就労移行支援の営業とは何をする仕事か|スタッフが押さえたい2つの役割

就労移行支援事業所で働く女性スタッフが営業活動と利用者サポートの両立について考えている場面

就労移行支援事業所で働くうえで、「営業」という言葉が求人票に出てきて時「就労移行の営業っていったいどんなことをするのだろう?」と戸惑う方も多いかもしれません。福祉の仕事に「営業」があるのか、と不思議に思う方もいるでしょう。就労移行支援における営業には大きく2つの意味があり、どちらも利用者の就職を実現するうえで欠かせない業務です。

障害者総合支援法に基づく就労移行支援は、一般企業への就職を目指す障がいのある方(原則18歳以上65歳未満)に対して、知識・スキルの訓練、職場体験、就職活動支援、職場定着支援などを原則2年間提供するサービスです。事業所のスタッフはこの支援を内側から支えるだけでなく、企業や地域の関係機関とのつながりをつくる外向きの業務も担います。それが「営業」と呼ばれる業務の実態です。

この記事では、就労移行支援事業所で働きたいと考えている方に向けて、営業業務の種類・具体的な内容・必要とされるスキルを整理します。事業所のスタッフとして何をするのかをあらかじめ理解しておくと、見学や面接でも具体的な質問ができるようになります。

就労移行支援の「営業」が指す2つの業務

就労移行支援事業所における営業は、大きく分けると「企業開拓」と「利用者集客」の2種類です。どちらも事業所の運営と利用者の就職実現に直結しており、スタッフ全体で分担しながら取り組む業務です。

企業開拓とは何か

企業開拓とは、利用者の実習先や就職先となる企業を開拓・確保するための活動です。就労移行支援事業所は制度上、直接職業紹介を行うことができません。そのため、ハローワーク、地域障害者職業センター、障害者就業・生活支援センター(通称:ナカポツ)などの関係機関と連携しながら、利用者に合った職場を探します。

また、事業所独自で企業の人事担当者にアポイントをとり、訪問営業を行うケースもあります。利用者の実習受け入れや求人情報の提供を依頼するのが主な目的です。実習先・就職先の企業数が多いほど、利用者それぞれの適性にあった職場を紹介しやすくなり、就職後の定着率も高まります。

企業開拓の営業先には、ハローワークや就労支援機関からの紹介ルートのほか、障害者雇用の義務がある企業、特例子会社、地域の中小企業なども含まれます。電話によるアポイント(テレアポ)や、合同面接会・障害者雇用セミナーへの参加も、企業との接点を増やす方法として活用されます。

【企業開拓の主な営業先】
・ハローワーク・地域障害者職業センター・ナカポツ
・障害者雇用の義務がある企業・特例子会社
・障害者雇用実績のある地域企業
・障害者雇用セミナー・合同面接会での接点づくり

利用者集客とはどういう意味か

利用者集客とは、就労移行支援を利用したい方に事業所を知ってもらい、見学・相談・利用開始へとつなげる活動です。就労移行支援事業所は、利用期間が原則最大2年間と決まっているため、利用者が卒業するたびに新しい方の受け入れが必要になります。フロー型のビジネスモデルである以上、集客は事業所運営の安定に直結します。

集客の方法としては、医療機関・相談支援事業所・特別支援学校などの関係機関への訪問・紹介依頼が中心です。そのほか、ウェブサイト・SNS・地図アプリ(Google マップなど)での情報発信、チラシの配布なども活用されます。

利用者が事業所を選ぶ際には、就職実績・実習先企業の数・プログラムの内容などが比較のポイントになります。企業開拓がしっかり行われている事業所ほど、選んでもらいやすいという側面もあります。

2つの営業がつながって利用者の就職が実現する

企業開拓と利用者集客は別々の業務のように見えますが、実際には連動しています。実習先・就職先の企業が多ければ多いほど、利用者への提案の幅が広がり、それが事業所の評価につながって集客にも好影響を与えます。スタッフとして就労移行支援に携わるうえでは、この2つが事業所全体で支え合っていることを理解しておくとよいでしょう。

