ナビゲーションブックとは何か?就活で意外と見落とされる活用のタイミング

ナビゲーションブックとは何かを学び、女性が支援を受けながら将来の働き方を見つめ直している様子を表すイメージ画像

就職活動を進めるとき、自分の障害について企業にどう伝えればいいか迷う方は少なくありません。ナビゲーションブックは、障がいのある方が自分の特性・得意なこと・苦手なこと・必要な配慮をひとつにまとめた「自分説明書」です。就労移行支援事業所の多くが作成をサポートしており、面接や職場定着の場面で活用されています。

このツールは、もともと独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)の障害者職業総合センター(NIVR)が、発達障害のある方向けに開発した支援マニュアルに基づくものです。現在は発達障害に限らず、精神障害や身体障害など幅広い方が活用しています。「就労パスポート」という似たツールもありますが、両者の違いも含めて、この記事で順を追って整理します。

就労移行支援の利用を検討している方も、すでに通所中で就活に向けて準備を進めている方も、ナビゲーションブックをどう活用するか迷ったときの参考にしてください。

ナビゲーションブックとは何か、基本を押さえる

ナビゲーションブックの役割と位置づけを整理しておくと、作成の目的がはっきりします。似たツールとの違いも理解した上で取り組むと、より実用的な内容に仕上げやすくなります。

障がい特性を職場に伝えるための「自分説明書」

ナビゲーションブックは、障がいのある方が自分の特性・強み・苦手なこと・必要な配慮を文書にまとめたものです。障害者手帳には等級のみが記載されており、精神障害者保健福祉手帳の場合は等級しか書かれていないため、手帳だけでは採用担当者に個人の特性や配慮のニーズを伝えることができません。

ナビゲーションブックを一緒に提出することで、採用担当者は短い面接時間の中でも応募者のことを把握しやすくなります。また、入社後に所属部署が変わった際や支援員との情報共有にも使えるため、就職活動の場面だけでなく長期的に活用できる資料です。

書く内容に決まったフォーマットはありません。得意なこと・苦手なこと・対処法・希望する配慮などを、自分が伝えやすい形式で整理することが基本になります。

NIVRが発行した支援マニュアルが出発点

独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)の障害者職業総合センター職業センター(NIVR)は、2016年3月に「発達障害者のワークシステム・サポートプログラム ナビゲーションブックの作成と活用」(支援マニュアルNo.13)を発行しています。このマニュアルは、職業センターで実施される13週間のワークトレーニングを通じて作成・活用する方法を体系化したものです。

もともとは知的障害のない発達障害のある方を主な対象として開発されましたが、その後、就労移行支援事業所や地域障害者職業センターなど各機関でも幅広く活用されるようになっています。NIVRの公式サイトではマニュアルのPDFを無料でダウンロードできます(障害者職業総合センター NIVR「支援マニュアルNo.13」参照)。

このような背景から、ナビゲーションブックは特定企業や団体のサービスではなく、公的な職業リハビリテーションの流れに沿って普及したツールです。就労移行支援事業所での作成サポートもこの流れを受けています。

就労パスポートとの違い

ナビゲーションブックとよく比較されるツールに「就労パスポート」があります。厚生労働省が所管するJEEDが開発・作成したという点は共通ですが、対象と設計の方向性が異なります。

【ナビゲーションブックと就労パスポートの主な違い】
ナビゲーションブック:もともと発達障害のある方向けに開発。様式に縛られず本人が主体で作成する自由度の高いツール。就職活動から職場定着まで幅広く使える。
就労パスポート:精神障害のある方を主な対象に開発。支援機関のサポートを受けながら作成し、就職・職場定着に特化した指標が設定されている。厚生労働省の公式サイトからフォーマットをダウンロードできる。

どちらが合うかは障害の種類や活用シーンによって変わります。「ナビゲーションブックは自由度が高すぎて何を書けばよいか分からない」と感じる場合は、就労パスポートの様式を参考にしてみるとよいでしょう。就労移行支援事業所のスタッフに相談しながら選ぶことも一つの方法です。

「私の障害について」「自分取扱説明書」との関係

就職活動の場面では「私(わたし)の障害について」「自己紹介シート」「自分取扱説明書(トリセツ)」といった名称も使われます。これらはナビゲーションブックと近い目的で使われる資料で、A4用紙1〜2枚に障害と配慮をまとめたものが多いです。

