知的障害のある方が「働く場」を探すとき、「作業所」という言葉をよく目にします。ひと口に作業所といっても、制度上は複数の種類があり、雇用契約の有無や通い方、もらえる工賃の水準まで、それぞれに違いがあります。
障害者総合支援法のもとでは、就労移行支援事業所・就労継続支援A型事業所・就労継続支援B型事業所の3種類が「作業所」と呼ばれることが多い施設です。自分に合うサービスを選ぶためには、それぞれの仕組みを整理しておくことが大切です。
この記事では、知的障害のある方と、そのご家族が「どのサービスが自分に向いているか」を判断できるよう、制度の仕組みから利用の流れ、費用の目安まで順を追って整理しています。ぜひ、事業所選びの参考にしてみてください。
「作業所」という言葉の意味と現在の制度上の位置づけ
「作業所」は、かつて使われていた名称です。現在の制度に照らすと、障害者総合支援法に基づく就労系の障害福祉サービス事業所を指すことが多く、就労継続支援A型・B型がその中心です。名称の変遷を知っておくと、情報収集のときに混乱しにくくなります。
「小規模作業所」から現在の制度への移行
2006年10月に障害者自立支援法(現在の障害者総合支援法)が施行されたことにより、それまでの「小規模作業所」「共同作業所」「授産施設」などは、就労移行支援事業所・就労継続支援A型・B型といった制度上のサービスへと移行が進みました。
現在では「作業所」という言葉は法令上の正式名称ではありませんが、地域の人々や当事者の間では引き続き使われており、就労継続支援事業所をさすことが多い状況です。「B型作業所」「A型作業所」という言い方も、それぞれ就労継続支援B型・A型の事業所を指す通称として広く使われています。
障害者総合支援法が定める就労系サービスの5種類
厚生労働省の資料では、障害者総合支援法に基づく就労系サービスとして、就労選択支援・就労移行支援・就労継続支援A型・就労継続支援B型・就労定着支援の5種類が定められています。
このうち「作業所」として利用されることが多いのは、就労継続支援A型と就労継続支援B型の2つです。就労移行支援は一般就労を目標とした訓練中心のサービスで、「作業所」とは目的や位置づけが異なります。なお、2025年10月からは就労選択支援の本格的な運用も始まっており、自分に合ったサービスを選ぶための「就労アセスメント」の仕組みも整ってきています。
就労継続支援と就労移行支援の大きな違い
就労移行支援は、一般企業への就職を目指して訓練を受けるサービスで、原則として利用期間に2年という上限があります。一方、就労継続支援A型・B型は、一般企業での就労が難しい方が福祉的な就労環境で働くためのサービスで、利用期間の上限はありません。
知的障害のある方が「長く安心して働き続けたい」と考える場合は、就労継続支援A型・B型が中心的な選択肢になります。就職を目指したい場合や、就労に向けたスキルを身につけたい場合は、就労移行支援の利用も選択肢に入ります。
就労移行支援は原則2年という利用上限があり、一般就職を目指すための訓練が中心です。
どちらが合うかは、現在の状態や今後の目標によって異なります。
- 「作業所」とは、主に就労継続支援A型・B型事業所の通称です。
- 2006年の法改正を経て、現在は障害者総合支援法に基づく制度として整理されています。
- 就労移行支援とは目的・期間の上限などが異なります。
- 2025年10月から就労選択支援の運用が本格化し、アセスメントの機会も広がっています。
就労継続支援A型とB型の違いをひと目で整理する
知的障害のある方が作業所を選ぶ際に、最初に迷いやすいのがA型とB型の違いです。雇用契約の有無や工賃・賃金の水準、通い方の自由度など、いくつかの軸で整理しておくと、自分に合う方を選びやすくなります。
雇用契約の有無が最大の違い
就労継続支援A型は、事業所と雇用契約を結んで働くサービスです。雇用契約があるため、最低賃金が適用されます。週5日、1日4〜5時間程度の勤務が一般的で、規則的に通えることが求められます。
一方、就労継続支援B型は雇用契約を結ばないサービスです。働いた分に応じて「工賃」が支払われますが、最低賃金の適用はありません。週に何日通うか、1日何時間働くかを体調や状態に合わせて柔軟に調整できるため、規則的に通うことが難しい方や、まず社会との接点を持ちたい方に向いています。
A型とB型の賃金・工賃の目安
厚生労働省が公表している令和4年度のデータでは、就労継続支援A型の平均賃金(月額)は約83,551円、就労継続支援B型の平均工賃(月額)は17,031円です。
