障がいのある高校生にとって、卒業後の就労をどう準備すればよいかは、早めに整理しておくべきテーマです。就労移行支援やハローワーク、就労選択支援など、利用できる制度は複数ありますが、それぞれに年齢条件や在学中の利用可否があり、混同されやすい状況があります。
この記事では、就労支援と高校生という視点から、在学中に利用できるサービスと利用が難しいサービスの違い、卒業後に向けた準備の進め方、保護者や学校と連携する際に押さえておくとよい制度の基本を整理します。
卒業後の働き方を考えはじめたばかりの方にとって、最初の判断軸として活用してください。
就労支援と高校生の関係を整理する前に知っておくこと
就労支援制度にはいくつかの種類があり、それぞれ利用対象年齢や在学中の利用可否が異なります。どのサービスが高校生に関係するかを整理しておくと、進路検討の際に混乱しにくくなります。
障がいのある高校生が活用できる就労支援の全体像
障がいのある高校生に関係する就労支援には、大きく分けて「在学中から関われるもの」と「卒業後に本格利用するもの」の2種類があります。在学中から関われるものとしては、特別支援学校や通常の高校と連携したハローワークによる就職相談、就労移行支援事業所への見学・体験、2025年10月から始まった就労選択支援などがあります。
一方、就労移行支援や就労継続支援A型・B型といった障害福祉サービスの本格的な利用は、原則として卒業後に行うことが想定されています。在学中の利用が難しい理由は、これらのサービスが日中の時間帯に訓練を提供する仕組みであるためで、全日制高校に通いながら並行して通所することは現実的ではありません。
どのタイミングで何ができるかを把握しておくことで、卒業後にあわてずに行動できます。
就労移行支援の年齢条件と高校生の位置づけ
就労移行支援は、障害者総合支援法に基づく就労系障害福祉サービスです。障害や難病のある方が一般企業への就職を目指すための訓練や職場体験を提供するサービスで、原則として18歳以上65歳未満の方が対象となります。
高校生の場合、多くは17歳または18歳に達する年度に在籍しています。18歳に達していても在学中は原則として利用対象外とされており、卒業と同時に利用を開始するケースが一般的です。LITALICOワークスをはじめとする複数の事業所では、夏休みや冬休みに体験利用を行い、卒業後にスムーズに通い始めるという流れを案内しています。
なお、義務教育を修了しており市区町村が就労準備の必要性を認めた場合には、例外的に18歳未満でも利用が認められることがあります。ただし、これは通常のケースではなく、自治体の個別判断によります。
15歳以上の障害児が利用できる特例的なルール
厚生労働省の資料では、15歳以上の障害児については、児童相談所長が「障害者のサービスを受けることが適当」と認め、その旨を市町村長に通知した場合に限り、就労移行支援や就労継続支援B型などの訓練等給付費の対象とみなす規定があります。
実際にこの特例を活用している利用者は、就労移行支援全体の約1%程度とされており、件数としては多くありません。対象となるのは、療育手帳や精神障害者保健福祉手帳を持つ方、または医師による医学的診断がある方などです。手帳がない場合でも、支援の必要性が認められれば対象となる場合があります。
この特例を検討したい場合は、市区町村の障害福祉窓口または児童相談所に相談することから始めます。
・原則:18歳以上65歳未満
・特例:15歳以上で児童相談所長の許可がある場合は利用可
・高校在学中の利用:全日制は原則として難しい。通信制・定時制は可能性あり
・利用者の年代:18歳未満は全体の約1%
- >就労移行支援は原則18歳以上が対象だが、特例的に15歳から利用できる場合がある>全日制高校の在学中は日中の訓練との両立が難しく、利用実績も少ない>通信制・定時制高校の場合は日中に時間が確保しやすいため、利用の可能性がある>特例利用を検討する場合は、市区町村の障害福祉窓口か児童相談所に相談する
通信制・定時制高校の生徒が就労支援を利用する場合
全日制高校の生徒と異なり、通信制や夜間の定時制高校に通う生徒は日中に時間を確保しやすい状況にあります。このことが、就労移行支援や就労継続支援B型などの福祉サービスを在学中に利用できる可能性につながります。
通信制高校の場合に利用の可能性が高まる理由
通信制高校は、スクーリング(登校日)が月に数回程度であることが多く、日中の大半を自由に使える生徒が多い点が特徴です。この条件が、障害福祉サービスの利用要件と合致しやすいとされています。
就労移行支援や就労継続支援B型は、原則として日中(平日の一定時間帯)に通所して訓練を受ける形式です。全日制高校に通う生徒が同じ時間帯に授業を受けている場合と異なり、通信制高校の生徒は通所できる時間帯を確保しやすいため、自治体の判断によっては在学中の利用が認められるケースがあります。