ナビゲーションブックがより深く自己の障害や特性を掘り下げたものであるのに対し、「私の障害について」などは簡潔にまとめた略式版に近い位置づけです。就労移行支援事業所によって呼び名は異なりますが、機能としては同じ方向を向いています。在籍している事業所でどの様式を使うかを確認し、担当スタッフと一緒に内容を整理していくとよいでしょう。

  • ナビゲーションブックは自分の特性・強み・苦手・配慮事項をまとめた自分説明書である
  • NIVRが2016年に発行した支援マニュアルを起点に普及した公的なツール
  • 就労パスポートとは開発の背景・対象・様式の自由度が異なる
  • 就労移行支援事業所ではいずれのツールもスタッフのサポートを受けながら作成できる

ナビゲーションブックに書く内容と基本的な項目

何を書けばよいか迷いやすいのがナビゲーションブックの最初の壁です。決まったフォーマットはありませんが、よく使われる項目と書き方のポイントを知っておくと、作成に取り組みやすくなります。

基本的な構成項目

ナビゲーションブックに盛り込まれることが多い項目は、次のようなものです。

項目書く内容の例
障害名・状態の説明診断名、一般的な説明、自分固有の症状
得意なこと・強みコツコツとした作業が得意、数値チェックが正確 など
苦手なこと突然の予定変更が苦手、口頭指示を聞き取りにくい など
自分で対処していることタイマーを使って集中時間を管理、1時間ごとに小休憩をとる など
配慮してほしいこと指示を書面でもらえると助かる、事前に業務の範囲を明確に示してほしい など
通院・服薬の状況2週間に1度の通院、朝晩の服薬あり など
相談できる支援機関就労移行支援事業所の担当者、自治体の障害者就労支援センター など

各項目は長文にせず、箇条書きや短文でまとめると読みやすくなります。採用担当者が限られた時間で読むことを意識して、シンプルに整理するとよいでしょう。

「苦手なこと」と「対処法」を必ずセットで書く

ナビゲーションブックで特に大切なのは、苦手なことを書く際に必ず対処法を添えることです。苦手な点だけが並ぶと、採用担当者は「どの程度のサポートが必要か」を判断しにくくなります。

「突然の予定変更が苦手ですが、早めに変更を知らせてもらえれば対応できます」「口頭指示が聞き取りにくい場合がありますが、メモを取る習慣があります」といった形で、自分の工夫も一緒に示すことで、「少しの配慮があれば力を発揮できる」という前向きな印象が伝わりやすくなります。

障害特性は個人差が大きく、同じ診断名であっても症状や対処法は人によって異なります。自分に特有の状況と、自分が実際に実践している対処方法を具体的に記述することが重要です。

いつ・誰に向けて作るかを先に決める

ナビゲーションブックは、提出先や使用場面によって書く内容を変えることがポイントです。面接の人事担当者向けには服薬・通院など健康面の情報も含めた内容が有効で、配属先の上司・同僚向けには業務の具体的な場面を想定した配慮事項が中心になります。

就労移行支援事業所に通っている場合は、担当者との面談や職場実習の振り返りを経てブラッシュアップしていくプロセスが標準的です。「プレナビゲーションブック」として実習前に試作版を作り、実習後に気づいたことを書き足していく方法も効果的です。一度完成させて終わりではなく、経験を重ねながら内容を更新していくものと考えるとよいでしょう。

  • 項目は障害名・強み・苦手・対処法・配慮事項・通院服薬状況・相談先が基本
  • 苦手なことには必ず対処法をセットで記載する
  • 面接用・配属先用など、提出先に合わせて内容を調整する
  • 実習や訓練の経験を経て随時更新していくものと位置づける

就労移行支援事業所でのサポートの流れ

就労移行支援事業所を利用している場合、ナビゲーションブックの作成は一人で抱え込む必要はありません。訓練プログラムの中で段階的に整理していく仕組みが用意されている事業所も多く、担当支援員と一緒に作り上げていくことができます。

自己理解プログラムとの連動

多くの就労移行支援事業所では、ナビゲーションブックの作成を自己理解プログラムの一環として位置づけています。ワークシートや面談を通じて自分の強みと課題を言語化し、その結果をナビゲーションブックに落とし込む流れです。

