら、市区町村の障害福祉担当窓口へ受給者証の申請を行います。申請には、医師の診断書・意見書などが必要になる場合があります。受給者証が交付されたら、事業所と利用契約を結んで通所が始まります。手続きの詳細は居住地の市区町村窓口でご確認ください。

見学から通所開始まで、状況によっては1か月以上かかる場合があります。余裕を持って動き始めるとよいでしょう。事業所のスタッフが手続きのサポートをしてくれるところも多くあります。

訓練期間中のスキル習得とポートフォリオ作成

通所が始まると、個別支援計画に基づいた訓練が始まります。最初はPCの基礎操作から入り、デザインソフトの基本を学んでから、バナー・Webページ・チラシなどの制作課題に取り組む流れが一般的です。

訓練を進める中で、自分が得意な方向性(Webデザインか・グラフィックかなど)が見えてきます。就労移行支援の平均利用期間は事業所によって異なりますが、半年から1年程度で就職が決まる方から2年かけてじっくり準備する方までさまざまです。スタッフと定期的に面談しながら、自分のペースで進めることができます。

訓練と並行してポートフォリオ(作品集)を少しずつ作っておくと、就職活動が本格化したときにスムーズです。実際のクライアント案件があれば積極的に取り組んでおきましょう。

就職活動・内定・職場定着支援

スキルと就労準備が整ってきたら、就職活動に入ります。求人探しや応募書類の作成・面接練習は事業所のスタッフが伴走してサポートします。デザイン職への応募では、ポートフォリオの見せ方が選考に影響することが多いため、スタッフからのフィードバックを活用しましょう。

内定が決まったら、就職後の働き方(勤務時間・在宅比率・合理的配慮の内容など)について事業所スタッフを通じて職場と調整することができます。就職直後は環境変化でストレスがかかりやすい時期です。就職後6か月間は職場定着支援として相談窓口が継続するため、気になることは遠慮なく相談してください。

デザイン系就労移行支援の全体ステップ:
見学・体験 → 受給者証の申請・取得 → 利用契約・通所開始 → 訓練・ポートフォリオ作成 → 就職活動 → 内定・就職 → 職場定着支援(就職後6か月)
  • 見学は複数の事業所を比較するのが理想。家族や支援者の同席も可
  • 受給者証の申請は市区町村の障害福祉担当窓口へ。手続きには数週間かかることも
  • 訓練は個別支援計画に沿って進み、スタッフとの面談で方向性を調整できる
  • ポートフォリオは訓練中から少しずつ作成しておく
  • 就職後6か月間は職場定着支援が続くため、困りごとはスタッフに相談できる

まとめ

就労支援でデザインを学ぶ場合、就労移行支援を使って一般就職を目指すか、就労継続支援B型でデザイン作業を行うかによって、目的と支援の内容が変わります。費用は約9割の方が自己負担なしで利用しており、まずは制度の窓口に問い合わせることが最初の一歩です。

今すぐできる行動は、気になる事業所に見学の問い合わせをすることです。見学は無料で、複数の事業所を比較してから決めることができます。WAM NET(障害福祉サービス事業所検索)を使って、お住まいの地域にあるデザイン系の事業所を調べてみましょう。

「未経験でもできるのか不安」という方こそ、まず話を聞いてみることが大切です。支援員やスタッフはその不安に慣れていますし、あなたのペースに合わせたプランを一緒に考えてくれます。一歩踏み出してみてください。

当ブログの主な情報源