就労継続支援B型は、2か所の事業所を同時に利用できます。「今の作業所だけでは物足りない」「別の仕事内容も経験したい」と感じたとき、制度の範囲内で別の事業所を追加することが可能です。ただし、利用にあたっては守らなければならないルールがあり、事前に把握しておくことが大切です。
障害者総合支援法に基づく介護給付費等に係る支給決定事務等の事務処理要領では、市町村が特に必要と認める場合には複数の日中活動サービスを組み合わせて支給決定を行うことができると整理されています。就労継続支援B型同士の2か所利用はこの考え方に沿ったもので、多くの自治体で認められています。
この記事では、2か所利用の基本的なルール、手続きの流れ、メリットとデメリット、料金の考え方、他サービスとの組み合わせの可否まで、制度の仕組みに沿って順番に整理します。
就労継続支援B型を2か所利用できる仕組みと基本ルール
就労継続支援B型を2か所利用することは、制度上可能です。まず、どのようなルールのもとで認められているのかを把握しておくと、実際の利用計画が立てやすくなります。
2か所利用が認められている制度的な根拠
障害者総合支援法では、障がいのある方が適切な就労機会と生産活動の場を継続的に確保できるよう、複数の日中活動サービスを組み合わせて利用することを認めています。就労継続支援B型は雇用契約を結ばないサービスであるため、複数の事業所と契約することが制度上禁じられていません。
ただし、「市町村が特に必要と認める場合」という条件がついており、自治体によって判断が異なるケースがあります。お住まいの市区町村の障害福祉窓口に事前に確認しておくと安心です。
同日利用が禁止されている理由
2か所利用を検討するうえで最も重要なルールが、同一日に複数の事業所を利用できないという制限です。就労継続支援B型をはじめとする日中活動サービスの報酬は、1日単位で算定される仕組みになっています。
同じ利用者が同日に2つの事業所を利用した場合、行政から両方の事業所へ重複して給付金が支払われることになります。この事態を防ぐため、1日に利用できる事業所は1か所のみと定められています。たとえば「午前中に事業所A、午後から事業所B」という利用の仕方はできません。
受給者証の支給量は2か所合算で管理される
2か所を利用する場合でも、障害福祉サービス受給者証に記載されている支給量(利用できる日数)の上限は変わりません。就労継続支援など日中活動サービスの支給量は、各月の日数から8日を引いた日数が原則の上限とされています(例:31日の月であれば最大23日)。
2か所を合わせた合計利用日数がこの支給量を超えないよう管理する必要があります。2か所を利用するからといって1か月に使える日数が増えるわけではない点を、あらかじめ理解しておきましょう。
・同日利用は制度上禁止(午前・午後で分けることも不可)
・利用日数は2か所合計で受給者証の支給量以内に収める
・曜日を分けて利用するスケジュール管理が必要
・自治体によって扱いが異なる場合がある
- 同日利用は制度上禁止されており、曜日を分けてスケジュールを組む必要がある
- 支給量(利用上限日数)は2か所合計で管理されるため、増やせるわけではない
- 自治体によって判断が異なるため、お住まいの市区町村への事前確認が重要
2か所利用を始めるための手続きの流れ
2か所利用を始めるにあたっては、現在の利用状況や受給者証の内容を踏まえた手続きが必要です。初めて2か所目を追加する場合と、すでに支給決定を受けている場合で、対応の手順が少し異なります。
現在利用中の事業所と相談支援専門員への事前連絡
まず、現在通っている事業所のスタッフに「2か所目を検討している」と伝えることが大切です。支援計画への影響や、スケジュール調整が必要になるためです。相談支援専門員(サービス等利用計画を作成・管理する専門職)がついている場合は、担当者にも同様に連絡を入れておきましょう。
支援計画を更新する必要が生じる場合もあるため、早めに相談することで手続きがスムーズになります。相談支援専門員がついていない場合は、自治体のセルフプランで対応するか、新たに相談支援事業所への依頼を検討するとよいでしょう。
2か所目の事業所との契約手続き
追加で通いたい事業所が決まったら、その事業所に「2か所利用を希望している」旨を伝えたうえで、利用登録の手続きを進めます。事業所側が案内に従って受け入れ準備を進めてくれます。
すでに就労継続支援B型の支給決定が出ており、支給量に余裕がある場合は、市区町村への新たな審査が不要なケースが多いです。ただし自治体によって扱いが異なるため、事業所スタッフに確認しながら進めるとよいでしょう。
受給者証の変更申請が必要になる場合