NIVRの支援マニュアルNo.13では、作業面・対人面・ストレス対処・場面変化への対応などについてアセスメントを行い、本人が気づいたことを「まとめ」として作成するプロセスが示されています。ワークトレーニングの環境がない場合でも、振り返りシートや実習の記録を参考にしながら、支援員が丁寧な面談を重ねて一緒に作成することが基本的な流れです。

自分では気づきにくい強みや特性を、支援員や身近な人の客観的な視点を借りながら整理できることが、就労移行支援を活用するメリットの一つです。

職場実習での検証と活用

プレナビゲーションブックができたら、職場実習の場で実際に使ってみることが効果的です。実習先にナビゲーションブックの内容を共有することで、配慮が必要な状況での対応が実践的に確認できます。

実習後には「記載していた配慮が実際に役立ったか」「想定外の困りごとが出てきた場合はどう書き直すか」を振り返ります。この繰り返しを通じて、精度の高いナビゲーションブックに仕上がっていきます。一度の実習で完成させることより、使って気づきを得てアップデートするサイクルを大切にするとよいでしょう。

面接練習での活用

若者が教室で学びながら就職準備や自己理解を進める様子を表すイメージ画像

就労移行支援事業所では、ナビゲーションブックを使った模擬面接が実施されます。自分の障害についてどのように説明するか、配慮のお願いをどのように伝えるかを練習する場として機能します。

書類として提出するだけでなく、「面接でどう話すか」まで一緒に準備できるのが就労移行支援事業所を活用するメリットです。書類の完成度だけでなく、口頭説明との整合性も意識しておくと、採用担当者に一貫した印象を伝えやすくなります。

【就労移行支援でのナビゲーションブック作成の流れ(例)】
1. 自己理解プログラムで強み・苦手を書き出す
2. プレナビゲーションブック(試作版)を作成する
3. 職場実習や模擬面接で使ってみる
4. 振り返りをもとに内容を更新する
5. 就職活動用のナビゲーションブックを完成させる
  • 就労移行支援事業所では自己理解プログラムと連動して作成をサポートしている
  • 職場実習での実践を通じて内容をブラッシュアップしていく
  • 模擬面接を通じて書面と口頭説明の両方を準備できる
  • NIVRの支援マニュアルNo.13がベースとなる公的な枠組みがある

就職後もナビゲーションブックを活用するために

ナビゲーションブックは就職活動の応募書類として使うだけではありません。入社後の職場定着においても、配慮内容の共有や部署異動時の引き継ぎなど、継続的に役立てることができます。

入社後・配属先での共有

入社後は、面接で伝えた内容をもとに、配属先の直属上司や一緒に働く同僚に向けた版を改めて作成しておくとよいでしょう。面接担当者(人事)と現場の担当者では、必要な情報の内容が異なることが多いためです。

配属先向けには、具体的な業務場面での配慮事項(「指示を受ける際には画面や書面で確認させてほしい」「業務の優先順位を明示してもらえると助かる」など)を中心に整理します。業務の内容が変わるたびに内容を更新しておくと、職場との情報共有がスムーズになります。

就労定着支援との連携

障害者総合支援法に基づく就労定着支援は、一般就労に移行した方が職場に定着できるよう、就職後最大3年6か月にわたって支援を受けられるサービスです。就労移行支援事業所がそのまま就労定着支援も担うケースも多く、ナビゲーションブックの内容を支援員と共有しながら職場との連絡調整に活用することができます。

就労定着支援の利用要件や期間については、居住する自治体の窓口または支援機関にご確認ください。内容は制度改正によって変わる場合があります。

自分自身の変化に合わせて更新する

ナビゲーションブックは作って終わりではありません。職場環境や担当業務が変わったとき、体調や生活リズムが変化したとき、新たな強みや対処法に気づいたときに、内容を見直すことが大切です。

NIVRの支援マニュアルでも、障害の状態・職場環境・担当業務・経験の変化に応じて適宜更新していくことの重要性が示されています。定期的に内容を見直すことで、ナビゲーションブックが常に自分の現在地を反映した実用的なツールとして機能し続けます。支援員や担当者に相談しながら更新するとよいでしょう。

【ナビゲーションブックを活用できる主な場面】
・就職活動の応募書類(人事担当者向け)
・職場実習の事前共有資料
・入社後の配属先への情報共有
・就労定着支援での職場連絡調整
・支援員との定期面談資料
  • 就職後は配属先向けに内容を更新して共有する
  • 就労定着支援サービスと連携して職場定着に役立てられる
  • 環境や体調の変化に合わせて随時アップデートし続けることが大切
  • 支援員や相談窓口と連携しながら更新するとより実用的になる