利用を検討する場合は、在籍する学校の担当者と、市区町村の障害福祉窓口の両方に事前に相談しておくとよいでしょう。
定時制高校(夜間)の場合の考え方
夜間の定時制高校に通う生徒も、昼間の時間帯を就労支援の訓練に充てられる可能性があります。ただし、授業と通所を並行することは体力的・精神的に負担が大きくなるため、本人の状態や体調を十分に考慮することが必要です。
市区町村の福祉窓口では、本人の障害の状況や通学スケジュールを踏まえたうえで、サービスの利用可否を個別に判断します。「利用できるかもしれない」という段階では、まず窓口に状況を伝えて相談することが出発点となります。
学校側との連携も重要で、就労移行支援事業所と学校の担任教師が情報を共有することで、無理のない支援計画が立てやすくなります。
就労継続支援B型の在学中利用について
就労継続支援B型は、一般就労が難しい障害のある方が福祉的就労として作業に取り組むサービスです。就労移行支援と同様に、15歳以上で児童相談所長の許可がある場合には、障害児も対象とみなして利用することが可能です。
ただし、障害者総合支援法の規定上、18歳未満であっても障害児ではなく障害者とみなされるため、利用料の計算には18歳以上と同じ基準が適用される点に注意が必要です。具体的には、本人および配偶者の収入を基準に利用者負担上限月額が算定されます(18歳未満の場合は保護者の収入が基準となる場合もあるため、窓口で確認することをお勧めします)。
・在籍する学校のスクーリング日程と、訓練の通所時間帯が重なっていないか確認する
・市区町村の障害福祉窓口に在学中の利用可否を問い合わせる
・学校の担任や特別支援コーディネーターと情報を共有しておく
- >通信制高校は登校日が少なく、日中に時間を確保しやすいため就労支援との両立が検討しやすい>夜間定時制高校も昼間の通所が可能だが、体調への配慮が必要>利用可否は最終的に市区町村が個別に判断する>就労継続支援B型も15歳以上で特例許可があれば在学中の利用が可能
在学中からできる就労準備と卒業後への橋渡し
就労移行支援の本格利用は卒業後が基本ですが、在学中から動き出せることは複数あります。事業所への見学・体験、ハローワークへの相談、就労選択支援の活用など、卒業後に向けた準備を在学中に進めておくことで、スムーズに支援につながりやすくなります。
在学中に就労移行支援事業所を見学・体験する
就労移行支援の本格利用は卒業後であっても、在学中の見学や体験利用は可能です。夏休みや冬休みなど長期休暇の期間を活用して事業所を訪問し、実際の雰囲気や訓練内容を確認しておくことで、卒業後にどの事業所を選ぶかの判断材料が増えます。
複数の事業所を比較することも大切で、通所しやすい立地、得意な訓練分野(PCスキル・コミュニケーション訓練など)、スタッフとの相性など、見学時に確認できる点は多くあります。事業所によっては保護者同伴での見学も受け入れており、家族で情報を共有する機会にもなります。
WAM NET(障害福祉サービス等情報)では、全国の就労移行支援事業所を検索できます。通いやすい地域の事業所を調べる際に活用するとよいでしょう。
ハローワークによる新規学卒障がい者への支援

ハローワーク(公共職業安定所)では、障がいのある新規学卒者に向けた就職支援を行っています。特別支援学校との連携が整備されており、在学中から求人情報の提供や就職相談、職場実習のあっせんを受けることができます。
厚生労働省が公開している「新規学卒障害者の採用までの流れ」では、学校を通じた求人申込から採用に至るまでのプロセスが整理されています。一般就労を希望する高校生(特に特別支援学校の生徒)は、学校の就労担当教師とハローワークの担当者が連携して動くことが多く、在学中の早い段階から担任や進路担当に相談しておくことが出発点となります。
障害者専用求人への応募には、原則として障害者手帳または医師の診断書が必要です。手帳の取得状況や就職活動の時期については、学校と保護者と本人の三者で確認しておくとよいでしょう。
2025年10月開始の就労選択支援とは
就労選択支援は、2025年10月から始まった新しい障害福祉サービスです。障害のある方の特性や業務スキル、就労に関する希望を専門的なアセスメントを通じて整理し、どの就労系サービスが本人に合っているかを判断するためのサービスです。原則として1か月程度の短期間で、面談・検査・模擬就労などを通じて現状と課題をまとめます。
特別支援学校に在学している生徒も就労選択支援の利用対象に含まれており、卒業後の進路選択のために在学中に複数回利用することや、職場実習のタイミングで利用することが可能とされています。厚生労働省の資料では、授業の時間帯を活用して卒業後の就労に向けたアセスメントを行うサービスと位置づけられています。