A型は雇用契約に基づく賃金のため、一定の金額が保障されます。B型は作業量や通い日数によって工賃が変動します。なお、これらはあくまで全国平均であり、事業所や地域によって実際の水準は異なります。最新の数値は厚生労働省の「令和〇年度工賃(賃金)の実績について」のページでご確認ください。
どちらを選ぶか判断する目安
軽度〜中等度の知的障害のある方で、規則的に通える状態であればA型が選択肢に入ります。中等度〜重度で、通い日数や時間を柔軟にしたい場合はB型が向いています。重度の知的障害のある方でもB型を利用して、軽作業を通じて賃金を得ることができます。
また、B型を利用しながら体力や生活リズムを整え、将来的にA型や一般就労を目指すというステップアップの流れも、一定数の方が選んでいます。自分の状態に合うサービスを選ぶことが、長く続けるためのポイントです。
| 項目 | 就労継続支援A型 | 就労継続支援B型 |
|---|---|---|
| 雇用契約 | あり(最低賃金適用) | なし(工賃制) |
| 令和4年度平均報酬 | 月額約83,551円 | 月額約17,031円 |
| 通い方の柔軟性 | 週5日・一定時間が基本 | 日数・時間を柔軟に調整可能 |
| 対象の目安 | 軽度〜中等度 | 中等度〜重度(軽度も可) |
| 利用期間の上限 | なし(65歳以上も条件付きで可) | なし(年齢制限なし) |
- A型は雇用契約あり・最低賃金適用、B型は雇用契約なし・工賃制です。
- 令和4年度平均ではA型月額約83,551円、B型月額約17,031円です(厚生労働省データ)。
- B型は通い日数・時間の柔軟性が高く、重度の方にも利用できます。
- どちらも利用期間に上限はありません。
利用料・費用の仕組みと実際の負担感
作業所(就労継続支援A型・B型)を利用する際には、原則としてサービス費用の1割を利用者が負担します。ただし、世帯の収入に応じて上限額が設定されており、多くの方が実質的に無料で利用できる仕組みになっています。
利用料の上限額と所得区分
障害福祉サービスの利用者負担は、世帯の収入によって4つの区分に分かれています。生活保護を受けている世帯と、市町村民税が非課税となる世帯(低所得)は上限額が0円、つまり無料です。
厚生労働省の資料では、令和4年10月時点で就労継続支援を含む障害福祉サービスの利用者の約92.7%が生活保護または低所得の区分に該当し、実質的に無料で利用していることが示されています。一般1・一般2の区分に当てはまる場合は月額9,300円または37,200円が上限となります。詳しい区分の確認は、各市区町村の障害福祉窓口にご相談ください。
利用料以外にかかる費用
利用料とは別に、昼食代や交通費が必要になる場合があります。昼食については、事業所がメニューを提供しているところもあり、A型では約4割、B型では約7割の事業所が食事を提供しているとされています(厚生労働省平成30年度調査)。
低所得の方を対象に、食費の自己負担を軽減できる制度があります。食材料費相当のみの負担となるため、食事を提供している事業所であれば昼食代をかなり抑えられます。交通費の補助については事業所によって異なるため、見学時に確認しておくとよいでしょう。
工賃が利用料を下回るケースへの備え
B型では、1か月の工賃が利用料を下回るケースがあります。これは制度上起こりうることで、特に利用日数が少ない月や、体調不良で通えなかった月に生じやすいです。
一方、前述のように多くの方が利用料は無料(上限額0円)に該当するため、工賃が少なくても利用料の心配が不要な場合がほとんどです。障害基礎年金と組み合わせながら生活を支えている方も多く、具体的な生活設計については自治体の障害福祉課や相談支援専門員に相談するのが確実です。
昼食代・交通費は別途かかる場合があります。事業所ごとに異なるため、見学時に確認しましょう。
- 利用者負担は原則1割。低所得・生活保護世帯は上限0円(無料)です。
- 約92.7%の利用者が実質無料で利用しています(令和4年10月時点)。
- 昼食代・交通費は別途確認が必要で、減免制度もあります。
- 具体的な負担額は、市区町村の障害福祉窓口で確認できます。
知的障害のある方が利用できる仕事の内容と向き不向き
就労継続支援A型・B型では、どのような仕事が行われているのでしょうか。知的障害の特性に合わせた仕事選びのポイントを、厚生労働省のデータや事業所の実例をもとに整理します。
B型・A型でよく行われている作業の種類
厚生労働省による障害者雇用実態調査では、知的障害のある方が多く従事している職業として、生産工程の職業(製造業など)が最も多く、次いでサービス業、運搬・清掃・梱包などが続いています。