現在の受給者証に2か所目の事業所が記載されていない場合、変更申請が必要です。お住まいの市区町村の障害福祉窓口で手続きを行います。申請から受給者証が更新されるまでには、自治体によって2週間から1か月程度かかる場合があります。
体験利用として先に2か所目の事業所に通い始め、その間に手続きを進めるケースもあります。事業所ごとの対応方針が異なるため、具体的な手順は利用予定の事業所や窓口に確認するのが確実です。
| 手続きの段階 | 内容 |
|---|---|
| 事前連絡 | 現在の事業所・相談支援専門員へ報告 |
| 事業所選定 | 見学・体験利用で2か所目を決める |
| 利用登録 | 2か所目の事業所と契約 |
| 受給者証の確認・更新 | 必要に応じて市区町村窓口で変更申請 |
- 現在の事業所と相談支援専門員への事前連絡が手続きの起点になる
- すでに支給決定が出ていれば、新たな審査なしで追加できる場合が多い
- 受給者証への追記が必要な場合は市区町村窓口で変更申請を行う
2か所利用のメリットとデメリット
2か所の事業所を利用することには、活動の幅が広がるという利点がある一方、スケジュール管理や環境の変化に伴う負担も生じます。どちらの面も事前に把握しておくと、自分に合った利用の仕方を選びやすくなります。
メリット:異なる作業・支援内容を経験できる
事業所によって扱う作業の種類は異なります。軽作業中心の事業所と、パソコン作業や資格取得支援を行う事業所を組み合わせることで、幅広いスキルを身につけられます。また、それぞれの事業所で出会う利用者やスタッフが異なるため、人間関係の幅も広がります。
「今の作業所の内容だけでは就労に向けたスキルが足りない」と感じている場合でも、事業所を変えずに別の学習機会を加えられる点は、大きな利点です。一方の事業所を休む場合でも、もう一方に通える選択肢があることで、規則的な生活リズムを維持しやすくなります。
デメリット:スケジュール管理と環境適応の負担
2か所を利用する場合、それぞれの事業所の通所日が重ならないよう、スケジュールの管理が必要になります。曜日や週単位で事業所ごとの通所日を決め、変更が生じた場合にも双方の事業所へ連絡を入れる手間が増えます。
また、事業所ごとにルールや雰囲気、スタッフとの関係性が異なるため、環境の切り替えに負担を感じる方もいます。体調や障がいの特性に合わせて、無理のない範囲でペースを決めることが大切です。
料金は基本的に変わらない
就労継続支援B型の利用料は、世帯収入に応じた月額負担上限額が設定されており、2か所利用しても上限を超えて負担が増えることはありません。住民税非課税世帯など多くの方は利用料が0円のため、2か所目を追加しても費用面での変化はありません。
複数の事業所を利用する場合、事業所間で利用者負担額を合算する「上限額管理」という仕組みが適用されることがあります。利用者側で特別な手続きをする必要はなく、事業所側が調整します。
・住民税非課税世帯:0円のまま変わらない
・住民税課税世帯(本人年収80万円以下程度):月額上限9,300円
・住民税課税世帯(それ以上):月額上限37,200円
※いずれも上限額を超えて請求されることはない
- 2か所利用でも月額負担上限額は変わらず、多くの方は引き続き無料で利用できる
- スケジュール管理は必要だが、事業所スタッフが調整を手伝ってくれる場合もある
- 環境の切り替えに不安を感じる場合は、無理のないペースで慣らすとよい
他サービスとの組み合わせはどこまで可能か
就労継続支援B型の2か所利用が認められているとはいえ、組み合わせるサービスの種類によっては認められないケースもあります。どのサービスと併用できるかは、制度の仕組みで整理されています。
就労継続支援B型同士の組み合わせ
B型事業所同士を2か所利用することは、多くの自治体で認められています。ただし、自治体によっては掛け持ち自体を認めていない場合もあるため、事前にお住まいの市区町村の障害福祉窓口へ確認することを勧めします。
同日利用の禁止と支給量の範囲内での利用という2つのルールを守ることが前提です。この点を踏まえたうえで、両方の事業所と合意したスケジュールを作成してから通所を始めましょう。
生活介護・自立訓練との組み合わせ
就労継続支援B型と生活介護の組み合わせは、自治体が認めた場合に可能とされています。重度の障がいにより毎日の就労が難しい方が、生活介護の日と就労継続支援B型の日を分けて利用する形が想定されています。
自立訓練についても、一部の自治体では就労継続支援B型との組み合わせを認めています。いずれも同日利用は禁止されており、利用日をずらすことが必要です。詳細な可否はお住まいの市区町村で確認してください。