2025年10月以降、新たに就労継続支援B型の利用を希望する場合は、就労選択支援の受講が原則として必要となりました。この点は、卒業後に福祉的就労を検討する方にとって特に確認が必要な変更点です。
| 対応 | 対象 | 時期 | 特記事項 |
|---|---|---|---|
| 就労移行支援事業所の見学・体験 | 高校生全般 | 夏休み・冬休み | 本格利用は卒業後 |
| ハローワークへの就職相談 | 特別支援学校生徒中心 | 在学中から可能 | 学校経由で連携が多い |
| 就労選択支援 | 特別支援学校在学生も対象 | 在学中から利用可 | 2025年10月開始の新サービス |
- >在学中の見学・体験は就労移行支援でも可能で、長期休暇を活用するとよい>ハローワークは学校との連携で在学中から就職相談を受けられる>就労選択支援は2025年10月開始の新サービスで、特別支援学校在学生も利用できる>就労継続支援B型の新規利用には就労選択支援の受講が原則として必要になった
卒業後の就労支援サービスの選び方と利用の流れ
高校を卒業した後、どのサービスを選ぶかは本人の状況や目指す方向によって異なります。就労移行支援・就労継続支援A型・就労継続支援B型の違いを把握し、自分の状態に合った選択肢を検討することが大切です。
就労移行支援・A型・B型の違いと選択の目安
就労移行支援は、一般企業への就職を目指す方を対象に、最長2年間(認められた場合は最大1年延長)の訓練と就職活動のサポートを提供するサービスです。対象は一般就労を希望する18歳以上65歳未満の障がいのある方で、利用期間内に就職を実現することを目標とします。
就労継続支援A型は、一般就労が難しい方が、事業所と雇用契約を結びながら働くサービスです。最低賃金が適用される点が特徴で、一般就労と福祉的就労の中間に位置する選択肢といえます。就労継続支援B型は、雇用契約を結ばずに就労訓練を行うサービスで、体調や障害の状態に合わせてペースを調整しながら働くことができます。工賃の水準はA型より低くなりますが、利用のハードルは比較的低く設定されています。
どのサービスが適しているかは、一般就労を視野に入れているか、週に何日通所できるか、体調の安定度などによって判断が変わります。就労選択支援を経由することで、客観的なアセスメントに基づいた選択肢の整理ができます。
受給者証の申請から利用開始までの流れ
就労移行支援をはじめとする障害福祉サービスを利用するには、「障害福祉サービス受給者証」が必要です。受給者証は、住所地の市区町村窓口(障害福祉課や福祉事務所など)に申請することで交付されます。
申請から交付までの大まかな流れは、(1)市区町村窓口への相談・申請、(2)サービス等利用計画案の作成(相談支援専門員へ依頼または本人・家族が作成)、(3)自治体による審査・認定調査、(4)受給者証の交付(1週間〜2か月程度)、(5)事業所との契約・利用開始、という順番です。卒業後に時間のロスなく利用を始めるためには、在学中のうちに相談支援専門員や窓口に相談し、事前準備を進めておくことが大切です。
なお、利用者負担額は原則として1割負担ですが、世帯の収入状況によって負担上限月額が定められており、住民税非課税世帯の場合は負担がゼロになります。詳しい計算方法は、お住まいの市区町村の障害福祉窓口で確認できます。
特別支援学校卒業後の進路と就労支援の接続
特別支援学校高等部を卒業した後の主な進路には、一般就労(障害者雇用・一般雇用)、就労移行支援の利用、就労継続支援A型・B型の利用、生活介護などの日中活動系サービスの利用があります。厚生労働省の資料では、特別支援学校卒業後に一般就労した割合は全体の約31%とされています(文部科学省・令和元年度調査当時)。
在学中から学校のキャリア教育と地域の就労支援機関が連携し、職場実習や面接練習を進めているケースも多くあります。特別支援学校の進路担当教師は、卒業後のサービス利用に向けた相談に対応しており、就労移行支援事業所や相談支援専門員につなぐ役割も担っています。
高校卒業後に就労移行支援を利用する場合、利用期間は原則2年間です。この2年間で職業訓練・就職活動・職場定着を段階的に進めていく流れになります。期間が限られているため、どのような訓練を受けたいか、どのような仕事を目指すかを在学中から少しずつ整理しておくことが、その後の動きをスムーズにします。
A:一般企業への就職を目標にする場合は就労移行支援が適しています。体調や障害の状況から一般就労のペースに不安がある場合は就労継続支援B型から始める選択肢もあります。就労選択支援を利用すると、専門的なアセスメントをもとに選択肢を整理できます。
Q:受給者証の申請は在学中にできますか?