  • 企業開拓は実習先・就職先を確保するための外向き業務
  • 利用者集客は関係機関・情報発信を通じた新規利用者の獲得
  • 2つの営業は互いに連動し、事業所の就職支援の質を高める
  • スタッフ全体で役割分担しながら取り組む業務である

企業開拓のアポイントから訪問までの流れ

企業開拓の営業は、アポイントをとる段階から訪問・交渉・関係構築まで、一連の流れがあります。それぞれのステップで意識したいポイントを整理します。

アポイントをとる方法は大きく2つ

企業の担当者にアポイントをとる方法は、大きく分けると「関係機関経由」と「自力でのテレアポ」の2種類です。関係機関経由では、ハローワークや就労支援機関の担当者に相談し、企業の人事担当者を紹介してもらうルートを活用します。定期的に関係機関を訪問し、地域の求人情報を共有してもらうことで、信頼関係を築きながら接点を広げていきます。

自力でのテレアポは、ハローワークに障害者雇用の求人を出している企業や、障害者雇用求人サイトに掲載している企業をリストアップして電話連絡する方法です。テレアポの成功率は一般的に低いとされており、数をこなすことが前提になります。卒業生がすでに定着している企業は優先的にアプローチすると、受け入れてもらいやすい傾向があります。

訪問時の準備と当日の進め方

企業の担当者とのアポイントが取れたら、訪問前にパンフレットや説明資料(パワーポイントなど)を用意します。就労移行支援事業所の概要、利用者の特性と支援内容、実習受け入れや雇用のメリットなどを分かりやすく伝えられる資料があると、商談がスムーズに進みます。

訪問当日は、いきなり「実習生を受け入れてほしい」と本題に入るより、企業が抱えている課題をヒアリングすることが大切です。障害者雇用の経験の有無、定着に関する悩みなどを丁寧に聞き出し、そこに就労移行支援のメリットを結びつけていく対話型のアプローチが効果的です。

企業の担当者の中には「就労移行支援事業所」や「職場実習」という言葉に不慣れな方もいます。専門用語を使う際は、一言添えて補足すると理解が深まり、誤解を防ぐことができます。

場面ポイント
アポイント前営業先のリストアップ・関係機関との連携確認
資料準備事業所概要・メリットを伝えるパンフレットの作成
訪問当日企業の課題をヒアリングしてからニーズに合わせて提案
フォローアップ継続的な関係構築・実習後の定着フォロー

関係機関との連携が企業開拓の土台になる

企業開拓を個人の営業力だけで進めようとすると限界があります。ハローワークや地域障害者職業センターなどの関係機関との連携が、長期的に見て安定した企業開拓の土台になります。定期的な訪問や情報共有を続けることで、担当者との信頼関係が深まり、企業の紹介や合同面接会の情報が自然に入ってくるようになります。

また、事業所として障害者雇用セミナーを主催するなど、企業側に情報を届ける集団的なアプローチも有効です。個別の訪問営業に加えて、こうした接点を増やす取り組みを組み合わせることで、企業開拓の幅が広がります。

  • アポイントは「関係機関経由」と「自力でのテレアポ」の2種類
  • 卒業生が定着している企業は優先的にアプローチするとよい
  • 訪問では企業の課題ヒアリングを先行させることが大切
  • 関係機関との継続的な連携が企業開拓の安定につながる

就労移行支援の営業に求められるスキルと心構え

就労移行支援の営業業務は、一般企業の営業とは異なります。数字を追うだけでなく、利用者一人ひとりの特性を理解し、企業との橋渡しをするという支援の視点が常に必要です。スタッフとして身につけておくとよいスキルと、心構えを整理します。

コミュニケーション能力と関係構築力

就労移行支援の営業では、利用者・企業の人事担当者・ハローワークなどの関係機関・医療機関と、多様な相手とやりとりが生じます。相手に応じて話し方や言葉の選び方を変えながら、信頼関係を築いていくコミュニケーション能力が大切です。

特に企業開拓においては、最初の訪問で関係が終わらないよう、その後も継続的に連絡をとりフォローアップすることが関係構築の鍵になります。一度実習受け入れをしてもらった企業には、実習後の報告や定着支援の状況共有を続けることで、次の依頼につながりやすくなります。