事業所によって異なりますが、B型では部品の組み立てや袋詰め、農作業、パンや菓子の製造といった軽作業が中心です。A型では軽作業に加え、データ入力、動画編集、カフェ・清掃業務など、より多様な仕事内容が増えてきています。手順が決まっていて繰り返しの作業が多いほど、知的障害のある方にとって取り組みやすいとされています。
知的障害のある方に向く仕事・向かない仕事
知的障害のある方は、その場ごとに判断を変えることや、複数の指示を同時にこなすことが難しいケースがあります。そのため、手順が固定されていて、一度覚えれば繰り返せる作業が向いているとされています。
接客や電話対応のように、相手の話を聞きながら瞬時に判断・対応が求められる業務は、負担になることがあります。ただし、これは一概には言えず、興味のある分野や本人の特性によって大きく異なります。見学や体験利用を通じて実際の作業環境を確かめることが、ミスマッチを防ぐうえで効果的です。
障害の程度と事業所選びの関係
軽度・中等度の知的障害のある方は、就労継続支援A型のほか、就労移行支援を経て一般就労を目指すことも可能です。中等度・重度の方は、就労継続支援B型で自分のペースに合わせた作業に取り組むことが多くなります。重度の方も、短時間から通い始めて作業に慣れていくという進め方が一般的です。
大切なのは、障害の「程度」だけで判断せず、本人の体調・生活リズム・興味のある作業などをもとに総合的に選ぶことです。見学時に「どんな作業があるか」「スタッフの関わり方」「1日の流れ」を確認しておくと、入所後のギャップを減らせます。
- B型は軽作業中心、A型はデータ入力や飲食など多様な仕事内容もあります。
- 手順が固定された繰り返し作業が、知的障害のある方に向きやすい傾向があります。
- 障害の程度だけでなく、体調・生活リズム・興味を総合して選ぶことが大切です。
- 見学・体験利用でミスマッチを防ぐことができます。
事業所の探し方と利用開始までの流れ
作業所(就労継続支援A型・B型)を利用するには、受給者証の取得や市区町村への申請が必要です。最初のステップさえ把握しておけば、手続きの流れは順を追って進められます。
事業所を探す主な方法
事業所を探すには、WAM NET(福祉医療機構が運営する障害福祉サービス等情報公表システム)で全国の事業所を検索できます。地域・サービス種別・対応している障害種別などを条件に絞り込めるため、知的障害のある方が対応している事業所を効率よく確認できます。
そのほか、市区町村の障害福祉課や相談支援事業所に相談すると、地域の事業所情報を案内してもらえることがあります。事業所を2〜3か所見学して比較することで、自分に合った環境を選びやすくなります。
利用申請から受給者証取得までの流れ
作業所を利用するには、障害福祉サービス受給者証(受給者証)が必要です。受給者証の取得には、①医師に通所してよいか相談する、②市区町村の障害福祉窓口に申請する、③審査・支給決定を経て受給者証が発行される、という流れがあります。
申請から受給者証の発行までには、通常約2か月程度かかるとされています。事前に見学や問い合わせを進めておくと、受給者証が届いたあとスムーズに通所を始めやすくなります。
就労選択支援・アセスメントとの関係
2025年10月から就労選択支援が本格運用されており、就労移行支援事業所等による就労アセスメントを活用することで、自分の特性に合ったサービスを選びやすくなっています。特に、特別支援学校を卒業してすぐにB型を利用する場合は、在学中に就労アセスメントを受けることが必要とされています。
就労選択支援やアセスメントの具体的な手続きは、各市区町村や相談支援事業所で確認できます。現在の制度の詳細は、厚生労働省の「障害者の就労支援対策の状況」のページもあわせてご参照ください。
医師への相談 → 市区町村窓口への申請 → 審査・発行 → 事業所と契約 という流れで進みます。
- WAM NETで全国の事業所を条件検索できます。
- 受給者証の取得が利用開始の前提で、申請から約2か月かかります。
- 市区町村の障害福祉課や相談支援事業所に相談することで、地域の情報を得やすくなります。
- 2025年10月から就労選択支援が本格運用されています。
まとめ
知的障害のある方が通える作業所には、就労継続支援A型と就労継続支援B型があり、雇用契約の有無や工賃の水準、通い方の柔軟性がそれぞれ異なります。障害の程度や生活リズム、体調に合わせてどちらを選ぶかを判断することが、長く続けるための土台になります。
まずは市区町村の障害福祉窓口や相談支援事業所に相談し、地域の事業所情報を集めてみましょう。受給者証の申請から発行まで約2か月かかるため、見学や問い合わせは早めに始めておくのが安心です。
作業所選びに「正解」はひとつではありません。見学や体験利用を重ねながら、自分や家族が安心して通い続けられる場所を見つけていただければと思います。