作成で迷ったときに相談できる窓口

ナビゲーションブックの作成は一人で進める必要はありません。自分の特性を言語化するのが難しいと感じる場合や、どんな書き方が伝わりやすいか判断できない場合は、複数の窓口に相談できます。

就労移行支援事業所のスタッフ

就労移行支援事業所では、発達障害や精神障害の特性を理解したスタッフが在籍しており、ナビゲーションブックの作成を個別にサポートしています。訓練の振り返りシートや面談記録を活用しながら、内容を一緒に整理してもらえます。

事業所によってプログラムの内容は異なります。「ナビゲーションブック作成のサポートがあるか」「就労後の定着支援も行っているか」などを見学時に確認しておくと、事業所選びの参考になります。WAM NETでは全国の障害福祉サービス事業所を検索できます(WAM NET:障害福祉サービス事業所検索)。

地域障害者職業センター

地域障害者職業センターは、JEEDが設置・運営する職業リハビリテーション機関です。専門のカウンセラー(障害者職業カウンセラー)が在籍しており、就職準備から職場定着まで継続的な支援を受けられます。ナビゲーションブックの作成元であるワークシステム・サポートプログラムを実施している機関でもあります。

各都道府県に原則1か所以上設置されています(※島嶼部など一部の地域を除く)。利用の詳細は最寄りのセンターに直接ご確認ください。

自治体の障害者就労支援センター・相談窓口

市区町村や都道府県の障害者就労支援センターや障害福祉課でも、就職準備に関する相談を受け付けています。就労移行支援の利用申請の窓口にもなっていますので、サービスの受給者証を取得していない段階でも相談できます。

ナビゲーションブックの書き方そのものを相談するというより、「どの機関を使えばよいか」「どんな支援が受けられるか」を整理する入口として活用するとよいでしょう。

相談先主な特徴
就労移行支援事業所個別サポートで作成から面接練習まで対応。通所しながら継続的に取り組める
地域障害者職業センターナビゲーションブックの発祥機関。専門カウンセラーが在籍
自治体の障害者就労支援センターどの機関に相談すればよいかの入口として活用できる

ミニQ&A

Q:就労移行支援に通っていなくても作れますか?

ナビゲーションブックに決まった提出義務や取得資格はなく、自分で作成することも可能です。地域障害者職業センターや自治体の支援窓口でも相談に応じてもらえます。就労移行支援を利用している場合はスタッフのサポートを受けやすい環境が整っています。

Q:発達障害以外でも使えますか?

もともと発達障害のある方向けに開発されたツールですが、現在は精神障害・身体障害など幅広い方が活用しています。障害の種類を問わず、自分の特性と配慮事項を伝えたい場面であれば有効に使えます。

  • 就労移行支援事業所・地域障害者職業センター・自治体窓口が主な相談先
  • WAM NETで全国の就労移行支援事業所を検索できる
  • 発達障害以外でも幅広く活用できるツールである
  • 一人で悩まず、支援者の客観的な意見を取り入れながら作成するとよい

まとめ

ナビゲーションブックは、障がいのある方が就職活動や職場定着の場面で自分の特性・配慮事項を伝えるための資料です。独立行政法人高齢・障害・求職者雇用支援機構(JEED)の障害者職業総合センター(NIVR)が発行した支援マニュアルをベースに、就労移行支援事業所や地域障害者職業センターなどで活用が広がっています。

まず一歩目として、利用中または検討中の就労移行支援事業所に「ナビゲーションブックの作成サポートはありますか」と見学・相談の際に聞いてみてください。サポート体制の有無は事業所選びの判断材料にもなります。

就職活動の書類は完璧でなくてよいですし、ナビゲーションブックも同じです。最初は項目を書き出す練習から始め、実習や訓練を経て少しずつ精度を上げていけます。自分に合った職場で長く働くための準備として、焦らず取り組んでいきましょう。

本記事の内容は、厚生労働省・自治体などの公的機関の公開資料をもとに整理したものです。制度・利用条件・支給額などは改正・変更される場合があります。最終的な判断や申請手続きの前には、必ずお住まいの自治体窓口や各事業所の最新情報をご確認ください。

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