A:可能です。市区町村の障害福祉窓口に相談することで、在学中から手続きを進められます。卒業後にすぐ利用を開始したい場合は、在学中のうちに動き出すことをお勧めします。
- >就労移行支援は一般就労を目指す方、A型・B型は状況に応じた福祉的就労を選ぶ方が対象>サービス利用には受給者証の申請が必要で、在学中から手続きを進めることができる>特別支援学校の進路担当教師は就労支援機関との連携窓口になる>就労移行支援の利用期間は原則2年間のため、方向性を在学中から整理しておくとよい
就労支援を活用するための相談先と情報の探し方
制度の内容を理解したあとは、実際にどこに相談すればよいかを把握しておくことで、行動に移しやすくなります。自治体窓口・学校・ハローワーク・相談支援事業所など、役割の異なる複数の相談先があります。
市区町村の障害福祉窓口の役割
就労移行支援や就労選択支援などの障害福祉サービスを利用するためには、住所地の市区町村に申請が必要です。窓口の名称は自治体によって異なりますが、「障害福祉課」「福祉事務所」「障害者相談支援センター」などが該当します。
窓口では、どのサービスが利用できるかの相談から、受給者証の申請手続き、相談支援専門員の紹介まで対応しています。制度について何もわからない段階でも、「どんなサービスを使えるか相談したい」という形で問い合わせることができます。複数の支援機関とつながる出発点として、まず自治体窓口への相談が基本の入口です。
窓口への相談は、本人が直接出向くことも、保護者が代わりに相談することもできます。
学校・特別支援コーディネーターとの連携
特別支援学校には「特別支援コーディネーター」という役割を担う教員が配置されており、外部の支援機関との連絡調整を担っています。就労移行支援事業所やハローワーク、相談支援専門員との橋渡しを行うことが多く、在学中から相談できる存在です。
通常の高校に在籍する場合でも、担任教師や進路担当教師に障がいに関する就労支援の必要性を伝えておくことで、学校側が地域の支援機関や自治体と連携しやすくなります。学校と家庭が早めに情報を共有しておくことが、卒業後の準備を円滑に進めるうえで助けになります。
特別支援学校の進路指導では、学校と事業所が合同で説明会を開催したり、事業所見学を学校行事として設定したりするケースもあります。在学中の機会を積極的に活用するとよいでしょう。
WAM NETを使った事業所検索の方法
WAM NET(福祉・保健・医療情報)は、厚生労働省が運営する障害福祉サービス事業所の情報公開システムです。全国の就労移行支援事業所・就労継続支援A型・B型の事業所を、都道府県・市区町村・サービス種別などで検索できます。
各事業所の運営情報(定員数・開所日・対象障害種別など)が掲載されており、見学前に複数の事業所を比較する際に活用できます。ただし、掲載情報は事業所からの届出内容に基づくため、最新の状況は直接事業所に問い合わせて確認することをお勧めします。
WAM NET以外にも、都道府県や自治体が独自に公開している事業所一覧がある場合があります。地元の事業所を探す場合は、自治体ウェブサイトも合わせて確認するとよいでしょう。
| 相談先 | 主な役割 | 相談できる内容 |
|---|---|---|
| 市区町村の障害福祉窓口 | 申請・認定・サービス調整 | 利用可否の判断、受給者証の申請、相談支援専門員の紹介 |
| 特別支援コーディネーター(学校) | 学校と外部機関の連絡調整 | 事業所見学の手配、就労支援機関への橋渡し |
| ハローワーク | 就職相談・求人案内 | 障害者専用求人の情報提供、就職活動の進め方 |
| 相談支援事業所 | サービス等利用計画の作成支援 | サービス選びの相談、計画案の作成代行(無料) |
- >まず市区町村の障害福祉窓口に相談することが制度利用の出発点>特別支援コーディネーターは学校と支援機関の橋渡し役>WAM NETで全国の事業所を検索し、見学前の比較に活用できる>相談支援事業所では、サービス等利用計画案を無料で作成してもらえる
まとめ
就労支援と高校生の関係を整理すると、在学中にできることと卒業後に本格利用するものが明確に分かれています。全日制高校の在学中は就労移行支援の本格利用は難しいですが、見学・体験・就労選択支援の活用・ハローワークへの相談など、卒業後に向けた準備は在学中から進められます。
最初の一歩として取り組みやすいのは、在学中に市区町村の障害福祉窓口または学校の進路担当者に相談することです。卒業後に利用したいサービスの目星をつけておくことで、受給者証の申請や事業所との契約をスムーズに進められます。
制度の詳細や個別の状況については、自治体窓口や相談支援事業所に直接確認することをお勧めします。一人ひとりの障害の種別・状態・生活環境によって最適な選択肢は異なりますので、まずは気軽に相談の場に足を運んでみてください。

