障害福祉サービスを利用するとき、「毎月いくら払うことになるのか」が気になるのは当然のことです。利用者負担の金額は、サービスをどれだけ使ったかではなく、世帯の所得に応じた上限月額によって決まる仕組みになっています。
この制度は「応能負担」と呼ばれ、障害者総合支援法に基づいて設計されています。サービス費用の原則1割を利用者が負担し、残り9割は国・都道府県・市町村が分担します。ただし、1割を単純に計算した額が上限月額を下回る場合は、その低い方の金額だけを支払えばよい仕組みです。
この記事では、4区分の負担上限月額の計算方法、世帯範囲の判定ルール、食費などの実費負担、各種の減免制度まで、制度の全体像を公式情報(厚生労働省)をもとに整理します。まずは自分がどの区分に当てはまるかを確認するところから始めてみてください。
障害福祉サービスの利用者負担はどのように計算されるか
利用者負担の計算の基本は「所得区分の確認」から始まります。区分が決まれば、その月に使ったサービスの量に関わらず、上限月額以上の請求は発生しません。まず全体の流れを把握しておくとよいでしょう。
応能負担の基本原則と1割負担のしくみ
障害福祉サービスの費用は、利用者が1割を負担し、国・都道府県・市町村が9割を分担する構造です。この「1割」はあくまでも上限の計算上の出発点であり、所得区分ごとに設定された上限月額を超えた分の請求は生じません。
たとえば1日の利用料が500円で月に10日利用した場合、1割負担の計算上の合計は5,000円です。上限月額が9,300円であれば5,000円のみの支払いとなります。逆に上限月額が0円の区分(低所得・生活保護)であれば、実際の利用料は0円になります。
この仕組みにより、多くのサービスを使う方の負担が過重にならないよう設計されています。厚生労働省の公式情報によれば、2022年12月時点のデータで障害福祉サービス利用者の9割超が自己負担なしでサービスを利用しています。
4区分の負担上限月額と世帯収入の判定基準
負担上限月額は、世帯の収入状況に応じて次の4区分に分かれます。厚生労働省の公式情報(障害者の利用者負担)に記載された数値は以下のとおりです。
| 区分 | 世帯の収入状況 | 負担上限月額 |
|---|---|---|
| 生活保護 | 生活保護受給世帯 | 0円 |
| 低所得 | 市町村民税非課税世帯 | 0円 |
| 一般1 | 市町村民税課税世帯(所得割16万円未満)※入所施設・グループホーム利用者を除く | 9,300円 |
| 一般2 | 上記以外(所得割16万円以上など) | 37,200円 |
入所施設(20歳以上)またはグループホームの利用者は、市町村民税課税世帯であれば所得割の額に関わらず「一般2」(37,200円)の区分となります。通所サービスのみ利用する場合と扱いが異なるため、注意が必要です。
世帯範囲の判定ルール(18歳以上と18歳未満で異なる)
所得区分を判断するときの「世帯の範囲」は、本人の年齢によって異なります。18歳以上の障害者(施設入所の18・19歳を除く)の場合は、障害のある方本人とその配偶者のみが世帯の範囲です。親や兄弟の収入は含まれません。
障害児(施設入所の18・19歳を含む)の場合は、保護者の属する住民基本台帳上の世帯全体で判断します。同居する親の収入が影響するため、親が課税世帯であれば負担上限月額が上がる場合があります。
なお、18・19歳で施設に入所している場合は「障害児」の扱いとなり、保護者の世帯で判定されます。年齢と入所状況の組み合わせで区分の判定方法が変わるため、迷う場合は市区町村の窓口に確認するとよいでしょう。
- 利用者負担の基本は「1割負担・応能負担」で、サービス量ではなく所得で決まる
- 負担上限月額は4区分(0円・0円・9,300円・37,200円)
- 入所施設・グループホーム利用者は課税世帯であれば一般2(37,200円)が適用される
- 18歳以上は本人と配偶者のみが世帯範囲。親の収入は含まない
- 低所得(市町村民税非課税世帯)なら自己負担は0円
所得区分が決まるタイミングと上限管理票の役割
「自分がどの区分になるか」は毎年変わる可能性があります。区分の決定時期や上限管理の運用を理解しておくと、年度ごとの費用変動に備えやすくなります。