障害特性の理解と企業への伝え方

就労移行支援事業所の営業スタッフが企業連携や利用者支援について打ち合わせを行っているイメージ

企業に対して利用者の受け入れを依頼する際には、その方の障害特性を適切に説明できることが重要です。どのような配慮があれば働きやすいのか、どのような業務が得意・不得意なのかを具体的に伝えることで、企業側の不安を取り除き、受け入れへの理解を深めることができます。

このとき、利用者本人の了解を得ながら情報を共有する姿勢が前提になります。個人情報の扱いや自己開示の範囲については、個別支援計画の内容や利用者本人の意向を確認したうえで進めることが基本です。

【就労移行支援の営業で意識したいこと】
・企業の課題から対話を始める(一方的なお願いにならない)
・専門用語は補足説明を添えて伝える
・利用者の特性を具体的かつ丁寧に説明する
・実習後のフォローが次の関係につながることを意識する

記録・報告・計画書作成などの事務スキル

営業業務は対外的な活動だけでなく、訪問記録・企業情報のリスト管理・関係機関との連絡内容の共有など、事務的な業務も伴います。スタッフ間で情報を共有することで、チームとして企業開拓を効率よく進めることができます。

また、個別支援計画に基づく記録(サービス提供記録)の作成も日常業務の一部です。日々の記録が積み重なることで、利用者の変化を追跡したり、企業への説明資料に活かしたりすることができます。記録業務をおろそかにしないことが、支援の質にもつながります。

就労移行支援事業所で働く求人では、WordやExcelなどの基本的なPC操作スキルが求められる場合が多く、未経験の場合でも業務を通じて習得できる環境が整っていることが多いです。

  • 多様な相手とのやりとりに対応できるコミュニケーション能力
  • 利用者の障害特性を具体的かつ適切に伝えるスキル
  • 訪問記録・企業リスト管理などの事務スキル
  • チームで情報共有しながら営業を進める協働の意識

資格なし・未経験でも就労移行支援の営業業務は担えるか

就労移行支援で働きたいと考えている方にとって、「資格や経験がないと難しいのでは」という不安は自然なことです。ここでは、資格・経験の要件と、実際の職場での育て方について整理します。

法令上の資格要件はスタッフの職種による

就労移行支援事業所に配置されるスタッフには、管理者・サービス管理責任者・就労支援員・職業指導員・生活支援員などの職種があります。このうち、資格・経験が法令上必要なのはサービス管理責任者のみで、就労支援員・職業指導員・生活支援員には法令上の資格要件は設けられていません。

ただし、求人票には「社会福祉士」「精神保健福祉士」「社会福祉主事任用資格」などを優遇条件とするものも多くあります。資格があると採用・業務の両面で有利になる場面がありますが、無資格・未経験でも応募可能な求人は多く存在します。

未経験者が営業業務を担うまでの流れ

多くの就労移行支援事業所では、入職当初はプログラムの進行補助や記録作成など事業所内の業務からスタートし、徐々に関係機関への同行訪問、企業への電話連絡、訪問営業へとステップアップする流れが一般的です。

最初から一人で企業開拓を担うことは少なく、先輩スタッフやサービス管理責任者と連携しながら、OJT(職場内訓練)を通じて実務を身につけます。利用者の支援経験を積むことで、障害特性への理解も深まり、企業への説明力が自然と育っていきます。

【未経験から就労移行支援の営業業務に関わるまでの一般的な流れ】
①事業所内でのプログラム補助・記録作成からスタート
②先輩スタッフと関係機関への同行訪問を経験する
③企業へのテレアポ・訪問営業へ段階的にステップアップ
④利用者支援の経験が企業への説明力につながる

一般企業の営業経験は活かせるか

一般企業での営業・接客・人事経験がある方は、アポイントの取り方や商談の進め方、記録・報告書の作成などの面でスムーズに業務に入れることが多いです。就労移行支援の営業は利益追求を目的とした営業とは異なりますが、相手のニーズをヒアリングして提案する力は共通して活かせます。

人事担当者として障害者雇用に関わった経験がある方は、企業側の視点を理解している点で特に強みになります。前職の経験が就労移行支援の業務にどう活かせるかを整理しておくと、採用面接でもアピールしやすくなります。