就労継続支援A型・就労移行支援との組み合わせは原則不可
就労継続支援A型は雇用契約を結ぶサービスであり、すでに就労環境が確保されているとみなされるため、B型との併用は一般的に想定されていません。厚生労働省の事務処理要領でも明確な禁止はされていませんが、多くの自治体で認められていないのが実情です。
就労移行支援との組み合わせも同様で、集中的に就労訓練を受けるサービスの性質上、他の日中活動サービスとの併用は原則として想定されていません。例外的に認められる場合があるとすれば、市町村が特に必要と判断した場合に限られます。気になる方はお住まいの市区町村窓口に相談してください。
| 組み合わせ | 可否の目安 |
|---|---|
| B型×B型 | 多くの自治体で可(同日不可) |
| B型×生活介護 | 自治体が認める場合に可 |
| B型×自立訓練 | 一部自治体で可 |
| B型×就労移行支援 | 原則不可(例外あり) |
| B型×就労継続支援A型 | 原則不可(例外あり) |
- B型同士の2か所利用は多くの自治体で認められているが、事前確認が必要
- 生活介護や自立訓練との組み合わせは自治体判断による
- A型や就労移行支援との組み合わせは原則として想定されていない
2か所利用を実際に続けるためのポイント
制度上の条件をクリアしたあとも、2か所利用を無理なく続けるためには、スケジュール管理と体調面への配慮が大切です。実際の運用に役立つ視点を整理します。
スケジュールの組み方と事業所への共有
2か所利用では、どの曜日にどちらの事業所へ通うかを事前に決め、双方の事業所に共有しておくことが基本です。「月・水・金はA事業所、火・木はB事業所」といった曜日固定のスケジュールが、管理しやすくトラブルも起きにくい形です。
事業所によっては、スケジュール管理のサポートを行っているところもあります。事前に対応可能かどうか確認してみると、利用の計画が立てやすくなります。
体調に合わせた通所頻度の調整
2か所利用をしているからといって、無理に毎日通所する必要はありません。受給者証の支給量の範囲内であれば、週に何日ずつ通うかは利用者本人の体調や状況に合わせて調整できます。
体調が優れない日や環境の変化に負担を感じたときは、事業所に連絡して休むことができます。就労継続支援B型は雇用契約を結ばないサービスであるため、欠席に対するペナルティは基本的にありません。無理なく通える範囲を見極めることが、長く利用を続けるうえで重要です。
サービス等利用計画の見直しのタイミングを活用する
サービス等利用計画は定期的にモニタリングが行われ、利用状況の確認と計画の見直しが実施されます。このタイミングを活用して、2か所利用の効果や課題を相談支援専門員と振り返ることができます。
通所頻度や作業内容の変化、新たに挑戦したい目標などを共有し、必要であれば計画を調整してもらいましょう。相談支援専門員がいない場合は、各事業所のスタッフや自治体の障害福祉担当窓口へ相談することも一つの方法です。
Q. 2か所目の事業所で体験利用してから決めることはできますか?
A. 多くの事業所で体験利用を受け付けています。正式な契約前に通所感を確かめたい場合は、見学と体験利用を先に行うとよいでしょう。事業所によって対応が異なるため、直接問い合わせてみてください。
Q. 相談支援専門員がいない場合でも2か所利用できますか?
A. 可能です。相談支援専門員がいない場合は、自分でサービス等利用計画(セルフプラン)を作成するか、自治体窓口で相談しながら手続きを進めます。事業所スタッフも手続きのサポートをしてくれます。
- スケジュールは曜日固定が管理しやすく、両事業所への事前共有が大切
- 無理なく続けることを優先し、体調に合わせた通所頻度の調整が可能
- モニタリングの機会を使って計画を定期的に見直すと、利用の質が上がりやすい
まとめ
就労継続支援B型は、制度の条件を満たせば2か所の事業所を並行して利用できます。同日利用の禁止と受給者証の支給量の範囲内という2つのルールを守ったうえで、曜日ごとに通所先を分けることが基本的な利用の形です。
2か所目を追加する場合は、まず現在の事業所や相談支援専門員へ連絡し、見学・体験利用を経て2か所目の事業所を決めるとスムーズです。受給者証の変更が必要な場合は市区町村の窓口で手続きを行いましょう。
2か所利用が自分に合うかどうかは、通所のペースや体調の状況によって変わります。まずはお住まいの市区町村の障害福祉窓口か、現在通っている事業所のスタッフへ相談してみてください。あなたに合ったペースで、できることの幅を少しずつ広げていきましょう。