住民税の年度と判定タイミングの関係
負担上限月額は、その年度の住民税(市町村民税)をもとに決定されます。ただし、住民税は前年の所得をもとに計算されるため、実際には「一昨年の収入」が影響します。たとえば2025年4月から2026年3月の区分は、2024年の所得に基づく2025年度の住民税で判定されます。
また、住民税が確定していない4月から6月の期間は、前年度の住民税額による判定が使われます。就労を開始して収入が大幅に増えた年は、翌年度以降に負担区分が変わる可能性があるため、収入が変動した際は事前に市区町村窓口へ相談しておくと安心です。
区分が決定した後は、原則として年1回の見直しとなります。年度途中に収入状況が大きく変わっても、基本的にはその年度内の区分は変わりません。
上限管理票のしくみと複数サービス利用時の管理方法
複数の事業所でサービスを利用している場合、それぞれの事業所が個別に請求すると、合計が上限月額を超えてしまうことがあります。これを防ぐために使われるのが「上限管理票」です。
上限管理票は、複数の事業所のうち1つが「上限管理事業所」となり、その月の利用者負担額の合計を管理します。合計が上限月額に達した時点で、残りの事業所への自己負担は0円となる仕組みです。
上限管理を行う事業所はサービス等利用計画を作成する相談支援事業者と連携して決定されます。利用者本人が複数の事業所を使う場合は、どの事業所が上限管理を担当しているかを確認しておくとよいでしょう。
所得区分の確認と受給者証への反映
所得区分と負担上限月額は、市区町村が発行する「障害福祉サービス受給者証」に記載されます。受給者証を受け取った際は、負担上限月額の欄を確認しておくことが大切です。
区分の見直し時期になると市区町村から案内が届くことが多いですが、案内が来ない場合でも窓口に問い合わせることで現在の区分を確認できます。引っ越しや就労状況の変化があった場合は、住所地の市区町村に早めに連絡するとよいでしょう。
就労を開始・終了した年は特に区分が変わりやすい時期です。
収入に大きな変化があった場合は、年度の切り替わり前後に市区町村窓口で確認しておくと安心です。
- 区分判定の基準は「前年の所得に基づく住民税」。収入変動の影響は1年以上後に出ることがある
- 4月から6月は前年度の住民税額で判定される
- 複数の事業所を使う場合は上限管理票を活用し、合計が上限月額を超えないよう管理される
- 負担上限月額は受給者証に記載されているので要確認
食費・光熱水費などの実費負担と通所施設の特例
障害福祉サービスの自己負担は、サービス利用料の1割だけではありません。食費・光熱水費・日用品費などの「実費負担」が別途発生するケースがあります。それぞれの場面ごとのルールを確認しておきましょう。
入所施設での食費・光熱水費の実費負担と補足給付
障害者支援施設に入所している場合、食費・光熱水費は実費負担となります。施設ごとに金額が設定され、上限は54,000円とされています。ただし、低所得世帯の利用者には「補足給付」があり、食費・光熱水費を負担した後も手元に少なくとも25,000円が残るように調整されます。
補足給付の計算式は「補足給付額=55,500円-負担限度額(月額)」となっています(厚生労働省の手引きに基づく)。実際に支払う食費等が補足給付額を下回る場合は、実際にかかった費用だけの負担となります。
なお、就労等で得た収入については、24,000円までは収入として認定しない特例があります。また24,000円を超える額の30%も収入として認定しないとされており、働くことで補足給付が大幅に減らないよう配慮されています。
通所サービス利用時の食費減免(低所得・一般1)
就労移行支援や就労継続支援(A型・B型)などの通所系サービスを利用する場合、低所得や一般1(グループホーム利用者で所得割16万円未満の場合を含む)に該当する方は、食費の人件費相当分が減免されます。この減免は申請不要で自動的に適用されます。
通所施設での食費は、食材料費のみの負担となるため、実際にかかる費用のおおよそ3分の1程度の負担です。厚生労働省の情報では、月22日利用の場合に約5,100円程度が目安とされています。