なお、就労移行支援での勤務経験を積みながら、精神保健福祉士・社会福祉士・ジョブコーチなどの資格を取得してキャリアアップしていく方も少なくありません。資格取得を支援する制度が整っている事業所を選ぶことも、長期的な働き方を考えるうえで一つの視点です。

  • 就労支援員・職業指導員・生活支援員は法令上の資格要件なし
  • サービス管理責任者のみ実務経験や研修修了が必要
  • 未経験でも事業所内の業務から段階的に営業業務へ移行できる
  • 一般企業の営業・人事経験は就労移行支援の営業でも活かせる

スタッフから見た就労移行支援の営業のやりがいと課題

就労移行支援の営業業務は、数値目標を追う一般企業の営業とは異なる難しさとやりがいがあります。現場の実態として伝えられているポイントを整理します。

利用者の就職が実現したときの達成感

就労移行支援員が感じるやりがいとして、厚生労働省が行った「障害者の一般就労を支える人材に関する実態調査」では、回答した就労支援員の約7割が仕事に満足しているという結果が出ています。特に、仕事内容・やりがい・職場の人間関係への満足度が高い傾向があります。

利用者が安定して働き続ける姿を見ることや、最初は自信をなくしていた方が少しずつ前向きになっていく変化を近くで支えることが、スタッフにとっての大きなモチベーションになっています。企業側に対しても、実際に利用者の働きぶりを見てもらうことで障害者雇用への理解が深まり、次の受け入れにつながる事例も多いです。

企業開拓の数と定着率のバランスが課題になることも

就労移行支援の現場では、実習先・就職先の企業数を増やしながら、就職後の定着率も維持するというバランスが求められます。企業開拓の件数を増やすことが優先されると、利用者の特性に合った職場かどうかの見極めが不十分になるリスクがあります。

逆に、企業との関係が限られていると、利用者に提案できる職場の選択肢が狭まります。スタッフが個別に企業を開拓しながら、チームで情報を集約・共有することで、数と質を両立させるアプローチが重要になります。

報酬・待遇面での課題も把握しておく

厚生労働省の調査では、就労支援員の中には報酬や能力スキルの向上に満足していないと回答する方もいます。福祉職全般に言えることですが、業務量に対する給与水準は業界の課題の一つとして挙げられています。

ただし、給与は勤務先・地域・職種・保有資格・経験年数によって大きく異なります。昇給や賞与の制度、資格取得支援制度の有無は、求人票や見学時に確認しておくとよいでしょう。就職実績が高く、スタッフが長く働いている事業所は、待遇面でも安定している傾向があります。

項目内容
やりがい利用者の就職・定着を近くで支える経験ができる
難しさ企業開拓の数と利用者との適性マッチングの両立
待遇の課題給与水準は資格・経験・事業所規模により差がある
確認のポイント資格取得支援・昇給制度・就職実績は見学時に聞く
  • 就労支援員の約7割が仕事に満足(厚生労働省調査)
  • 企業開拓の数と利用者への適性マッチングのバランスが課題
  • 給与水準は事業所・地域・資格により異なるため比較が必要
  • 資格取得支援や就職実績は事業所選びの確認ポイント

まとめ

就労移行支援事業所における「営業」は、企業開拓と利用者集客という2つの業務を指し、どちらも利用者の就職実現と事業所運営に欠かせない仕事です。

就労移行支援で働くことを考えているなら、まずは関心のある事業所の見学を申し込み、どのスタッフがどのように営業業務を担っているかを直接確認してみましょう。求人票には記載されていない仕事の具体像が、見学で初めて見えてきます。

就労移行支援の仕事は、利用者の「働きたい」という思いを、企業との橋渡しを通じて形にするやりがいのある仕事です。障がいのある方の就職を支える側として歩み始める一歩に、この記事が役立てば幸いです。

本記事の内容は、厚生労働省・自治体などの公的機関の公開資料をもとに整理したものです。制度・利用条件・支給額などは改正・変更される場合があります。最終的な判断や申請手続きの前には、必ずお住まいの自治体窓口や各事業所の最新情報をご確認ください。

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