一般2に該当する方は食費の全額(食材料費+人件費相当分)を実費で負担します。実際の金額は施設ごとに設定が異なるため、利用前に事業所に確認しておくとよいでしょう。
実費として別途かかる費用の種類
障害福祉サービスを利用する際には、サービス利用料・食費以外にも実費が発生することがあります。代表的なものとして、通所時の交通費、日用品費、おやつ代などが挙げられます。これらの実費は事業所ごとに異なり、契約時の重要事項説明書に記載されています。
グループホームを利用する場合は、家賃・光熱水費・食費・日用品費など生活に関わる実費全般が発生します。入居前に月々の実費総額の目安を事業所に確認し、受給者証の負担上限月額とあわせて月間の総支出を把握しておくと安心です。
また外出支援(同行援護・行動援護など)では、交通費の実費負担が発生することがあります。頻繁に外出支援を使う場合は、月々の交通費も事前に見積もっておくとよいでしょう。
- 食費・光熱水費は実費負担。低所得者には補足給付があり手元に25,000円が残るよう調整される
- 通所施設の食費は低所得・一般1なら食材料費のみ(申請不要で自動減免)
- 就労収入24,000円までは補足給付の計算上の収入と認定されない
- 交通費・日用品費・おやつ代などの実費は事業所ごとに異なる
- 月間の総支出は「上限月額+食費等の実費」で計算するとよい
グループホームの家賃助成と高額給付費の申請方法
障害福祉サービスには、負担上限月額を超えた場合や特定の生活形態の場合に適用される追加の軽減措置があります。知らずに損をしないよう、制度の存在と申請方法を把握しておきましょう。
グループホーム利用者への家賃補足給付
共同生活援助(グループホーム)を利用している方のうち、生活保護受給世帯または低所得(市町村民税非課税)世帯に該当する場合、家賃の一部について補足給付が支給されます。支給上限は利用者1人あたり月額1万円です。
家賃が1万円未満の場合は実費分が、1万円以上の場合は一律1万円が補足給付として支給されます。申請は市区町村の窓口で行い、受給者証の申請と同時に手続きすることが一般的です。
一般1・一般2の課税世帯は対象外です。また、重度障害者等包括支援の一環として提供される場合も対象に含まれます。自分が対象かどうか迷う場合は、利用中または利用予定のグループホームの担当者か、市区町村窓口に相談するとよいでしょう。
高額障害福祉サービス等給付費の申請方法
同一世帯で複数のサービスを利用していたり、介護保険サービスも併用していたりする場合、月々の利用者負担の合計が基準額(一般1・一般2は37,200円)を超えると、超えた分が「高額障害福祉サービス等給付費」として払い戻されます。支給は「償還払い」の方法で行われます。
障害者と配偶者の世帯で合算します。65歳以上になり介護保険に移行した場合、一定の要件(65歳以前の5年間に介護保険相当の障害福祉サービスを継続利用、かつ本人・配偶者が非課税世帯)を満たせば「新高額障害福祉サービス等給付費」として介護保険サービスの利用者負担が軽減される制度もあります。
申請勧奨として市区町村から案内が届くことがありますが、自動的に支給されるわけではなく申請が必要です。対象と思われる場合は、市区町村の障害福祉担当窓口に問い合わせるとよいでしょう。
生活保護への移行を防ぐ最終的な軽減措置
さまざまな軽減策を適用してもなお、利用者負担や食費等の実費を支払うことで生活保護の対象となってしまう場合、生活保護の対象とならない水準まで上限月額や実費負担額がさらに引き下げられます。
この措置は「生活保護への移行防止策」と呼ばれ、障害福祉サービスを利用することで生活が苦しくなる事態を制度として防ぐものです。この水準への引き下げが必要かどうかは市区町村が判定します。
自分の収入状況で複数の減免を組み合わせてもなお不安が残る場合は、生活保護の相談窓口(市区町村の生活保護担当課)と障害福祉担当課に同時に相談することをおすすめします。
複数のサービスを利用している場合や介護保険を併用している場合は、市区町村の窓口で合算対象かどうかを確認してください。
- グループホームの生活保護・低所得世帯には月額最大1万円の家賃補足給付がある
- 世帯内の負担合計が基準額(37,200円)を超えた場合は高額給付費として償還払いで戻る
- 65歳以降に介護保険に移行した場合の新高額給付費の制度もある
- 軽減後も生活保護水準を下回る場合はさらに負担額が引き下げられる
- いずれも申請が必要。案内を待たず積極的に窓口に問い合わせるとよい
減免申請の手順と窓口への相談のすすめ方
利用者負担の軽減制度は、申請しなければ自動的に適用されないものが多くあります。どこに、どのような書類を持参して申請すればよいかを事前に確認しておくと、手続きがスムーズです。
申請先と主な必要書類の確認方法
障害福祉サービスの利用者負担に関する申請は、原則として居住地の市区町村(障害福祉担当窓口)で行います。受給者証の申請・更新時に、負担上限月額の認定申請や各種減免申請を同時に行うことが多いため、受給者証の更新時期に合わせて確認するとよいでしょう。
必要書類は申請の種類や市区町村によって異なりますが、一般的に、身元確認書類・障害福祉サービス受給者証・マイナンバー(個人番号)カードまたは通知カード・世帯の課税状況がわかる書類(非課税証明書など)が求められます。非課税証明書は市区町村で1通200〜300円程度で発行できます。
補足給付や高額障害福祉サービス等給付費など減免の種類によっては専用の申請書が必要です。窓口に問い合わせる際は「どの減免を申請したいか」をあらかじめ整理してから行くとスムーズです。
相談支援専門員・ケースワーカーとの連携
利用者負担の制度は複雑で、自分の区分や適用できる減免をひとりで判断するのは難しいこともあります。そのような場合は、担当の相談支援専門員に相談するのが最初のステップとして有効です。
相談支援専門員はサービス等利用計画の作成だけでなく、費用に関する制度の案内や関係機関との連絡調整も担っています。担当がいない場合は、地域の基幹相談支援センターに問い合わせることで、支援者を見つけるサポートが受けられます。
生活保護を受給中の場合は担当のケースワーカーへの相談も有効です。障害福祉サービスの利用と生活保護の兼ね合いについては、生活保護担当課と障害福祉担当課が連携して対応してくれる自治体が多いため、まず窓口に足を運んでみてください。
自治体によって異なる追加減免・独自助成の確認方法
国の制度による減免に加えて、自治体独自の追加減免や助成制度を設けているところもあります。たとえば通所の交通費補助、日用品費の一部助成などが地域によって存在します。国の制度だけで判断せず、居住地の市区町村のウェブサイトまたは窓口で独自制度の有無を確認するとよいでしょう。
自治体独自の制度は国の制度と異なり更新されるタイミングも様々です。転居した場合は、転居先の自治体で改めて独自制度を確認することをおすすめします。利用している事業所のスタッフやサービス管理責任者も、地域の助成情報に詳しいことが多いため、積極的に聞いてみてください。
- 申請先は居住地の市区町村(障害福祉担当窓口)。受給者証更新時に合わせて手続きすると効率的
- 必要書類に非課税証明書が求められることが多い(窓口で200〜300円程度で発行可)
- 相談支援専門員がいれば費用制度の整理を一緒に行ってもらえる
- 担当がいない場合は基幹相談支援センターへ連絡するとよい
- 自治体独自の追加助成がある場合もあるため、居住地の市区町村で確認する
まとめ
障害福祉サービスの利用者負担は「応能負担」が基本で、世帯の所得区分によって0円・9,300円・37,200円の上限月額が設定されています。住民税非課税世帯なら負担は0円、課税世帯でも所得割16万円未満であれば月最大9,300円が上限です。食費等の実費や複数サービス利用時の合算管理なども含めて、全体像をひとつひとつ確認することが大切です。
まず受給者証に記載されている自分の負担上限月額を確認し、適用できる減免制度(補足給付・高額給付費・家賃助成など)を申請しているかどうかをチェックしてみてください。申請が漏れていると本来払わなくてよい費用を負担し続けることになります。
制度の仕組みはわかりにくく感じる部分もありますが、相談支援専門員や市区町村の窓口が一緒に整理してくれます。ひとりで抱え込まずに、まず窓口に足を運んでみましょう。あなたに合った負担の形を、制度は必ず支えてくれます。

